学生と話しをしていて、グローバリゼーションと言うのは話しは難しいものだと思った。彼も経済的にはグルーバリゼーションはあるが文化的にはそうならないと考えていたようだが、調べれば調べるほどドツボにはまってゆくらしい。しかもアメリカニゼーションとグルーバリズムを結びつけると相当に困難になる。
まあそれがグローバリゼーションなのだが。
そこで私も考えてみたが、変な事に気がついた。グローバリゼーションを求めているアメリカが、実はドメスティックな国だと言う事だ。自由主義と言う普遍性を持っているが、かれらのシステムはなかなか受け入れがたい。
それでも彼らはグローバリゼーションを推進したがっているように見える。
なぜなのだろうか。
多分だが、冷戦時代にさかのぼる。覇権国家であったアメリカは共産主義のソ連と対峙し、自由主義国家を庇護する立場にあった。そのため関税等アメリカは率先して自由化を進めなければいけなかった。その中で日本の台頭やドイツの興隆があった。
特に日本との経済摩擦は大きく、繊維と自動車で日本から大きく譲歩を引き出した。
実はもしかするとこれが間違いの始まりだったのかもしれない。自由主義経済の盟主が、脅迫で譲歩を引き出したと見られたのだ。そしてそれがアメリカ国内からも批判があった。
自由を標榜する国家にあるまじき行為だからだ。丁度この頃新自由主義経済学派がアメリカで現れる。政府の規制が大嫌いな人たちだ。これは伏線になる。
さて日本との2国間協議は、アメリカにある事を気がつかせた。関税以外にも制度的障壁があるのだと言う事だ。日本との2国間協議は今でも続いているが、これも構造障壁について話し合うと言う事になっている。この辺りを全面的に解決するためには多国間協議がいい事が解った。NAFTAの発足だ。ここからWTOを中心に貿易の枠組み作りに積極的に参加してゆくようになる。
さてなぜアメリカはこういった貿易について積極的に関与するようになったのだろうか。これにはレーガン時代の双子の赤字問題がある。産業が衰え貿易赤字が増え、それに対して財政赤字が増大した。国債を大量に発行しなければいけなくなったのだ。政策としては産業の保護・育成だがなかなかうまくいかない。短期的には国債をどう売りさばくのか、と言う問題になる。国内ですべて売却できればいいのだが、その規模を超えてしまっている。そこでアメリカ金融が考えた手法が、アメリカ国債を外国に買ってもらう、そしてアメリカに入ったお金から、今度は海外に投資する。投資が成功すればその国は豊かになりアメリカ国債もさばけるし投資した分のリターンも得られる。こうしてアメリカの金融業界が大きくなるのだが、この際に問題になるのが、各国の投資条件の問題だ。ある国のある企業の海外投資家の出資比率が30%までに制限されている国とか一杯ある訳で、新自由主義経済を信奉する人たちにとっては許されざる事がまかり通っているのが世界の話しで、こういった不自由さに金融業界がアメリカ政府に文句を言い始める。
そういえば株のカラ売り(自分では株をもっていないが、借りていっぱい売り浴びせて暴落させ、底値の時に大量に買い戻して以前よりいっそう多い株式を収得する手段。意図的な株式操作になるので、禁止されたりされなかったりというグレーゾーンの取引)が出来ないと怒った、ノーベル経済学者がいるとかいないとか。新自由主義経済と言うのはそんな所がある。彼らがアダム・スミスを引用するのは間違っていると思う。
もっとも重要な事件は、ソ連の崩壊だ。
ここで国家間の枠組みが大きく変化したのだ。例えば今まで人件費が高くとも、アメリカの陣営で生産していないといけなかったものが、人件費の安いソ連に近かった国家でも生産できるようになったのだ。
国家はカタログにならぶ存在になったのだ。相対化したのだ。国家の中身はカタログスペックでしか見られないものになっている。後は神話だ。勤勉な日本人とかガンコなドイツ人の作る製品はすばらしい、というブランドになっているだけだ。
企業から見たら、別にアメリカで生産する意味も無い。いやそれは初めっから解っていた事だ。だが敵を利する事は出来なかっただけだ。今や敵ではない。
初めはおずおずと、それが2000年を境に一気に来ているのが企業のグローバリゼーションだ。どこに本社をおいてもいい時代になったのだ。代表例がケイマン諸島のタックスヘイブンだろう。シンガポールもそうだ。
グローバリゼーションの真の主役は誰か、解ると思います。多国籍企業です。アメリカはその流出を食い止めるべく努力しているだけだと思います。金融業は完全にそうなってしまいました。
多国籍企業の都合のいい枠組みが形成されている、といえばそうなりますが彼らをどうするのかが国家運営になって久しいと言う事があると思います。この例では90年代のアジア経済危機です。巨大な金融経済のフローが国家を一気に破綻寸前までに追い込んだ事件でした。ソロスのポンド売り浴びせ事件もありました。
規制すれば逃げるし自由にしたらとんでもない事を仕掛ける彼らをどうするのか、もはやアメリカを超えている事がグローバリゼーションなのでしょう。