「風間陽水の依頼簿（カルテ）・258」

カルテ番号　て・6（15）

やはり、思い切って言おう。
家族にも誰にも言ってないことだ。
誰も私がそんな事を考えているなんて、夢にも思わないだろう。
私だって３ヶ月前まで、そんな事は思わなかった。
だが、一度思ったら頭から離れない。
清美は目を瞑ったまま、ついに話し出した。

「先生、実は、どうしてもチャレンジしてみたい事が沸き起こってしまったの。
それも、誰もが反対するようなこと」
院長は微笑みながら言った。
「自分の人生です。他人に危害さえ加えなければ迷惑くらいいいでしょう」
「私、結婚は失敗でしたが、それ以外は普通の生活を送ってきました。
自分が何をしたいとか、何ができるか、なんて考えた事もなかったです。
でも、２ヶ月前に先生から、何をしたいの？と聞かれて冷静に思いました。
私は、どんな生き方をしてみたいのかしら、と」

院長は黙って聞いている。
「私が今まで嫌々ながら認めて、だからこそ封じ込めていた部分があります。
それは私の単なる特徴だったのに、変に意識していました。
自分らしさって、自分の特徴を活かすことだと気付いたのです。
活かし方はいろいろあるでしょう。
私は今までと全く違う世界に飛び込んでみたくなりました。
それは、いわゆる水商売です」
つ、ついに、初めて他人に言った・・・

（登場する人物・組織・その他はフィックションです）


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