語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】オカネの使い方とインテリジェンス

2018年05月07日 | ●佐藤優
土屋/オカネが話題になりましたが、人間誰しもオカネの魔力にはなかなか逆らえないものですね。

佐藤/コーラがいくら好きでも、10本も飲めませんね。お酒がいくら好きでも、ワインをフルボトルで2本も3本もガブガブ飲んで平気な人なんていません。いくら恋愛が好きでも、3~4人と同時に付き合ったら精神的におかしくなってしまいます。

塙/二股かけているだけで破滅ですよね。

佐藤/ところがオカネについては、10万円もらえば100万円ほしくなります。100万円を手にすれば1千万円がほしくなるわけです。1千万円もらえるようになったら、今度は1億円がほしくなります。
 われわれの情報の世界では、オカネが大好きな人を情報源にしません。情報の仕事を長くやっていると、ある時期から人の顔が値札に見えるようになります。機微に触れる情報を得るためには役所の予算を使うことがありますし、「この人の情報価値は×万円だな」と頭の中で計算してしまうわけです。

土屋/一般企業でも取引相手を接待することがありますし、似たようなところがあるかもしれません。

佐藤/情報の世界では「この人が持っている情報には×万円の価値がある」「1回限りの付き合いならば、いくら払うに値するか」「定期駅に情報提供してもらうために、協力費として毎月10万円ずつ支払おう」なんて計算するわけです。こういう報酬の支払い方をしていると、次第に情報の内容が荒れてきます。

塙/固定給みたいに謝礼が支払われると、だんだん緊張感が薄れてきてしまいそうですね。

佐藤/そのとおりです。毎月10万円もらえるのが当たり前になっちゃうと、精度の高い情報を無理して仕入れようとは思わず、情報提供者が横着し始めるわけです。ですから、良い情報をもってきたときには20万円、悪い情報を持ってきたときには1万円支払うといった歩合制にしてみます。すると今度は、捏造情報をつかまされる危険が出てくるんですよ。

塙/捏造情報ですか。

佐藤/「相手がほしがっている良い情報は何か」と考えるうち、情報の内容に妙なバイアス(偏り)がかかったり、不正確な情報が混じってくるのです。オカネが露骨にからむと、情報の世界ではロクなことがありません。
 情報提供者がものすごく苦労して良い情報を取ってきたときには、ボーナスなんて支払わず「ありがとう」のひと言で済ませてしまう。そのかわり、別の機会に「お誕生日おめでとう」と言って30万円を包んだり、「ウチの奥さんの歯並びが悪くてね」なんて雑談が出たtきに、歯の矯正代50万円をポンとプレゼントしてしまう。周囲の人間関係を利用して、情報とオカネの間に対価性がないようにするのも情報の世界のやり口です。

□佐藤優×お笑い芸人ナイツ(土屋伸之・塙宣之)『人生にムダなことはひとつもない』(潮出版社、2018)の「第4章 仕事とおカネの心得」の「オカネの使い方とインテリジェンス」を引用

 【参考】
【佐藤優】やりたくない仕事はスパッと断る
【佐藤優】「本当に好きな仕事」は長続きする

 

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