細太郎です。
レストランでの大乱闘の後、会議室に場所を移動して阿部さんの料理のもてなし。
で、討ち入り研究会は複雑な表情で並べられた食事を眺めている。
「また、いもだ」
誰ともなしにつぶやきを聞きとがめた阿部さん、
「尾張のたかだか足軽組頭風情だった藤川家がここまで生き延びてこられたのは、このいものおかげなのです。戦場をかいくぐって生きながらえたその奇跡の食物こそ、このイモなのです」
と、大演説をかました。
は?サツマイモが伝わったのは、江戸中期だろ。吉宗が享保の大飢饉で青木昆陽の意見を取り入れたって。が、討ち入り研究会は反応なし。
「サツマイモ~」
力なくつぶやく大石内蔵助は、
「イモくって、乱闘見せられて、なんなんだあ」
と、顔を覆った。だから、
「物を頼む態度じゃなかったから、おめえ、ご隠居におちょくられたんだよ。ご隠居様の母上は元はやんごない世界の方だから、言葉にはうるさい。公家なんて言葉咎めの巣窟だからな」
と、言ってやった。
「は?」
「は?じゃねえよ、なめてんの、おまえ」
実孝さんが半分ブチ切れて、バンとテーブルをたたいた。
「二度と顔を見せるな、大学にも抗議するからな、覚えとけ」
ずいぶんな怒りっぷりだけど、俺は気が晴れたが少々かわいそうになった。
「まあいいじゃん、藤川家が討ち入りとは関係がないってわかっただけでも、収穫だろ」
慰めてみたものの、内蔵助は「はあ」と力なく応えたんだが、次の実孝さんの言葉に全員がぶっとんだ。
「おまえら、仮にも大学生の前でうそは言わんぞ、サツマイモ以外は本当のことだ」
ひいいいいいっ。
なんてこったい!本気で、吉良と浅野をだましてたんか、こいつら。
「当たり前だろう、吉良と浅野は戦国時代からの因縁がくすぶっていて、いまだに会えばけんかになる。
三河の山にはえてた自然薯をとった取らねえで吉良とけんかになり、浅野とは干し柿を盗んだ盗まねえでもめた過去がある。まあ、君たちにはわからん苦労だ」
(作者注、こんな事実はありませんから、ぜったいにありませんから!)
そんな苦労知りたくもねえええええええ!!
というわけで、やめた、こんな話~。つき合わせちゃってごめんな。