自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

冬の更地,ガの幼虫

2014-12-23 | 昆虫

冬の寒さはすべての昆虫にとって,生き長らえるための厳しい関門だといえます。それだけに,厳冬期に目にする昆虫にはつい敬意を払いたくなります。たとえ害虫といわれている昆虫だって,そのたくましさにはついつい感心してしまいます。

更地に生えた草で,褐色がかった大きなイモムシを見かけました。 


まるまる太っています。わたしが見たときは,カラスノエンドウの葉を食べていました。なんでも貪り食うので,たくましく生きていけるのでしょう。

同定作業をしていて,シロシタヨトウと判明しました。こういう環境の中で,確かにいのちをつないで生きている姿は見事です。あっぱれと思います。 

 


アゲハに寄生するハチの幼虫

2014-12-22 | アゲハ(ナミアゲハ)

12月2日付け記事『今秋最後の蛹化』で取り上げたアゲハの個体の続き話です。

蛹をちょこっと触ってみると,とても軟らかいのでびっくり。とっさに,寄生バチにやられているだと直感しました。 


それで,からだの内部を見てみることに。帯糸で支えられていた辺りで二分割しました。すると,中はドロドロ状態です。よくよく見ていくと,ウジ虫型の幼虫が一匹いました。  


そのままではわかりにくいので,爪楊枝を使って出してみました。蛹の大きさからみると,かなりの大きさです。これは寄生バチ(あるいはハエ)の幼虫でしょう。 


一匹なのか複数いるのか,それはよくわかりません。以前外にいたコマユバチは複数でした。しかし,この幼虫がコマユバチのそれなのかは不明です(コマユバチにしては大きい過ぎる!?)。これも確認する価値がありそうです。

蛹にはかわいそうな現実なのですが,いのちは常に犠牲になるしくみで自然は成り立っています。これも止むを得ないドラマです。

 


全国高校駅伝の応援で京都へ

2014-12-21 | 日記

一年前も同じ内容で書きました。高校駅伝は,わたしたち夫婦にとって師走ならではの風物詩になっています。

というわけで,今日,駅伝の応援バスに乗せていただいて都大路に出かけました。出発は早朝。地元の高校は,今年は男女共に出場。応援メガホンも配られ,声援に力が入りました。

テレビで視る方が流れがよくわかっていいし,沿道ではほんの一瞬しか応援できないでしょうという方もいらっしゃいますが,現場の雰囲気はそんな一言で済ませるような平凡なものじゃないですね。全国各地から来られた方々との,束の間のふれ合いもあったりして。


体調がよくなくて,とても辛そうな走りのランナーもありました。タスキを次走者に渡さなくちゃという強い意志があったにしても,たいへん。それを沿道からの声が後押しをするのです。ランナーは励みをもらって,一歩一歩進んでいきます。

わたしが応援する高校は男女共に入賞には程遠かったのですが,期待以上の結果を望むのはマア無理というものでしょう。走ることをとおして,都大路を走る経験を通して,この駅伝に出場できることを通して,各ランナーがきちんと学べるものがあったことを期待しておこうと思います。


若い力が目標を持って,前に進む姿を見ていると,清々しいものを感じます。来年も出場できたら,もちろん応援に出かけるつもりです。

 


葉裏に産付された正体不明の卵(またまたまた)

2014-12-21 | ホトケノザ

12月6日(土)。『葉裏に産付された正体不明の卵(続々)』(12月6日付け記事)中の11月29日分で取り上げた幼虫がずいぶん大きくなってきました。体色は,くっきりした緑です。まさに保護色といった感じです。


調べていくうちに,胸脚・腹脚の位置と体型からどうやらウワバ類であるらしいとわかってきました。 ヨトウガのなかまではなさそうです。

12月11日(木)。偶然に脱皮直後を目撃。からだの色は澄んだ,透明感のある緑。脱いだ皮と,頭部の殻が葉に付いていました。体長は12mm。

 


12月12日(金)。脱いだ皮を幼虫が食べるのか,気になっていました。一日が経って見てみると,皮はありませんでした。落ちているのかなと思って探したのですが,見当りません。断定はできませんが,食べた可能性が濃厚です。頭部の殻がからだに付着していたのが印象に残りました。

 

  


トゲナナフシのからだ

2014-12-20 | 昆虫

ナナフシはけっして噛み付くような昆虫ではありません。静かな静かなタイプの昆虫です。体長は65mm。

 
大きな顎は葉を食べるのに役立つのでしょう。すごい形相をしているなあという印象ですが,あくまでそれはヒトの勝手な解釈です。ただ,ユニークな顔つきなのは確かです。

 
さらに近寄って見てみましょう。口の入口がはっきり確認できます。


真正面から見ると……。迫力満点!


