へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

とんでもない話があったもんだ3

2018-12-15 12:43:10 | へちま細太郎

さっきのつづきの細太郎です。

俺たちは軽トラキャンピングカーの中で、ゲーラゲラ笑った。
護送車と北別府さんの恭しい態度のギャップにも戸惑う連中を眺めつつ、
「赤穂浪士の討ち入りにかかわった話なんて聞いたことないぞ」
と、俺は食い物と女にしか興味がない藤川家に、そんな硬派な話なんかあるわけない、と思い返した。思い返したんだが、
「あ」
と、数年前のある出来事を思い出した。
「思い当たることあるんですか?」
キャンピングカーの中の会話は、マイクを通して運転席にも聞こえる。スピーカーから荒波の声が聞こえた。
「あるもないも、いまだに続く、藤川家武道派と事務方の争い」
「なんだそれ」
「孟宗学園ってさ、藤川家の藩校だったんだよね、江戸の昔は。で、団部が藤川家の武道派のつながりなんだ」
「近藤家は?」
「事務方」
「あ、な~るほど」
俺のあのくそ親父を見れば、想像がついただろうが、しかし、
「母方は武道派。またいとこの秀兄ちゃんが団長だった」
「ひええ」
「今、防衛大」
「わお、なんてこったい」
なんだそのリアクションは、ゴメスよ~。
「でも、あれっすよね、女狂いが始まったのは、将軍家から御簾中さまがきてからだって、実孝さんがいってましたよ、まあ、あのご兄弟みればそうだろうなあぐらいは想像つきますけど」
「しかしなあ、ご隠居なんの話をする気なんだろうね」
剣と女の達人のご隠居がどんな話をするやらだな。
てか、食い物に意地汚い藤川家が赤穂浪士の事件にかかわるとしたら、塩ぐらいだろうね、と思うぞ。

また、つづいちゃうけど。。。

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とんでもない話があったもんだ2

2018-12-15 09:09:03 | へちま細太郎

そんなわけで、前回からの続き、細太郎です。

で、ご隠居様の都合を電話で確認、ことの次第を告げれば悪ノリする気配が受話器の向こうからヒシヒシと伝わってくる。
「おまえらにも語ってきかせるからこい」
と有無を言わさず殿様っぷりを発揮。
何が「語って」だよ、「騙って」が正解じゃねえのか。
「君、まだガラケーなんだw」
語尾に「w」がついているのも憎たらしいこの「討ち入り研究会」。なんなんだ、このネーミングの意味不明さは。
「ガラケーの何が悪い。タブレット持っているから必要ない。あ、それと、ご隠居さまが車を回してくれるらしいから、それ乗って行って。俺たちは先に行っているから」
「へ~、さすが大名家は違うね」
キチローだってこんなにひどくはない。キチローはある程度のわきまえはある。
「お迎えって、この人数ご隠居のあの車で迎えにくるんですか?」
白崎は唇の端をひくひくさせながら、ずらりと並んだ「討ち入り研究会」を見まわした。まあ、47人とは言わないが、ざっと20人はいる。いつの間に沸いて出てきたんだ。
「全員が乗れるっていったら、あれしかないじゃないですか」
ゴメスも不安げだ。
「まあ、いいんじゃないの?あんだけ失礼な連中だから」
荒波は色のとれて傷んでいる茶髪をかきあげながら、
「じゃあ、俺たちいきますか」
と、苦情を言われる前にいっちまおうと、駐車場に向かった。
そういう荒波の車も農場から借りているキャンピングカーに改造した軽トラだけどね。
「軽トラ?君、ダサいじゃない?」
討ち入りのリーダー(仮)大星由良助、もとい、大石内蔵助はさらにバカにしてきたが、荒波は、
「ふっ」
と、不敵な笑みを浮かべてさっさと車に乗り込んでしまった。
「じゃ、ここで待ってて、お迎えがくるから」
俺と白崎、ゴメスの3人は後ろに乗り込んだ。
で、反応をみるわけだ、あいつらの。
しばらくして、やってきたよ、護送車が。
「え~」
という悲鳴があがったがしるもんか、ベンツかリムジンを想像してたのか。
バカめ。
一部始終を途中から荒波がテレビ電話で中継していたのを知らんのか。
「あれで、福島まで桃をとりに行かされた時は、マジでビビったが慣れたわ」
白崎君、君はどこへいってももう大丈夫だねえ。。。
(はい、作者としてはそう信じたいですぜ、オリックスの白崎くん)
丁重な挨拶とお出迎えの北別府さんに促されて、護送車に乗り込む連中をみて少しは気が晴れた気がする。

つづいちゃってもいい?

 

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