語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会】孤立不安抱える50代会社員、社会とのつながりを ~ベストセラー『定年後』~

2017年08月31日 | 社会
 (1)定年退職後に、社会とどう接点を持ち日々を過ごしていくべきか。

 (2)大手の企業の、50代の社員向け「ライフプラン研修」は、多くが個人生活のリスク管理に集中している。年金など定年後の資産管理、体調面の管理、配偶者との良好な関係、趣味を持つことなど。
 大事なことだが、定年前の人たちが潜在的に抱えている不安は、お金などの話よりも、むしろ社会とのつながり、人とのつながり、自分の居場所があるか、といいったことの方が実は大きい。
 研修を受ける側の50代の社員も、その不安をはっきりと認識できていない。だから、この分野の研修は、企業でもまだ少数派だ。

 (3)特に「滅私奉公」で、自分の個性を殺すように仕事をしてきた人は、要注意だ。個人の力量をアピールするより、組織の一員としてどう動くかを長年会社から求められてきたのに、急に会社というタガが外れるわけだ。
 突然、自分の思うように主体的で悠々自適な生活を、と言われても、何をしてよいか分からないという人は多いのではないか。
 個性や主体性は、会社という組織の中にいて、自分以外の他人が常に周りにいるから成立していたのだ。退職して独りぼっちになると、個性も主体性も意味を持たなくなり、途端に何もできなくなってしまう。
 名刺がなくなることの怖さもある。自分は一体何者なのか、ということを突き付けられるのだから。

 (4)定年前後に、会社以外で自分の居場所、社会とのつながりが見つけられた人たちの話では、自分の病気について語る人が多い。家族の問題や会社のリストラ、合併などが契機になっている人も多い。挫折や不遇の体験がないと、長い会社員生活の枠組みから脱出するのが難しいという現実もある。
 楠木新氏自身も、40代後半のとき、体調を崩して会社を長期休職した。それが、執筆活動を始める一つのきっかけになった。
 当時は、開業や投資セミナーなどにいくつも参加したが、目立った特技もない自分がすぐに取り組めることはなく、いかに会社にぶら下がっていたかを痛感させられた。

 (5)楠木氏は、50歳前後の社員に対する研修の際、小さいころに好きだったことや、こだわりを持っていたものを振り返ってもらうようにしている。子どものころの自分と、今の自分がつながると、それが一つの物語になる。これがある人は安定しているし、新しい働き方を見い出しやすい。おそらく自分の根っこ、本質みたいなものが見えてくるからだろう。

 (6)定年後、社会的に孤立しないためにも、在職中から不安を抱えたままにしないで、自分はどうあるべきかをじっくり考えてもらいたい。そして何か気になることがあれば、とにかく行動してみることだ。
 次のステップに行くには、右往左往や試行錯誤が不可欠だ。三日坊主になっても三日分は成長できる。また、会社の仲間がいる在職中に動きだすことだ。定年退職後に独りぼっちになってからでは、時間も労力もより多くかかる。

□インタビュー:楠木新(『定年後』(中公新書)著者) 「孤立不安抱える50代会社員 社会とのつながり見出そう」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月2日号)の「【Part 2】生涯現役! セカンドライフ 最強の方程式」
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 【参考】
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