(1)ラットに遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの混じった餌、除草剤入りの水を摂取させるとどうなるか【注】。
(a)実験群・・・・開始4ヵ月目、癌による最初の死亡例が発生。1年を過ぎたころから、乳癌や腎臓疾患が増加。腫瘍は著しく肥大化し、頭部よりも大きな膨らみが、乳腺や肩などにボコボコ盛り上がった。腫瘍の重さが体全体の4分の1を超え、安楽死させなければならない個体が続出した。
(b)対照群・・・・開始1年5ヵ月目まで、死亡例は発生しなかった。
GM作物が動物に与える影響は一目瞭然。すぐに摂取を禁止し、より詳細な実験を始めるべきだ。GMトウモロコシと癌の関係について、確認が必要だ。【ジル=エリック・セラリーニ・仏カーン大学教授(分子生物学)】
(2)GM食品に対する懸念、不安を覚える人は欧州を始め、日本でも多い。最近では、TPPによる規制緩和を警戒する声もあがる。
ただ、実態において、すでにGM食品は日本人の食生活に浸透し、口にしないでいることは困難だ。
<例1>大豆(GM作物の代表格)。
(a)国内の食用大豆の8割程度が輸入だ。【農林水産省】
(b)国内消費の9割強(年280万トン)を米国、ブラジル、カナダなどから輸入している。輸入された大豆の大部分は、日々の料理に欠かせないサラダ油、天ぷら油などの油脂類に加工される。さらに一部は、インスタント食品、冷凍食品など、原料が比較的注目されにくい加工品などにも使われる。ちなみに、全世界の大豆畑に占めるGM作物の割合は8割に達する。
<例2>トウモロコシ(GM作物の代表格)。
国内消費分のほぼすべて(年1,600万トン)を輸入に頼る。うち、9割は米国産だ。その米国では、トウモロコシの全栽培面積のうち9割をGM作物が占める。
国内で消費するトウモロコシの3分の2は家畜の飼料になる(直接口には入らない)。しかし、残り3分の1の半分(全体の6分の1)以上は、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)に加工されて甘味料になり、菓子などに使用される。
(3)GM作物は大量に輸入され、それらを加工した食品を日本人は日常的に口にしている。
にもかかわらず、食品表示を見るかぎり、こうした現実を感じることはない。知らぬまにGM食品を摂取している可能性が十分にある。
かかる不明朗な状況を生み出しているのが、日本の食品表示のルールだ。
GM食品について、国は、安全性を確認したものだけが流通している、という立場をとる。一方で、他の食品と区別したい消費者への情報提供として、GM食品であることを明示するよう、生産者などに求めている。
大豆、トウモロコシ、ジャガイモなど8作物と、それらを加工した豆腐、納豆、味噌、スナック菓子など33食品が、JAS法および食品衛生法に基づく消費者庁の指定作物・食品だ。
GM作物そのもの、GM作物を使っている食品は、「遺伝子組み換え」、生産過程でGM作物が入っているかもしれないものは「遺伝子組み換え不分別」などと表示する(義務)。
他方、GM作物を使用していなければ、表示の必要はない。「遺伝子組み換えでない」という表示をしている納豆などがあるが、これは任意でしているものだ。
(4)問題は、表示義務のないものだ。<例>食用油。
GM作物由来の食品を絶対に口にしたくない人には、思わぬ「落とし穴」だ。
(5)加工食品については、表示の「抜け道」もある。
GM作物が入っていても、それが「主な原材料」(原材料のうち、重さで上位3位以内に入り、かつ5%以上)でなければ、表示義務を免れるのだ。
<例>菓子・炭酸飲料・・・・GMトウモロコシから作られた甘味料が含まれる場合も少なくないが、甘味料に使われたGMトウモロコシが「主な原料」の要件を満たすことはまずない。満たさなければ表示義務はなく、あえて表示する業者は皆無に近いから、消費者は気づかない。
それどころか、表示が「目くらまし」になる可能性もある。
主な原材料にGM作物が使われていなければ、実際にはGM作物やその加工物が入っていても、「遺伝子組み換え作物不使用」などと包装に書くことができるのだ。
加えて、「意図せざる混入」が5%以下のときも、「不使用」と表示できる。
食品業者がGM作物を排除しようとしても、実際には、生産、流通過程で混じることも多いが、少量であれば、「ゼロ」と見なしてよい、というわけだ。
これらのケースでは、結果的に、消費者は事実に反することを信じ込まされていることになる。
「5%以下」という基準は問題だ。EUは0.9%を基準にしている。検査技術はどんどんレベルアップしているのだから、限界まで検出して区別すべきだ。さもないと、何を買うか、買わないか、と選択する消費者の権利が行使できない。【安田節子・「食政策センター・ビジョン21」代表】
