語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【安倍政権】になり、広報予算が4年で倍増の83億円

2016年07月05日 | 社会
 (1)「政府広報予算」は、誰がどのように総額や使い道を決定しているのか?
 「政府広報予算」や「省庁広報予算」のかなりの権限が内閣官房長官にある。予算配分やその使い方の権限だ。
 「政府広報予算」については、そのあり方を議論する場がない。問題だ。国会議員さえ、予算案が出てきて初めてその総額を知る。そういう意味では、「第二の官房機密費」と言ってよい。

 (2)民主党政権では、TPPや消費増税などをめぐって党内で意見が二分していた。党内で結論が出ていないにもかかわらず、いつのまにか、大手新聞の全面を使って「いかに消費税で社会保障が充実するか」などと宣伝したことがあり、物議を醸した。増税反対派は、その主張をする場も予算もないからだ。
 民主党は、野党時代の2007年7月20日、与党自民党が「政府広報予算」を使って自党の主張の宣伝をしていることが、政府の広報活動の範囲を逸脱しているとして、東京地検に告発したことがある。当時の民主党ホームページに、こうある。 
 <党は、鳩山由紀夫幹事長名で、20日午後、安倍内閣を東京地検に告発した。政府広報(あしたのニッポン)を使った公職選挙法の第239条の2第2項、公務員の地位を利用した選挙運動に当たると判断したもの。>
 結局、この件は民主党の主張が認められない結果となったが、政府広報のあり方に一石を投ずる意味はあった。

 (3)その後の)「政府広報予算」の推移は、ハイペースで増加している。
   2012年度(野田政権/民主党) 40億6,900万円
   2013年度(安倍政権/自民党) 43億9,900万円
   2014年度(安倍政権/自民党) 65億円(前年度+21億円)
   2015年度(安倍政権/自民党) 83億円(前年度+18億円)   
   2016年度(安倍政権/自民党) 83億円(前年度と同額、民主党政権時代の2倍)

 (4)増えているのは、国内広報だ。この数字が示すのは、官邸とメディアの蜜月ぶりだ。
 契機が悪くなると、メディアの「政府広報」依存度は高くなると言われている。景気に左右されずに広告を打ってくれるので、メディアにとって「政府広報」は「いいお客さん」なのだ。
 内訳を見ると、2015年度は突出してマイナンバー制度に関する広報が目立っている。しかし、力を入れて広報したマイナンバーは、2016年5月末現在で普及率5.7%と低迷。費用対効果でいうと、かなり悪い結果だ。
 鳴り物入りでスタートして結局5.5%の普及率に終わった住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)と同じ道をたどりつつある。

 (5)安倍政権になり、たった4年で倍増した「政府広報予算」。
 何か明確な線引きや歯止めがないと、政府与党は思うがままに予算額を増やせるし、好きなことに思うがまま使える。
 多額の税金を、足りない社会保障の財源にまわそうともせず、一方的に政府与党の主張の宣伝につぎ込むだけだ。

□三宅雪子(元国会議員)「政府与党の思うがままでいいのか? 広報予算、安倍政権になり4年で倍増の83億円」(「週刊金曜日」2016年7月1日号)
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