藤川先生の頼みごと

「ところで」
と、藤川先生が言いました。
「けんちゃん、あんた、うちの姉貴に振られたの？」
「うっ」
けんちゃん先生は飲んでいたお茶にむせてしまいました。
「あの出戻りのところに、元の亭主がストーカーのようにつきまとっていて、それが仲良くやっているようにも見え、またからかっているようにも見え、何とも見ていて気分が悪い」
「俺にどうしろってんだよ」
けんちゃん先生は、ご機嫌ななめです。
「俺は、あんたなら兄貴と呼べるぞ、まだ惚れてるのなら、薄気味悪い元の亭主から奪ってみせろよ」
僕たちは、意外な発言に全員息をのみました。 藤川先生が初めて他人にお願いをしている。
「何だよ、おまえ」
びっくりしたのはけんちゃん先生も一緒だったみたいです。
「次期当主がいいと言ってんだ、殴ってでもものにしてこい、でないと一生後悔するぞ」
「…」
ひええ、藤川先生が殿様してる～。
へちま細太郎した。