脚先を見ると,木の枝やら葉につかまるのにとても都合よくできていることがわかります。二股に分かれていて,中央に吸盤状のものが付属しています。からだのかたちやしくみは棲む場所を映し出しているのです。


この成虫はメスです。尾端には卵を産む孔が開いています。わたしが見ているときに産卵してくれたら申し分ないのですが,そんなにタイミングがよいはずがありません。 


成虫をおいていると,いつの間にか産卵していました。個数は5個。かたちは壷型の長い球形。長さは2.5mm。蓋状のものが付いていて,そこから幼虫が誕生することが予想できます。土の上に産み落とされたら,わたしたちの目ではまったく探し出せないでしょう。 


この卵から幼虫が孵化するのは来春早々のこと。たのしみに待つことにしましょう。

 


師走,ツマグロヒョウモンの幼虫(6)

2014-12-19 | ツマグロヒョウモン

12月10日(水)。幼虫はかろうじて残ったスミレの葉脈にいたり,ブロック塀にいたり。ほとんど静止状態です。中には,残り少ない葉を食べている個体もいます。これまでは気づかなかった越冬の生態が見えてきます。


12月14日(日)。最低気温-2.8℃。日陰でじっとしている幼虫は,寒さをひたすらこらえているようです。

葉柄だけになったスミレの葉にしがみ付いています。


スミレの近くの地面でじっとしたままです。


無事に冬を乗り越える幼虫は,果たしてどのくらいの比率なのかわかりませんが,寒さは過酷な環境にちがいありません。

 


冬。タンポポと昆虫

2014-12-19 | 昆虫と花

タンポポはけっして春に咲くと限った花ではありません。冬に咲く花として,都会ならお馴染みです。田舎でも,意識して観察していれば道路脇や空き地であちこち目立ちます。

セイヨウタンポポは冬,単為生殖といって,受粉しないまま結実できる性質をもっています。そらだけ生態的に,環境にしっかり適応して生き抜く力があるというわけです。昆虫に頼らなくてもひとまずは大丈夫という,いわばチャッカリ屋なのです。

しかし,この手で殖えるだけでは多様な遺伝子を残せません。つまり,環境の変化に柔軟に対応できないのです。大事なのは,受粉(有性生殖)でもOK,非受粉でもOKというしたたかさです。これができるセイヨウタンポポは大したものです。 

もちろん,寒いときに訪れる昆虫もいます。これは送受粉を仲立ちしていることになり,冬にも有性生殖が行われている証拠です。この日は,たまたまガの一種が訪れているのを見かけました。


吸蜜している様子がよくわかります。それに,からだには花粉らしい粉が見えます。 タンポポの花粉なのでしょう。

 
こんなわけですから,冬,何気なくタンポポを見るというのでなく,それなりに関心を目を向けていると,おもしろい発見に結び付くかもしれません。 

 


師走,ツマグロヒョウモンの幼虫(5)

2014-12-18 | ツマグロヒョウモン

12月5日(金)。快晴。最低気温-0.4℃,最高気温8.8℃。昨日の雨が幼虫のからだを濡らし,それが水滴になって付着していました。霜が降りていましたから,水滴が凍っていたかもしれません。幼虫はブロック塀や枯れ草でじっとしていました。


植木鉢のスミレに置いて観察中の幼虫については,ビニル袋を被せて出て行けないようにしています。その袋に付いたまま脱皮したようで,脱いだ皮が残っていました。このことから,寒くても脱皮をすることがわかります。

 


夜,一つの実験を試みました。翌朝はとても寒くなる見込みらしいので,幼虫に水滴を付けてみるという実験です。水滴を付けるのに霧吹き器を使いました。水滴が凍るはずです。このときなにか変化が見られるかどうか確認しておきたいのです。氷点下10℃ぐらいまでなら耐えられる可能性はあります。体内は単純な水分で満たされているわけではなく,グリセリン成分等を分泌して耐寒性を増すメカニズムが備わっています。幼虫で越冬する一定の個体が無事に春を迎えることを思うと,耐寒性が相当にあるとみるのが順当でしょう。

