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宮本常一著「イザベラ・バードの日本奥地紀行を読む」
イザベラ・バードは、明治11年から女性一人で日本を訪れ、各地を旅しています。横浜から東北、そしてアイヌ人の生活生態と、貴重な興味ある紀行記録を残しています。
この本は、日本観光文化研究所の所長であった著者の講演会(昭和49年~昭和54年)の記録です。
ここで商店について興味ある文章を見つけました。
戦後、下駄屋が衰退し、まんじゅう屋が駄目になったりというのは、自分たちで作っているところを見せなくなってしまったからで、見せないことが良いことだと思い始めた。物はウィンドウに並べられて、人間が奥へ入り込んでしまった。そのときに日本の伝統工芸が滅び始めたのだと思うのです。
ところがこれが少し破れ始めています(昭和50年頃)。大きく破れ始めたのはレストランなのです。しかし、日本で古い食べ方を残したのがにぎりずしで、目の前でできるわけです。おそらくこの発想から、近頃みな料理するところを見せるようになったし、そのほうが良く売れるのです。
一人ひとりが顔を合わせるというところから、結構売れるわけです。
これから先、もう一度元のような店が復活し始めるのではないか。少なくとも小さな店の場合、こうした日本人の中にある人間関係を抜きにして成り立たないのではないだろうか。
以前、商店街の勉強会で、物を作っているところを見せる「工房型店舗」の大切さを学びました。
商品の量と種類には大型店に及ばない。小売店が勝負できるのは、お客様との対話や品物に対する安全・安心ではないでしょうか。
旧東海道沿いであるここ諏訪前通りでも、昭和の初め頃までは工房型の店舗が並んでいたのです。菓子製造・建具指物・宮大工・仏壇仏具・しみ抜き・櫛製造・割烹料理・カフェ・うどんそば・桶製造等。
イザベラ・バードは、とおりに並ぶ商店を興味深く観察しています。
「店」はいわゆる「見せ」であり、店頭には種類は少ないがすばらしい細工の品が並べてある。そして、店内は人々の生活までも見ることができる。
商店街は工房型店舗から、学ばねばならないところがあるのではないでしょうか。と思いますが如何?