阿部さんよ、お久しぶりね、おほほほほ。
てか、初コメだで~。
愛知県出身、旧姓は高畠。ピンときた方はエライですわよ~。
でも、お松さんとは血縁関係ないんだがや。
細太郎君に失敬な言葉遣いをしたという大学のなんとか研究会の連中に、
「天誅をくらわす」
と、ご隠居様がはしゃいでおられましたので、不肖私阿部愼子も参戦することになりましたでよ。
最近、紅はるかというサツマイモの品種が人気のようで、今までのほっこり系よりねちゃっとした触感のサツマイモが売れているそうです。藤川農園も負けてはおらじと、この紅はるかを大量に作りまして、あの無礼な討ち入り研究会の連中に取らせて、焼かせて、食わせたとのこと。
拷問のような甘さとあごの発達が阻害されそうな柔らかさのため、1個どころか3つは軽くいけちゃうよね、というために連中はうまいうまいを連発。食べつくしたあとに、
「お食事は1時間後にご用意いたします」
と、伝えさせていただきました。
「え~」
という堀部安兵衛の発言に、
「大名家の食事だでな、期待せんといてちょ~」
とだけ言いおいておくことも忘れません。
顔を見合わせてうなづく連中のリーダーと思しき大石内蔵助は、
「それなら。我々研究会も大名家の食事には日ごろ興味を持っていたのですが、いただく機会がありませんので」
と笑顔でうなづいていたが、後方に控えていた遙泉院阿久里と大石りくならぬ女子部員たちの表情が引きつりまくり、あ、いや微妙な表情になっているだろうが。
やはり、アホな討ち入り研究会だ。
つづくのか?
細太郎だよ。
ものすご~く寒い日だったその日は、俺らは売店と並んでいる休憩中のレストランで焼き芋をほおばっていた。。
連中は外で芋ほりをさせられたあげく、焼き芋作りだ。
「あんな態度をとるからだよ」
と、途中からやってきた(仮)亀梨軍団の悠樹さんが隣にどっかりと座った。
「荒波くんがさ、中継してくれたやつ、みんなで見てたわけ、そしたらご隠居が面白がってねえ」
この人も、すっかり藤川家に染まってしまった。それにおっさん臭くなっている。
まだ、20代だよな。
「で、あるんですか?赤穂の討ち入り話にかかわった話」
「あるわけなかろうが、あるとしたら吉良の塩と赤穂の塩と両方からうまい具合に取引しとって、赤穂からは半値でかいとるずる賢さだわ」
そんなこったろうと思ったよ、と声のした方を振り返ったら、お久しぶりな棒斐城寺の尼さんこと、藤川都さん。副住職さんの姉ちゃんだ。
「くそじじいに呼び出されてきてみりゃそういう話か。まあ、下手すりゃ城中で斬られてたのはうちのご先祖かもね」
「言われなくても想像つきますって」
「まあ、あの当時はわいろっつーか、お金を出したりして教えを乞うのは当たり前だから、金のあるもの勝ちなんだよね。なけりゃないなりにお留守居役の江戸家老がなんとかするわけ。その江戸家老が無能じゃ、他の家臣も立つ瀬がないわけよ」
「ふうん」
そういえばこの人は、世が世ならお姫様だよな。
「しかし、自業自得とはいえあいつらも気の毒だな」
討ち入り研究会の厨どもが、泥のついた顔に泣きべそを浮かべてこちらに向かってやってくるのが見えた。
「バカなやつらだ」
俺に向かって放った無礼を考えれば、この程度で済んでよかったわな。
実孝だ。
暇じゃねえけど、バカなヲタク厨に付き合ってやることにした。
総勢20人近くの無礼者を迎えた俺は、まず、
「話をききたきゃ、藤川家のしきたりをやってもらう」
と殿様を気取ってみる。
連中からごくりと唾を飲み込む音が聞こえたような気がした。
といっても、こういう役割は所詮は下っ端の仕事。それゆえ、人を見る目が養われていないとできない。
かといって、殿様に会えるためのしきたりなんぞ、この藤川家にあるはずもない。
そこで、いもをとらせて洗わせ、木っ端切れを集めさせ焼き芋を作らせることにした。
それで文句をたれたら、追い返すだけだ。
案の定、不満げな顔つきをしやがった。
「僕たちはお話を伺いにきただけです」
「おまえら、貴重な藤川家の内部事情をタダできけるとでも思っていたのか」
「あ、いや、それは」
昔ならお手うちもんだ、と言いたいがやめた。今は何をいわれるかわかったもんじゃない。
「それなら」
大星由良助はしぶしぶ承知した。
ああ、いい気分だ。
じゃ、めんどくさいから続くぞ
さっきのつづきの細太郎です。
俺たちは軽トラキャンピングカーの中で、ゲーラゲラ笑った。
護送車と北別府さんの恭しい態度のギャップにも戸惑う連中を眺めつつ、
「赤穂浪士の討ち入りにかかわった話なんて聞いたことないぞ」
と、俺は食い物と女にしか興味がない藤川家に、そんな硬派な話なんかあるわけない、と思い返した。思い返したんだが、
「あ」
と、数年前のある出来事を思い出した。
「思い当たることあるんですか?」
キャンピングカーの中の会話は、マイクを通して運転席にも聞こえる。スピーカーから荒波の声が聞こえた。
「あるもないも、いまだに続く、藤川家武道派と事務方の争い」
「なんだそれ」
「孟宗学園ってさ、藤川家の藩校だったんだよね、江戸の昔は。で、団部が藤川家の武道派のつながりなんだ」
「近藤家は?」
