ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

「少女地獄」

2010年12月13日 | 教育・文化
まあ、なんという奇抜な小説のタイトルでしょう。
「A Young Girl's Inferno」(少女地獄)とは。

この短編『少女地獄』は、夢野久作(1889-1936)の作品。
その中の1篇、「何でも無い」が、NHK「Jブンガク」で取り上げられた。

あらすじは、誰からも好かれ愛される(男女、老幼を超越した)看護婦、姫草ユリ子、自称19歳が、第一人称の語り手、臼杵医師やその家族、周囲の人たちを、彼女の不思議な言動によって幻惑されるという物語。語り手は医師らしく「病的な虚言癖」であることをさいごには、悟らされるが、それでも「彼女は罪人ではないのです。一個のスバラシイ創作家に過ぎないのです」と言わせてしまう。

放送されたJブンガクの中では、
杏は「姫草ユリ子はいろいろなタイプの役にハメ込める女優向き」「カットのかかった素の自分が耐えられなくなるのかな」と客観的な見方。

一方同世代の加賀美セイラは「相手の気持ちを盛り上げるために、適当なウソを言ったり・・」とちょっぴり理解を示す。

ロバートキャンベルは「青森から上京して医家に住み込むユリ子には、社会的な階級としての自覚(Upper Class VS Working Class)があった」とまで解説してみせた。

小説は受け取り手の感じ方によってずいぶん多様なものにと変わる。個々人のそれぞれれの読解力が、さまざまな解釈を生む。

Jブンガクでは、太宰治、森鴎外、正岡子規、そして夢野久作の4人を紹介した。私は夢野久作のことは、何も知らなかった。作品を読んだのも今回が初めて。名前の通り「夢野」ような作家、と感じた。
多感な少女にとっては、この不条理な世界、病的に見える事象が、ある意味「地獄」と感じられるものなのかもしれない。もっともそれは少女特有なものとばかりも言えないようにも・・。


少女地獄 (角川文庫)
夢野 久作
角川書店

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