最後の今戸人形師であった尾張屋・金澤春吉翁(明治元年~昭和19年)の作です。素焼きの生地に胡粉で下塗りし、染料や胡粉で着色して仕上げたもの。今戸の土人形であると同時に実用品としての性格もあるので、今戸人形というより今戸焼として採り上げます。この火入れ、前の持ち主が大切にしていたようで、一度割れてしまったものを丁寧に継いであります。
「火入れ」は、背中に口を開け、中に灰を敷いた上に火種を置き、煙草に火をつけたり、また手焙りとして、手をかざしたりして暖をとることもできます。
そういう意味で、手あぶり火鉢の一種と考えてもよいのかどうか、、。
今戸焼にはろくろで挽いて成形し、口を切あけたものもあるのですが、このように前後2枚の型を合わせて成形する人形型のが有名です。
種類としては、尾張屋さんはおかめ型、招き猫型も手掛けていたようですし、近世遺跡からは狸や烏帽子を被った猿なども出土しています。特に有名なのが、この河童とおかめ、招き猫の型ではないでしょうか?
古い錦絵に描かれていたり、また歌舞伎の世話物の場面で神社仏閣の傍らにある茶店の赤い毛氈を掛けた床几(ベンチ)の上に置いてあることが多いです。茶店に限らず、店先などでちょっと一服、なんてところで親しまれていたものではないでしょうか?
尾張屋さんでは、このほか河童の土人形も何種類か手掛けていらっしゃいました。
尾張屋さんの河童の彩色は独特で、緑というよりセルリアンブルーのような色を濃くしたような染料?で着色されています。頭の皿も塗り分けてあり、目がいきいきとしています。
向かって右側面に「尾張屋」の窯印があります。
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