街の大通りの
有名な古美術商の飾り窓に
大きな日本人形が飾られていた。
由緒ある大名の鎧兜と
高価な志那陶器の間に
美しいキモノを着てふんわりと座っていた。
その人形は
ときどきピクリと眼ばたきした、そして
何かに魅入られたようにじいっとしていた。
沢山の通行人が立ち止まり
しばらく愉しそうに見物し笑って去って行った。
その日本人形は評判の娘だった。
お茶目で、頭の弱い・・・・
青い眼の陽気な紳士が笑いながら店へ入って来た。
--ショウウィンドウノ、ニンギョウ
イクラデスカ?
--あれは売約済みです。
この店の主人は答えた。
口惜しそうに指を鳴らせて外国の紳士はたずねた。
--タレニウリマシタカ?
--神さまに・・・・。
しずかな声で
娘の親は答えた。
□天野忠「人形」(『天野忠詩集』(現代詩文庫)(思潮社、1986))
↓クリック、プリーズ。↓
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【参考】
「【詩歌】戦争に負けると ~米~」
「【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ」
「【詩歌】猿飛佐助の一日」
「【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事」
「【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~」
「【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~」
「【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」」
有名な古美術商の飾り窓に
大きな日本人形が飾られていた。
由緒ある大名の鎧兜と
高価な志那陶器の間に
美しいキモノを着てふんわりと座っていた。
その人形は
ときどきピクリと眼ばたきした、そして
何かに魅入られたようにじいっとしていた。
沢山の通行人が立ち止まり
しばらく愉しそうに見物し笑って去って行った。
その日本人形は評判の娘だった。
お茶目で、頭の弱い・・・・
青い眼の陽気な紳士が笑いながら店へ入って来た。
--ショウウィンドウノ、ニンギョウ
イクラデスカ?
--あれは売約済みです。
この店の主人は答えた。
口惜しそうに指を鳴らせて外国の紳士はたずねた。
--タレニウリマシタカ?
--神さまに・・・・。
しずかな声で
娘の親は答えた。
□天野忠「人形」(『天野忠詩集』(現代詩文庫)(思潮社、1986))
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【参考】
「【詩歌】戦争に負けると ~米~」
「【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ」
「【詩歌】猿飛佐助の一日」
「【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事」
「【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~」
「【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~」
「【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」」