語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】天野忠「人形」 ~異人さんに連れられて~

2015年05月22日 | 詩歌
 街の大通りの
 有名な古美術商の飾り窓に
 大きな日本人形が飾られていた。
 由緒ある大名の鎧兜と
 高価な志那陶器の間に
 美しいキモノを着てふんわりと座っていた。
 その人形は
 ときどきピクリと眼ばたきした、そして
 何かに魅入られたようにじいっとしていた。
 沢山の通行人が立ち止まり
 しばらく愉しそうに見物し笑って去って行った。
 その日本人形は評判の娘だった。
 お茶目で、頭の弱い・・・・

 青い眼の陽気な紳士が笑いながら店へ入って来た。
 --ショウウィンドウノ、ニンギョウ
    イクラデスカ?
 --あれは売約済みです。
 この店の主人は答えた。
 口惜しそうに指を鳴らせて外国の紳士はたずねた。
 --タレニウリマシタカ?
 --神さまに・・・・。
 しずかな声で
 娘の親は答えた。

□天野忠「人形」(『天野忠詩集』(現代詩文庫)(思潮社、1986))
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 【参考】
【詩歌】戦争に負けると ~米~
【詩歌】親をにらむと鰈になるぞ
【詩歌】猿飛佐助の一日
【詩歌】「知己」またはヤマアラシ症候群の事
【詩歌】長生きの象 ~「あっち」へ行く道~
【詩歌】山を泣きながら歩いている者 ~東洋の神秘~
【正月】日本のケストナー、天野忠の「新年の声」





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