(6)「AERA」誌のアンケート調査によれば、原材料にGM作物が混入しているかもしれない、と答えたのは、食用油メーカー2社。J-オイルミルズは、プライベートブランド商品Mに「遺伝子組み換え不分別」の表示をしている(GM作物混入の可能性を明示)。ロッテ、山崎製パンのように、GM作物から作られたものを使っている可能性について言及する会社もあった。
イオンは、自社のプライベート商品で、原材料が何からできているのかを、加工品については4段階までさかのぼって確認。GM作物の使用が認められれば、表示義務のない油脂類、醤油を含め、明示している。「出せる情報は出す」という姿勢だ。
(7)GM食品多一句の米国では、これまで表示は不要としてきた。しかし、穀物に加え、リンゴやサーモンなどのGM化が進むなか、消費者たちの間で表示を求める声が高まり、20以上の州で、義務づける動きが進行中だ。
【注】実験を追った映画「世界が食べられなくなる日」が公開中。なお、セラーニ教授の実験については、欧州食品安全機関(EFSA)を始めとする各国の公的機関(厚労省食品安全委員会を含む)は否定的だ。
□田村栄治・宮下直之(編集部)/奥山暁子(ライター)「忍び込む「GM食品」」(「AERA」2013年6月24日号)
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【参考】
「【TPP】は企業権益拡大のための協定 ~リーク文書~」
「【TPP】秘密交渉の裏側/多国籍企業群がTPP妥結に圧力」
「【TPP】数百万人の命を左右するEU・インドのFTA ~対岸の火事?~」
「【食】モンサントの不自然な食べもの」
「【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~」
「【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~」
「【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~」
「【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~」
「【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知」
「【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~」
「【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~」
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
「【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加」
「【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~」
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
(a)実験群・・・・開始4ヵ月目、癌による最初の死亡例が発生。1年を過ぎたころから、乳癌や腎臓疾患が増加。腫瘍は著しく肥大化し、頭部よりも大きな膨らみが、乳腺や肩などにボコボコ盛り上がった。腫瘍の重さが体全体の4分の1を超え、安楽死させなければならない個体が続出した。
(b)対照群・・・・開始1年5ヵ月目まで、死亡例は発生しなかった。
GM作物が動物に与える影響は一目瞭然。すぐに摂取を禁止し、より詳細な実験を始めるべきだ。GMトウモロコシと癌の関係について、確認が必要だ。【ジル=エリック・セラリーニ・仏カーン大学教授(分子生物学)】
(2)GM食品に対する懸念、不安を覚える人は欧州を始め、日本でも多い。最近では、TPPによる規制緩和を警戒する声もあがる。
ただ、実態において、すでにGM食品は日本人の食生活に浸透し、口にしないでいることは困難だ。
<例1>大豆(GM作物の代表格)。
(a)国内の食用大豆の8割程度が輸入だ。【農林水産省】
(b)国内消費の9割強(年280万トン)を米国、ブラジル、カナダなどから輸入している。輸入された大豆の大部分は、日々の料理に欠かせないサラダ油、天ぷら油などの油脂類に加工される。さらに一部は、インスタント食品、冷凍食品など、原料が比較的注目されにくい加工品などにも使われる。ちなみに、全世界の大豆畑に占めるGM作物の割合は8割に達する。
<例2>トウモロコシ(GM作物の代表格)。
