いよいよ福岡市民の水道用水を確保するために、試験湛水中の五ヶ山ダムが放流される。多くの市民は安堵していることだろうが、ここで忘れてはならない問題がある。五ヶ山ダムのすぐ近く、脊振山中に枯葉剤の原料となる245T剤が埋設されていることを。
北九州市立大国際環境工学部職員の原田和明氏は、昨年の西日本豪雨後、埋設地の周囲に有害物質が漏れていないかを心配し、西日本新聞に情報を提供。その時、はじめて埋設の事実を知ることとなったが、おそらく多くの市民がそうだったのではないだろうか。問題は、埋設されて40年もの年月が経った今もなお、245T剤が放置されていることだ。しかも、埋設地のすぐ近くには五ヶ山ダムがある。まさに今、その水が福岡市民の水道用水として使われようとしている。この問題を無視し、五ヶ山ダムに水は沢山あるので心配ないという福岡市。245T剤の埋設事実を知りながら五ヶ山ダム事業を推し進めた福岡県。どちらも無責任と言うほかない。
昨年12月、田村衆議院議員とともに埋設地へ行かれた原田氏から、2ヵ所の陥没痕が確認できたとの連絡があった。落葉によって地面が良く見えたとのことで、これにより245T剤が2ヵ所に分けて埋められていることが明らかになった。そこで、五ヶ山ダムの水が放流される前に、その状況を確認しておこうと、昨日(2日)、三度現地へ向かった。
埋設地は、坂本峠の九州自然歩道入り口から10分程度のところにある。冬期で山の中は見通しが良いので、登山道からも容易に確認することができる。昨年9月とは違い、フェンスの中の草木も枯れて地表の状況もよくわかる。目を凝らして見ると、何やら水たまりがある。陥没痕だ。穴は小さめだが、先日の雨で水が溜まっていたのですぐにわかった。それは林道側の扉近くにあった。続いてもう一つを探す。フェンスの周囲をゆっくりまわっていると、少し視界の開けたところがあった。二つ目の陥没痕だ。穴は大きめで形もはっきりしている。二つ目の穴は、一つ目の穴とほぼ対角線上のところに位置していた。(下図参照)
なぜ陥没しているのか。フェンスの高さは約1.5mあり、四方囲まれているので、猪などの野生動物による仕業ではない。まず自然に陥没したとみてよいだろう。昨年12月5日の衆議院農水委員会で、田村議員は脊振山中の枯葉剤問題を追及。その際、林野庁は、この埋設地には245T剤が2立法㍍のコンクリート塊にして埋められていると説明した。しかし、それを証明するものはない。埋設方法については、埋設に従事した職員から聞き取り調査をしただけで写真もないという。もしかすると、245T剤はコンクリートで固められていないのではないか。だから陥没しているのではないか。陥没痕を目の当たりし、その思いはさらに強まった。もう汚染されているのではないか。
佐賀森林管理署は毎月2回、245T剤埋設地で調査をしているが、フェンスの外からの目視のみで、フェンスや看板の具合しか見ていない。第一、陥没していることも報告していない。これでどこが安全だと言えるのだろうか。また、周辺自治体(福岡市・那珂川市・春日那珂川水道事業団)は、毎年、林野庁に245T剤撤去の要望書を提出しているというが、林野庁は動く気配すらない。報道によると、福岡市はダムや周辺河川の水質検査を続けており、異常は確認されていないというが、一方で、市担当者は、絶対に流出しないという確証はないと本音を漏らしている。安全だという保障はどこにもないのだ。
まずは、市の調査がどこでどういう方法でなされているのか、水質調査の実態を知る必要がある。近く福岡市に情報公開請求をするつもりだが、果たして、福岡市民はこの問題をどう受けとめているのだろうか。
《2019.2.13更新》五ヶ山ダム放流決定、14日から
ついに、明日(14日)から2週間を目安に、五ケ山ダムが放流されることになった。1日あたり12万㎥を放流、水は南畑ダムを通り、福岡市民の水道用水として活用されることになる。先月31日に降った雨で貯水率は持ち直していたが、2月に入ってからは数ミリ程度。ふたたび貯水率は低下していた。そのため、放流決定となったようだ。できれば明日、現地に行ってみたいが、、
ところで、五ヶ山ダムの近くに埋設されている245T剤による水質汚染の調査をしている福岡市に対し、昨日、情報公開請求を行った。公開は来週21日の予定となっている。市役所2Fの情報公開室窓口で直接請求をしたが、職員から延期の可能性もあると言われた。また公開当日には、担当者からの説明を希望した。果たして、福岡市はどういう説明をし、どこまで公開するのか。後日、報告したい。
・雨不足で五ケ山ダム本格活用へ(NHK福岡ニュース 2019.2.12)
撮影日:2019.2.2
見通しがよくなった埋設地
一つ目の陥没痕 穴は小さいが、ここだけしっかり雨水が溜まっていた(林道側)
地面が透けて見える
二つ目の陥没痕 笹の葉を被っているが、ここだけ落ち込んでいた(登山道側)
落ち込んでいるところだけ 葉が湿っている
陥没位置図(寸法は実寸、敷地は約20坪) こういう埋め方がされているということでは
フェンスのネットや中骨がたわんでいる
登山道からもよく見える
昨年の西日本豪雨の爪痕が (九州自然歩道 坂本峠入り口付近)
坂本峠 ここから入って10分程度のところに埋設地はある
385号線 坂本峠から佐賀への通行は可能になっていた
五ケ山ダムと245T剤埋設地の位置関係
先日からの雨で福岡市関連のダム貯水率は微増中、試験湛水中の五ヶ山ダムからの取水はいつ、、(2月14日からに決定しました)