さらに,ツマグロヒョウモンの分布が年々東日本に拡大しているのは,それだけ環境への適応性がすぐれているからと考えてよいでしょうし,地球温暖化に伴なった変化とみてもよいでしょう。もともとこのチョウは,南方系のものなのです。

12月6日(土)。快晴。最低気温-2.9℃,最高気温8.6℃。今冬最高の冷え込みです。霜がたっぷり降りて,景色は真っ白。幼虫のからだに付着した水滴や水は完全に凍っていました。「これは厳しい寒さだ」とはっきりわかるほどです。すぐに写真に収めました。

 


からだを覆う突起が完全に氷の中にある状態も。


ただ昼間の様子は,しごとで出かけたためにわかりません。暗くなって帰宅。懐中電灯を点けて確認すると,どの個体も無事でした。ほんのすこし移動していたことから,そのことが窺えました。

たぶん,わたしの住む地方の気候だと一日中凍結することはまずないので,生き残る確率が高いということなのでしょう。とはいっても冬の気候は厳しいはずで,一定の比率でいのちが失われるにちがいありません。 

翌7日(日)。幼虫が棲む周辺の景色を入れて撮りました。 

 

 


サザンカの訪花昆虫

2014-12-18 | 昆虫と花

生垣と前栽でサザンカが咲いています。冬は花がすくないので,その花は目を和ませます。寒い時期に咲かせるのはなかなか勇気のありそうな話ですが,一つの花にわんさか蕊を付ける姿はちゃんと虫の招き方を心得て,自己主張をしているわけです。

大きめの花弁は花の存在をくっきりと示していて,それがたくさん咲いていれば遠目で見ても目立ちます。近寄ってくれば,花弁の中に蕊がワアーッと広がっているので,虫にすれば中心辺りから匂う蜜に惹かれて当たり前でしょう。奥へ奥へと招き入れられる手筈が整っているという筋です。 


そこはうまくできているもので,ツナグロキンバエが蕊をかき分けて入り込んでいます。 キンバエはこの花の常連客です。からだに付いた花粉がこのハエの生態を教えてくれています。

寒いと,大きなキンバエはほとんど見当りませんが,ガが来ていることがあります。他の昆虫たちに邪魔されないで蜜を吸い上げることができます。ほんとうに地味なくらしをしています。

 
翌日,同じように観察していると,目の前に,突然クロホウジャクが羽音を立ててやってきました。あまりに急なことだったので,露出とシャッター速度を調整できないままシャッターを切るほかありませんでした。 

 


クロホウジャクの越冬態は成虫。越冬に入る前に,すこしでも栄養を補給しておこうと訪れたようです。 

 


葉裏に産付された正体不明の卵(またまた)

2014-12-17 | ホトケノザ

ついに,この正体不明の卵に関する謎が解けてきました。

たまたまホトケノザの葉に産付された卵が一つあって,これまでそれの変化を見守っていました。真っ白だった卵の上部に黒点が現れ始め,「もしかすると孵化に至るかもしれない」と思った翌日のこと。上部がさらに黒くなり,今にも孵化しそうな気がしました。しかし,待っても孵化しません。

さらに翌日。「これはいよいよ孵化するかな」と思っていると,中の幼虫が殻を破り始めました。偶然観察したときにわかったので,もうびっくり。 

 

 
穴が開けられて,頭部が見えてきました。黒っぽい色は頭部だったのです。下写真の左右幅は1cmですから,頭部は0.3mm弱の大きさになります。

 


やがて,幼虫はゆっくりゆっくり出てきました。 

 

 
この写真を部分拡大したものが下写真です。頭のかたち,からだの毛がよくわかります。

 


殻から出ると,尺を取りながらすこし離れました。   

 


殻から出ると,尺を取りながらすこし離れました。  


そして,殻の方に向き直って,殻に近づき,それを食べ始めたのです。これにもまた,びっくり。確かに食べる動きがしばらく続きました。  

 


すべてを食べたわけではありませんが,殻の脇に離れたとき殻には大きな穴が開いていました。確実に食べられた痕跡です。 

 

 
今回の観察は,わたしにとって大きな生物的事実を知らせてくれるものとなりました。生態を気にかけるなら,やはり問題意識とか細かい観察といったものが欠かせないのです。