語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】エミリー・ディキンソン「眼が見えなくなるまえに」

2015年06月24日 | 詩歌
 眼が見えなくなるまえに
 私は十分見ておきたい--
 眼をもっている他のひとたちと
 すこしも変わらないように

 だがもし今日
 空が私のものだと告げられたら
 自分の姿に
 胸が張り裂けてしまうだろう

 牧場も 私のもの
 山々も 私のもの
 すべての森 果てしない星も
 私の限られた眼でとらえられる
 真昼のすべても

 水に浸かる小鳥の動作や
 朝のこはく色の道も
 眺めたいときにいつでも眺められるとしたら
 話だけで即死してしまうだろう

 むしろ窓ガラスに
 魂だけ置く方が危なくない--
 他のひとたちは
 太陽にかまわず眼を寄せても

 Before I got my eye put out,
 I liked as well to see
 As other creatures that have eyes,
 And know no other way.

 But were it told to me, to-day,
 That I might have the sky
 For mine, I tell you that my heart
 Would split, for size of me.

 The meadows mine, the mountains mine, --
 All forests, stintless stars,
 As much of noon as I could take
 Between my finite eyes.

□エミリー・ディキンソン「眼が見えなくなるまえに」(『ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集 ~世界詩人全集12~』、新潮社、1968)
□亀井俊介編『対訳 ディキンソン詩集 ~アメリカ詩人選(3)』(岩波文庫、1998)
□MABEL LOOMS TODD & T.W.HIGGINSON “Collected Poem of EMILY DICKINSON”,Crown Publishers,Inc.1982

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 【参考】
【詩歌】エミリー・ディキンソン「わたしは苦悩の表情が好き」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「傷ついた鹿は一番高く躍り上がると」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「声高く戦うのは勇ましい」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「もし駒鳥たちがやってくるころ」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「成功はすばらしく思われる」



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