カルテ番号 あ・28 ７度目（7）
言いたい事を言うと、愛田恵子はさっさと帰っていった。
権力者を操る事はできるだろう。
だが、それは一部の一時に限られる。
権力を求める馬鹿共は山ほどいるのだ。
次から次と押し寄せてくる。
無能にすれば追い落として、次の権力志向者がイスに座る。
だから、愛田恵子の大仕事は、結局はささやかな抵抗にしかならない。
そんな事は１２０年も生きていれば知っている。
それでもするのが、生きている証拠なのだ。
風間陽水はその大仕事よりも気になる事がある。
愛田恵子の次の人生だ。
愛田恵子としては、海外で暮らしている事になるだろう。
すぐに別な国に引っ越し、追跡はできなくなるだろう。
ところが実際は日本で暮らすのだ。
明治時代や大正時代、そして昭和時代までは個人管理が甘かった。
別な土地にさえ行けば、何とか誤魔化して３０年くらいは暮らしていけた。
現代は背番号で管理される。
顔も指紋もどこかのデータベースに載っている。
どんな田舎にいっても、インターネットで検索できてしまう。
長寿族は裏の方法を使わなければ、次の人生を送れない。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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