こんばんは、へちま細太郎です。
昨日に引き続いて今日も住職さまに絡む京尼御前さま。
ぼくは、藤川先生とまたも座禅。
警策を持って歩くは、京さんの弟副住職。
で、百合絵さまは京さんの手を握って、
「京様、あんな薄情な川口さまのことはお忘れになってくださいまし」
と、いつにない表情を見せている様子。
どうやら水嶋先輩のおとうさんの旧姓は川口というらしい。
「まったく、上司の進める縁談だからといって、結婚寸前までいかれた京さまをお捨てになるなんて、わたくし今でもはらわたが煮えくり返りそうな気持ちですのよ」
住職様は苦笑いしている。
そらそうだろ、いつの間にか居座ってしまった百合絵さまも京さんの過去を知っているのだから。
「わたくし、水嶋さまのおじょうさまもおみかけしましたけれど、確かにお美しい方でございましたわ。とても、田舎の農家の方とは思えないくらい」
うえ~、すごいバカにした発言。なんなんだ、この都会人っぷりは。
「ま、元伯爵家のご令嬢からみれば、田舎もんは田舎もんだろうけどさ。農家っていったって水嶋家はそんじょそこらの豪農とはわけが違うんだわよ」
京さんが機嫌を損ねてしまったらしい。
「お許しになって京さま、わたくし京さまがいまだに男の方に心を寄せていられるのがたまりませんのですわ」
という言葉に、ぼくと藤川先生、副住職さんまで思わず振り返ってしまった。
住職様は、ふん、と仏様のおさがりをいただいている。
「京さま、お互い出家の身、この世で結ばれない身ですけれど、生まれ変わりましたら…」
「ええい、気色の悪いこと言うな」
京さんは、すがる百合絵さまを振り払った。
「あの時と同じようにわたくしを見捨てないでくださいまし」
「やかましいわい」
あいた口がふさがらないくらい、むかしむかしのドラマを見ているようなそんなシーンだった。
違うのは、場所がお寺で、片方は仏教の尼さんで、もう一人がカトリックのシスターということだ。
副住職さんが警策を落とし、お茶の入れ替えを持ってきたことみさんはお茶を落としてしまった。
そんな中で住職さまだけが、
「ふおっつふおっふおっ」
と、バルタン星人笑いをしていた。
「おまえら、若いのお」
ああ、若いわ、まだ中学生だ