昨年12月27日、安倍政権は中東地域への自衛隊派遣を閣議決定した。そのわずか1週間後の1月3日、イラクの首都バグダッドの空港近くで、トランプ大統領の命令のもと、アメリカ軍のドローン空爆によりイランの革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らが殺害された。アメリカとイランの緊張関係が高まり、ネット上では第3次大戦への危機感が渦巻いている。こうした中、今、福岡市であることが進められている。それは住民記録システム(基幹システム)の更新である。
昨年末(政府が中東地域への自衛隊派遣を決定した頃)、福岡市は自衛官募集で必要となる対象者(18歳前後の高卒予定者と22歳前後の大卒予定者)の名簿を防衛省に一括提供する方針を固めた。現在、そのための作業が行われている。というのも、従来の住民記録システム(基幹システム)には生年月日などを指定して対象者を抽出する機能はなかった。だが、新しく導入するシステムではそれが可能になる。そこで、高島市長はこのシステムを利用し、防衛省へ個人情報を提供することを考えついた。本人の同意なしでの情報提供は人権侵害にあたるにもかかわらずである。第一、このような重要案件を議会に諮ることもなく、トップダウンで決めてしまうところが大問題なわけで、自分の意志にかかわらず、突然、自衛隊募集要項が届けば、驚き戸惑う若者も出てくるに違いない。
今後、福岡市は個人情報保護審議会に諮問し、目的外利用を認める答申が得られ次第、防衛省に情報を提供するという。ちなみに、福岡市には「福岡市個人情報保護条例」という立派なものがある。その第1章第1条(目的)「本人が自己の個人情報の取扱いに対して関与する権利を明らかにするとともに、個人情報の適正な取扱いを確保し、もって市政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」とある。防衛省に個人情報を差し出す行為はこれに反する。それ故、市は審議会で個人情報の目的外利用(特例)を認めさせようとしている。だが、そんなことをすれば、この条例の存在意味はなくなる。今のところ審議会の日程は公にされていないが、議員の一部(共産党と緑ネット)や市民団体からは提出拒否を申し入れる動きが出ている。
報道によれば、昨年、安倍首相が「多くの自治体が自衛官募集の協力を拒否しているという悲しい実態がある」と発言したことが発端のようで、それに高島市長が手を差し伸べた形だ。そういえば、昨年11月、高島市長は時事通信のインタビューで「私は福岡市が国を助け、国をけん引している自負がある」と述べている。自惚れも相当なものだが、これが福岡市の安倍政権化が進む所以である。というわけで、2020年が平穏であってほしいとの願いとは裏腹に一波乱起きそうな福岡市。今年も高島市長の動向から目が離せない。
― 遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします ー
《高島市長、自衛官募集のための名簿提供を正式表明》(2020.1.9更新)
1月6日、高島市長は記者会見で「自衛官募集のための名簿提供」を正式に表明していた。アップされた記者会見資料を見ると、審議会は遅くとも4月までには行われるようで、認められれば新年度(4月)から提供を始めるという。もしや結果ありきなのか。それにしても、高島市長は記者の質問にまともに答えていない。焦点をはぐらかしている。こういうところも安倍首相とそっくりだ。
(市政記者さん、もう少し突っ込んでほしいな、、)
昨年1月6日、下関市で行われた「新春の集い」、今年はどうなる?(写真:産経新聞より)
審議員の方々には適正な判断をお願いしたい (資料:福岡市ホームページより)
《関連記事》
・自衛官募集巡り、福岡市名簿提供 新年度から(朝日新聞 2020.1.7)
・福岡市、自衛官募集に住民名簿提供(毎日新聞 2020.1.7)
・自衛官募集、福岡市が名簿提供へ システム更新、対象者抽出(産経新聞 2019.12.29)
・「アベノミクス引っ張る」と自負=高島宗一郎・福岡市長(時事ドットコム 2019.11.7)
《関連資料》