語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】新潟県でフクイチ事故検証開始 ~地震か津波か、全国に影響~

2013年11月17日 | 震災・原発事故
 (1)「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(以下、「委員会」と略記)では、10月末から事故検証課題別ディスカッションが始まっている。6つの課題を順次検証する。
   <例1>シビアアクシデント(苛酷事故)対策
   <例2>地震動による重要危機の影響
 福島第一原発事故の原因が地震か津波か、まだ結論が出ていない問題にも切り込む。
 「委員会」における議論が全国の原発再稼働に大きな影響を及ぼすのは確かだ。

 (2)9月27日、泉田裕彦・新潟県知事は、柏崎刈羽原発の規制基準適合審査申請を条件付きで承認した【注】。
 ただし、再稼働が規定路線となったわけではない。
 10月6日、記者会見で、泉田知事は、「(今回の承認は)条件付きの仮承認」にすぎず、「再稼働申請の了承ではない」と強調した。「(県民の)『健康に影響がある被曝をしうる』ということになれば、『仮了承』は無効、フィルターベントは使用できなくなる」と説明した。

 (3)原発に係る新基準は、沸騰水型炉(BWR)に、「フィルター付きベント」(原子炉容器の圧力を下げる)の設置義務を課す。
 このため、東電は10月22日、この設備の本格工事に入った。
 だが、設置されても、「委員会」が、「ベント使用不可」という結論を下す可能性もある。

 (4)泉田知事は、「福島原発事故の検証が先」という立場を貫いている。
 地震原因説(原発事故が津波ではなく、地震で配管など重要機器が損傷したことが原因とする)に係る質問に対して、次のように回答している。
 「国民の多くの方が(フクイチで)一体、何があったかを知りたがっている。そのポイントの一つなのだろうと思います。今度、ディスカッションという形で専門家の委員の方々に深堀をしていただいて事故原因に迫ってほしい」

 (5)「委員会」委員の一人は、国会事故調の委員を務めた田中三彦・元原発技術者だ。いちはやく地震原因(損傷)説を提唱し、津波原因説を提唱してきた東電と対峙。
 「委員会」の検証課題別ディスカッションでは、「地震動による重要機器の影響」を担当し、この議論には東電も参加する(予定)。

 (6)廣瀬直己・東電社長は、9月26日の泉田知事との面談で、「第一ベント」(地上に配管)に加えて「第二ベント」(地中に配管)の設置も提案し、これが評価されて翌日の承認となった。
 にもかかわらず、津波原因説をとる東電は、第一ベントが完成すれば柏崎刈羽原発の再稼働は可能、という考えを採っている。
 しかし、地上の配管が地震損傷する可能性が無視できなければ、第一ベントだけでは不十分で、第二ベント完成までは再稼働は不可能となる。
 第二ベントは、設計に入ったばかりで、完成時期は数年遅れる。「来年からの再稼働」を前提に、金融機関からの融資を受けている東電の経営計画が崩れてしまうことになる。

 (7)新潟県中越地震(2007年)で発生した火災は、地震による配管損傷が原因だった。だからこそ、泉田知事は
  (a)「福島原発事故の検証が先」という立場を崩さず、
  (b)課題別ディスカッションで事故原因についても議論する場を設け、
  (c)第二ベントの設置を求めた。
 (b)が今後注目を集めるのは確実だ。地震原因説が採用されたら、耐震性強化が必要になるから、新潟を含め全国の原発再稼働に影響を及ぼす。

 【注】「【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~

□横田一(ジャーナリスト)「地震か津波か、原因に切り込む 新潟県で東電の福島原発事故検証がスタート」(「週刊金曜日」2013年11月15日号)
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