語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】身近な食品で今日から健康に(2) ~落花生~

2016年12月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2013年1月、スペインの王立研究所が、約3,500人を対象に実施した追跡研究の結果を発表した。

 (2)この研究では、まず①エクストラバージンオリーブオイルを多く含んだ食事を摂ったグループの糖尿病発症リスクが抑制されたことに注目が集まった。さらに②約30グラムのナッツを加えた地中海食のグループも糖尿病発症リスクが約18%低下した。
 研究の発端は、長寿で知られるクレタ島だ。クレタ島民の心疾患リスクが極めて低いことに注目が集まり、研究が開始された。当初の研究では、オリーブオイルなどを多く含む地中海食は心血管系疾病リスクを約30%低下させることが報告された。それを受けて糖尿病に関してもサブ解析を行った結果、糖尿病にも効果があることがわかった。

 (3)「実践法」・・・・ナッツならどの種類でも構わないとされるので、落花生などが手軽。1日の消費量は実験結果と同じく30グラム程度が目安となる。
 落花生は1粒およそ1グラム。1日30粒ほど食べれば糖尿病の予防に繋がるわけだ。
 落花生は、予防だけでなく、すでに治療現場でも活用されている。糖尿病治療のため糖質制限食を実践している患者に落花生をおやつ代わりに食べることをすすめてている。腹持ちがよい上に糖質が少ないから、血糖値の上昇を最小限に抑えられる。

 (4)落花生は糖尿病の合併症予防にも効果があるという。
 落花生はオレイン酸という良質な脂肪を多く含んでいる。糖尿病の三大合併症とされるのは、腎障害、網膜症、神経障害だ。これらは血糖値を抑えればコントロールできる。問題はこれ以外の動脈硬化に由来する大血管合併症だ。これは血糖値を抑えるだけでは防げないが、オレイン酸は動脈硬化予防に効果的だ。

 (5)血糖値を低下させるインスリン合成に重要な役割を持つのが亜鉛だ。
 亜鉛はインスリン合成に不可欠だ。ところが糖尿病患者は、尿酸中の亜鉛の排泄量が増加するため、亜鉛が欠乏する傾向にある。そのため亜鉛を補給することが必要になる。牡蠣に多く含まれるほか、イカやカニなどの魚介類、牛肉などにも多く含まれている。

 (6)合成されたインスリンを正常に働かせるためにミカンが重要だという研究結果もある。三ヶ日ミカンの産地として知られる浜松市の三ヶ日町を舞台に研究を行っているのが、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門だ。
 2003年から三ヶ日町で約千人の住民を対象にした疫学調査を行っている。2006年には、温州ミカンをだいたい1日3、4個食べている人は1日1個以下の人に比べて、インスリン抵抗性リスクが半分程度という論文を発表した。現在、さらなる追跡調査で検証している。
 インスリン抵抗性とは、インスリンの効きが悪くなっている状態を指す。抵抗性が高くなれば、血糖値が下がりにくくなる。
 温州ミカンに特徴的に含まれるβ-クリプトキサンチンがポイントだ。ミカンをたくさん食べると肌を黄色くさえる物質で、インスリン抵抗性リスクを下げる効果を持つことが動物実験からもわかっている。
 三ヶ日町を含む浜松市は、健康寿命が全国で1位となったことでも知られる。

 (7)ただ、ミカンには注意すべき点もあるという。
 ミカンは予防効果があるかもしれないが、糖質が多く含まれているため要注意だ。既に糖尿病の人や予備軍は控えたほうがよいかもしれない。

□守屋浩司・編『人生を変える! 食の新常識/カラダにいい食事 決定版』(文春ムック、2016)の「身近な食品で今日から健康に!」(初出「週刊文春」2015年5月28日号)
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 【参考】
【保健】身近な食品で今日から健康に(1) ~チョコレート~
【保健】意外や意外、卵で糖尿病は予防できる


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