国内消費分のほぼすべて(年1,600万トン)を輸入に頼る。うち、9割は米国産だ。その米国では、トウモロコシの全栽培面積のうち9割をGM作物が占める。
国内で消費するトウモロコシの3分の2は家畜の飼料になる(直接口には入らない)。しかし、残り3分の1の半分(全体の6分の1)以上は、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)に加工されて甘味料になり、菓子などに使用される。
(3)GM作物は大量に輸入され、それらを加工した食品を日本人は日常的に口にしている。
にもかかわらず、食品表示を見るかぎり、こうした現実を感じることはない。知らぬまにGM食品を摂取している可能性が十分にある。
かかる不明朗な状況を生み出しているのが、日本の食品表示のルールだ。
GM食品について、国は、安全性を確認したものだけが流通している、という立場をとる。一方で、他の食品と区別したい消費者への情報提供として、GM食品であることを明示するよう、生産者などに求めている。
大豆、トウモロコシ、ジャガイモなど8作物と、それらを加工した豆腐、納豆、味噌、スナック菓子など33食品が、JAS法および食品衛生法に基づく消費者庁の指定作物・食品だ。
GM作物そのもの、GM作物を使っている食品は、「遺伝子組み換え」、生産過程でGM作物が入っているかもしれないものは「遺伝子組み換え不分別」などと表示する(義務)。
他方、GM作物を使用していなければ、表示の必要はない。「遺伝子組み換えでない」という表示をしている納豆などがあるが、これは任意でしているものだ。
(4)問題は、表示義務のないものだ。<例>食用油。
GM作物由来の食品を絶対に口にしたくない人には、思わぬ「落とし穴」だ。
(5)加工食品については、表示の「抜け道」もある。
GM作物が入っていても、それが「主な原材料」(原材料のうち、重さで上位3位以内に入り、かつ5%以上)でなければ、表示義務を免れるのだ。
<例>菓子・炭酸飲料・・・・GMトウモロコシから作られた甘味料が含まれる場合も少なくないが、甘味料に使われたGMトウモロコシが「主な原料」の要件を満たすことはまずない。満たさなければ表示義務はなく、あえて表示する業者は皆無に近いから、消費者は気づかない。
それどころか、表示が「目くらまし」になる可能性もある。
主な原材料にGM作物が使われていなければ、実際にはGM作物やその加工物が入っていても、「遺伝子組み換え作物不使用」などと包装に書くことができるのだ。
加えて、「意図せざる混入」が5%以下のときも、「不使用」と表示できる。
食品業者がGM作物を排除しようとしても、実際には、生産、流通過程で混じることも多いが、少量であれば、「ゼロ」と見なしてよい、というわけだ。
これらのケースでは、結果的に、消費者は事実に反することを信じ込まされていることになる。
「5%以下」という基準は問題だ。EUは0.9%を基準にしている。検査技術はどんどんレベルアップしているのだから、限界まで検出して区別すべきだ。さもないと、何を買うか、買わないか、と選択する消費者の権利が行使できない。【安田節子・「食政策センター・ビジョン21」代表】
(6)「AERA」誌のアンケート調査によれば、原材料にGM作物が混入しているかもしれない、と答えたのは、食用油メーカー2社。J-オイルミルズは、プライベートブランド商品Mに「遺伝子組み換え不分別」の表示をしている(GM作物混入の可能性を明示)。ロッテ、山崎製パンのように、GM作物から作られたものを使っている可能性について言及する会社もあった。
イオンは、自社のプライベート商品で、原材料が何からできているのかを、加工品については4段階までさかのぼって確認。GM作物の使用が認められれば、表示義務のない油脂類、醤油を含め、明示している。「出せる情報は出す」という姿勢だ。
(7)GM食品多一句の米国では、これまで表示は不要としてきた。しかし、穀物に加え、リンゴやサーモンなどのGM化が進むなか、消費者たちの間で表示を求める声が高まり、20以上の州で、義務づける動きが進行中だ。
【注】実験を追った映画「世界が食べられなくなる日」が公開中。なお、セラーニ教授の実験については、欧州食品安全機関(EFSA)を始めとする各国の公的機関(厚労省食品安全委員会を含む)は否定的だ。
□田村栄治・宮下直之(編集部)/奥山暁子(ライター)「忍び込む「GM食品」」(「AERA」2013年6月24日号)
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【参考】
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