「事務方」
「あ、な~るほど」
俺のあのくそ親父を見れば、想像がついただろうが、しかし、
「母方は武道派。またいとこの秀兄ちゃんが団長だった」
「ひええ」
「今、防衛大」
「わお、なんてこったい」
なんだそのリアクションは、ゴメスよ~。
「でも、あれっすよね、女狂いが始まったのは、将軍家から御簾中さまがきてからだって、実孝さんがいってましたよ、まあ、あのご兄弟みればそうだろうなあぐらいは想像つきますけど」
「しかしなあ、ご隠居なんの話をする気なんだろうね」
剣と女の達人のご隠居がどんな話をするやらだな。
てか、食い物に意地汚い藤川家が赤穂浪士の事件にかかわるとしたら、塩ぐらいだろうね、と思うぞ。
また、つづいちゃうけど。。。
そんなわけで、前回からの続き、細太郎です。
で、ご隠居様の都合を電話で確認、ことの次第を告げれば悪ノリする気配が受話器の向こうからヒシヒシと伝わってくる。
「おまえらにも語ってきかせるからこい」
と有無を言わさず殿様っぷりを発揮。
何が「語って」だよ、「騙って」が正解じゃねえのか。
「君、まだガラケーなんだw」
語尾に「w」がついているのも憎たらしいこの「討ち入り研究会」。なんなんだ、このネーミングの意味不明さは。
「ガラケーの何が悪い。タブレット持っているから必要ない。あ、それと、ご隠居さまが車を回してくれるらしいから、それ乗って行って。俺たちは先に行っているから」
「へ~、さすが大名家は違うね」
キチローだってこんなにひどくはない。キチローはある程度のわきまえはある。
「お迎えって、この人数ご隠居のあの車で迎えにくるんですか?」
白崎は唇の端をひくひくさせながら、ずらりと並んだ「討ち入り研究会」を見まわした。まあ、47人とは言わないが、ざっと20人はいる。いつの間に沸いて出てきたんだ。
「全員が乗れるっていったら、あれしかないじゃないですか」
ゴメスも不安げだ。
「まあ、いいんじゃないの?あんだけ失礼な連中だから」
荒波は色のとれて傷んでいる茶髪をかきあげながら、
「じゃあ、俺たちいきますか」
と、苦情を言われる前にいっちまおうと、駐車場に向かった。
そういう荒波の車も農場から借りているキャンピングカーに改造した軽トラだけどね。
「軽トラ?君、ダサいじゃない?」
討ち入りのリーダー(仮)大星由良助、もとい、大石内蔵助はさらにバカにしてきたが、荒波は、
「ふっ」
と、不敵な笑みを浮かべてさっさと車に乗り込んでしまった。
「じゃ、ここで待ってて、お迎えがくるから」
俺と白崎、ゴメスの3人は後ろに乗り込んだ。
で、反応をみるわけだ、あいつらの。
しばらくして、やってきたよ、護送車が。
「え~」
という悲鳴があがったがしるもんか、ベンツかリムジンを想像してたのか。
バカめ。
一部始終を途中から荒波がテレビ電話で中継していたのを知らんのか。
「あれで、福島まで桃をとりに行かされた時は、マジでビビったが慣れたわ」
白崎君、君はどこへいってももう大丈夫だねえ。。。
(はい、作者としてはそう信じたいですぜ、オリックスの白崎くん)
丁重な挨拶とお出迎えの北別府さんに促されて、護送車に乗り込む連中をみて少しは気が晴れた気がする。
つづいちゃってもいい?
お久しぶりです、へちま細太郎です。
つくばった大学も、そろそろ冬休みを迎えようか、というクリスマスな街角な今日この頃です。
大学のカフェテラスでコーヒーなどを荒波たちと飲んでいたら、そこへ文学部の連中がやってきた。
日ごろ顔を合わせることもなく、会話もほとんどない。
なのに、
「君が、近藤しょう君?」
と、くそ生意気な口調で名乗りもせずに聞いてきた上に、名前間違っていたからシカトしてやった。
「近藤君、君ね、シカト?」
「近藤だけど、しょうじゃねえし、だいたい、おまえら誰だよ」
と、藤川先生仕込みのヤンキー口調で返答してやった。
一瞬ムッとした表情になったそいつは、俺のテーブルの開いている席に勝手に座って、
「お願いがあるんだけど」
と、分厚い本を投げ出してきた。
「藤川家のさ、当時の殿様が、どう赤穂浪士とかかわったか、ききたいんだよね」
「あ?」
「だからさ」
「知るかよ、なんだよ、赤穂浪士って」
知ってるけど、知らんふりしてやったら、そんなことも知らんのか、とも言いたげな目つきで、
「殿様、紹介してくんない?」
言うに事欠いてそれかい。すんげえムカついたから、
「知るかよ」
と、荒波たちを促して席をたった。
「ちょ、ちょまてよ」
いまさらキムタクか?
慌てて腕をひっつかんできたので、その時、意地悪な気持ちが浮かんできた。
俺の表情をみとがめたゴメスが、
「細太郎さん、それは…」
と誰の顔を思い浮かべたのか、なんとなくわかったようなわからないような白崎が、
「まさか、副住職さんじゃないですよね?」
ビビりながら耳打ちしてきた。
そんな甘い考えがこの俺様が思いうかぶと思うか?
「無礼なやつには無礼な相手で十分だ。ご隠居にあわしてやる」
ひえええええと、3人が悲鳴あげたが、無礼な文学部は、
「最初からそういえばいいんだ、あ、ところで僕たちは討ち入り研究会のものだけど」
なんだそりゃ。。。