こんばんは、へちま細太郎です。
荷物はコンパクトにまとめてこその、できる男。
ぼくとたかのりたち5人は、先輩たちに引き連れられて、
「いやあ、すまんね、ぼっちゃんたち」
と、奥八慈温泉のご主人が運転するマイクロバスに詰め込まれて、2台連なって須庭寺を出発した。
マイクロの後ろからは、750ccバイクにまたがった副住職さんがついてきた。
「やくざみてえだなあ」
スキンヘッドにグラサンに皮ジャン姿は、どうみても僧侶には見えない。
「まあ、もともとがもともとだけにねえ」
一番後ろの座席の背もたれに前足をかけてリカは伸び上って外の景色を見ていた。
「シャカイは元気か」
子犬はいつの間にかシャカイという名前で呼ばれていて、(仮)有岡軍団さんのひざに乗って爆睡中。
「センスのないネーミングだ」
どうしてだかついてきた水嶋先輩が、相変わらずのイケメンぶりを発揮して飽きれた視線をぼくに向けた。
「先輩たちが勝手につけたんだよ」
文句を言うと、
「ま、そういうことにしておこう」
あ~、この人が浪人中だなんていうことも、ファッションのひとつみたいだ。
「ところで、温泉に行って何をするのかな」
知らねえでついてきたのかよ。
「犬の散歩だけではないことは確かだねえ」
ぼっつりつぶやき、ため息をついたが、どうもこの人は間が抜けている。でも、この間の抜けたところも魅力なんだけど。
そのうちバスの中でカラオケ大会が始まり、
「ギザギザハートの子守歌歌いま~す」
と、水嶋先輩は、おどけた声でノリノリ。
「いいぞ~」
「例のやれ~」
「キャンたまぶくろが延びすぎてえ15で地面に~♪」
げっ。
水嶋先輩くらい、顔と中身が違う人はいないだろうな~。