(1)4月発表の「成長戦略」では、中核に「女性力を生かす」が据えられ、「5年間で待機者ゼロ」「女性管理職の登用」「3年間の育児休業」などが華々しく打ち出された。
5月には、有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」で、女性が30代後半になると妊娠しにくくなることについて注意を喚起する「生命(いのち)と女性の手帳」の配布を打ち出した、
これら一連の提言から浮かび上がるのは、「女は家へ帰れ」政策だ。
(2)3年育休は、「パンが食べられないなら、お菓子を食べればいい」と言うのと変わりはない。
2010年5月に第1子を出産した女性のうち、出産前後に自発的に辞めた54.1%の内訳を見ると、「続けたかったが、両立が難しい」と「解雇、退職勧奨」を合わせて45.8%で、「育児に専念したかった」の40.7%を上回る【「21世紀出産児縦断調査結果」、2012年】。
ちなみに、同年に職場に残った46%のうち9割、つまり全体の4割しか育休をとっていない。とらない理由のトップは、「職場の雰囲気yた仕事の状況から」となっている。
必要なのは、「3年育休のお願い」ではなく、子どもを産んでも解雇されず、仕事と育児の両立ができる働き方への改革だ。
(3)日本の女性は、「3年育休以前」だ。
正社員でさえ、落ち着いて両立ができない職場環境の中で、さらに追い詰められているのは非正規社員の女性たちだ。彼女らの早産は、専業主婦や正社員の2.5倍にのぼる。おなかが張るなどの早産の兆候がでても、立場の弱さから休みをとりにくいことが影響している可能性がある。
妊娠で仕事を切られ、生活苦から中絶を決意した派遣社員もいる。
千葉市では、手話通訳の臨時職員が育休を市から拒否され、日本弁護士連合会に人権救済を申し立て、2004年、育休を取得させるよう勧告も出た。
こうした事件の続発に、向こう1年間の雇用継続見込みがある場合などは、非正規でも育休をとれるとの改定が行われた。だが、育休などの負担を避けたいから女性を非正社員として採用する会社が多い中、制度を生かせる非正規は少ない。
グローバル化の中でリストラが横行し、夫の扶養に依存して3年も育休をとれる女性そのものが減っている。
にもかかわらず、女性の賃金は正社員でさえ男性の7割、非正規では半分にとどまる。妻が働いても保育料を負担できない層が目立つ。夫の賃金が低いのに、子どもを保育園に預けられないため働けない「貧困専業主婦層」だ。かかる女性たちの実情に「3年育休」は無力だ。
こうした女性たちの背景にあるのは、家事や育児、生活の時間を働く上でほとんど考慮しない日本の仕組みだ。
必要とされるのは、育児期における短時間勤務制度と、男性を含めた残業禁止の徹底だ。
(4)「3年育休」は、出産退職の呼び水として作用しかねない。その一つが「3歳児神話」だ。
「3歳児神話」は1998年の「小子化白書」で合理的な根拠は認められないとされ、以来劣勢が続いてきた。それが「3年育休」キャンペーンで息を吹き返した形だ。
実は、安部政権は子育て中の在宅ワークにも熱心だ。この制度は通勤の負担を省けるメリットがあるが、仕事に集中できにくいデメリットもある。女性に子育てと仕事の二重負担を負わせることで、保育所への公費節約となる恐れも否定できない。
また、「3年育休」は企業の女性採用の抑制策にも転化しかねない。
この仕組みは、女性の自発的な育児退職を促す効果もある。夫に理解があり、企業にも理解があって3年育休をとれたにしても、変化の激しい今の企業社会で妻が家事と育児を引き受ければ、復帰しても働き続けるのは苦しい。
「3年育休」は、「女は家へ帰れ」政策として機能しかねない。
□竹信三恵子「安部政権は裏声で「女は家へ帰れ」と歌う ~「女性活用」政策の矛盾を検証する」(「世界」2013年7月号)
↓クリック、プリーズ。↓
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5月には、有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」で、女性が30代後半になると妊娠しにくくなることについて注意を喚起する「生命(いのち)と女性の手帳」の配布を打ち出した、
これら一連の提言から浮かび上がるのは、「女は家へ帰れ」政策だ。
(2)3年育休は、「パンが食べられないなら、お菓子を食べればいい」と言うのと変わりはない。
2010年5月に第1子を出産した女性のうち、出産前後に自発的に辞めた54.1%の内訳を見ると、「続けたかったが、両立が難しい」と「解雇、退職勧奨」を合わせて45.8%で、「育児に専念したかった」の40.7%を上回る【「21世紀出産児縦断調査結果」、2012年】。
ちなみに、同年に職場に残った46%のうち9割、つまり全体の4割しか育休をとっていない。とらない理由のトップは、「職場の雰囲気yた仕事の状況から」となっている。
必要なのは、「3年育休のお願い」ではなく、子どもを産んでも解雇されず、仕事と育児の両立ができる働き方への改革だ。
(3)日本の女性は、「3年育休以前」だ。
正社員でさえ、落ち着いて両立ができない職場環境の中で、さらに追い詰められているのは非正規社員の女性たちだ。彼女らの早産は、専業主婦や正社員の2.5倍にのぼる。おなかが張るなどの早産の兆候がでても、立場の弱さから休みをとりにくいことが影響している可能性がある。
妊娠で仕事を切られ、生活苦から中絶を決意した派遣社員もいる。
千葉市では、手話通訳の臨時職員が育休を市から拒否され、日本弁護士連合会に人権救済を申し立て、2004年、育休を取得させるよう勧告も出た。
こうした事件の続発に、向こう1年間の雇用継続見込みがある場合などは、非正規でも育休をとれるとの改定が行われた。だが、育休などの負担を避けたいから女性を非正社員として採用する会社が多い中、制度を生かせる非正規は少ない。
グローバル化の中でリストラが横行し、夫の扶養に依存して3年も育休をとれる女性そのものが減っている。
にもかかわらず、女性の賃金は正社員でさえ男性の7割、非正規では半分にとどまる。妻が働いても保育料を負担できない層が目立つ。夫の賃金が低いのに、子どもを保育園に預けられないため働けない「貧困専業主婦層」だ。かかる女性たちの実情に「3年育休」は無力だ。
こうした女性たちの背景にあるのは、家事や育児、生活の時間を働く上でほとんど考慮しない日本の仕組みだ。
必要とされるのは、育児期における短時間勤務制度と、男性を含めた残業禁止の徹底だ。
(4)「3年育休」は、出産退職の呼び水として作用しかねない。その一つが「3歳児神話」だ。
「3歳児神話」は1998年の「小子化白書」で合理的な根拠は認められないとされ、以来劣勢が続いてきた。それが「3年育休」キャンペーンで息を吹き返した形だ。
実は、安部政権は子育て中の在宅ワークにも熱心だ。この制度は通勤の負担を省けるメリットがあるが、仕事に集中できにくいデメリットもある。女性に子育てと仕事の二重負担を負わせることで、保育所への公費節約となる恐れも否定できない。
また、「3年育休」は企業の女性採用の抑制策にも転化しかねない。
この仕組みは、女性の自発的な育児退職を促す効果もある。夫に理解があり、企業にも理解があって3年育休をとれたにしても、変化の激しい今の企業社会で妻が家事と育児を引き受ければ、復帰しても働き続けるのは苦しい。
「3年育休」は、「女は家へ帰れ」政策として機能しかねない。
□竹信三恵子「安部政権は裏声で「女は家へ帰れ」と歌う ~「女性活用」政策の矛盾を検証する」(「世界」2013年7月号)
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