「今戸のあねさま」の実物です。「地口ゑ手本」の絵と同じ後ろ姿を撮ってみました。
お話しましたように、「裃雛」とか「ドガミシモ」とも呼ばれる男女一対の土人形の女雛のほうです。このような伝世の人形以外にも各地の近世遺跡から大量に出土しています。錦絵にも描かれていることが多く、それだけポピュラーだったことが偲ばれます。
この写真の人形の配色を見ますと、黄色はキハダを煮だした黄色い汁と蘇芳を煮だした赤紫色とを使い合わせて発色させています。
天保年間の人形・玩具の配色見本を見ますと、既に群青や朱色、丹色などの色が主流になっているので、それより古いやり方なのではないかと思います。天保以降から明治までの裃雛は裃やうちかけ部分を群青、着物部分を朱色、新洋紅、スカーレット染料で塗られた例が圧倒的に多くむしろこうした配色のほうが現代の人からのイメージに強いのではないかと思います。
不思議なのは、なぜ女雛ばかり単体で「あねさま」と呼ばれていたのか、男雛はどう呼ばれていたのか、ということです。裃雛についてはまたの機会に採り上げてみたいと思います。
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