「口入狐」「子守狐」の彩色中。砂子を蒔く工程は毎度ながら緊張するといえばよいのか、手に汗握る作業です。彩色した地色の上に砂子(土人形の場合本金ではなくて、真鍮粉のまがい砂子)を蒔いて装飾するケースがあり、昔の今戸人形でも行われていました。
江戸時代から続いた最後の生粋の今戸人形の最後の作者であった尾張屋・金澤春吉翁(明治元年〜昭和19年)のお作りになられた人形にも砂子が蒔かれていることが多く見受けられます。
昔の今戸人形の特色のひとつですから、それをお手本に目標として再現するには、省略することなく、行うべき工程ですが、結構しんどいです。もしもタイムマシンがあって作業する春吉翁の様子を拝見できれば、それに倣って骨法を学ぶことができるかもしれませんが…。
漆器などには本金の砂子しか使わないそうですが、素人考えで、知らないでいうのも恐れ多いですが、漆の場合砂子が蒔かれる面の漆の乾燥は瞬間的なものではないので塗った面の粘ばりけは砂子が蒔かれて落ちるまで保たれていて貼り付くことができるのだと思うのですが、土人形の表面の泥絵具のマットな肌合いに蒔いて貼り付ける塩梅が難しいと思うのです。