へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

今日誕生日の人

2007-08-15 23:09:20 | おたより
今日誕生日だという人を知っています。
だけど、今日何をしているのか、知りません。
人の出会いと別れとは、そんなものなんだな、と思いました。
元気でいるかな
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終戦記念日

2007-08-15 21:25:20 | へちま細太郎

「終戦記念日か」
と、坊主頭の兵隊さんがいいました。
「拙者は違うでござる」
これは、鎧甲のお侍さん。
「拙者は鳥羽伏見の戦いでごさった」
「わしは関ヶ原じゃ。ただわしの場合は殿が食いしん坊であったが故に、いくさ場では死なんかったがな」
食いしん坊の殿様って…(・_・;)
「そういえば、ここにいるもので、墓に体がおるやつはおるか」
いちばん偉そうな鎧姿の武士が、みんなを見回しました。 みんなはお互いの顔を見たりしていましたが、さっきの関ヶ原のおじさんとお公家姿の人が手を挙げました。
 「まろは、この地に戦で来たが、幸いに生き残ってしまったでおじゃるよ」
「おお、これはわが一族近藤家の祖である藤原近衛少将鷹仁殿」
「嫌みか、まろは解任されたが故に、かような地に参ったのじゃ。子孫なら少しは細太郎の前で敬うがよい」
なにやらご先祖様が、明日帰るらしく終戦記念日の今日、世界平和を憂える会議…なんていうのを開催していました。
今年、ぼくはお泊まりもせずにうちに帰ってきたので、おじいちゃんおばあちゃんのおうちからぞろぞろとご先祖様がついてきて、
「細太郎、泊めてもらうぞ」
と、ぼくの狭い部屋にひしめき合っていました。
「まあ、まろのぐちはよい。細太郎、かように戦というものはの、親からいただいたからだごと、我が家に戻ることなど不可能なのじゃ」
「よいか、命は粗末にするな。どんな場合にもくじけてはならぬ」
「そうじゃ、もう一人もそうして生きてる故な」
もう一人?
「何?知らぬのかえ?光一も梨香も困った親じゃ」
おかあさんを知っているの?
「知っているも知らぬも、まろが都においてきたわすれもせぬ恋人ゆえの」
は?
「少将殿、お人が悪い、梨香は拙者が都で関白様よりいただきもうした北政所様の侍女」
…よ~するに、代々女性の好みが同じってことね。
「ま、そういうことだよ」
坊主頭の兵隊さんがぼくをみてにっこり笑いました。
このお兄ちゃんは、去年お墓でおばあちゃんを待っていてくれた人です。 ぼく、このお兄ちゃんが何となく好きなんです。広之お兄ちゃんにどことなく似ているからかな。
「細太郎、また来年会おうな。戦争で死んだって、こうして家族のところには魂は帰ってこられるけど、寂しいぞ、みんなで過ごせないのは…」
そうだね。 ごはんも食べられないし、みんなと喧嘩もできないし、恋もできないし…。 普通の生活がみんなしたいし、守りたいんだと思う。
こんなささやかな願いが、戦争しちゃいけない理由じゃいけませんか?
ぼくは、ご先祖様たちのちっともまとまりのない話を聞きながら、そんなことを考えていました。
へちま細太郎でした。

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