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伊福部昭の音楽観に迫る 片山杜秀教授が刊行 郷愁誘う旋律 札幌の原体験もベース

2024-03-06 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2024年3月5日 12:20

 慶大教授(政治思想史)で音楽評論家の片山杜秀が「大楽必易(たいがくひつい) わたくしの伊福部昭伝」(新潮社)を出した。映画「ゴジラ」の音楽で知られる釧路生まれの作曲家・伊福部昭(1914~2006年)に約20年にわたりインタビュー。札幌での小学校時代に親しんだ明清楽(明代・清代の中国音楽)やロシア民謡が原体験になったことなどを、伊福部の息づかいが伝わるような読み物風にまとめた。生誕110年を迎えた伊福部の音楽観、ものの考え方が分かる一冊だ。

 「伊福部信者」を自ら任じ、幼い頃からその音楽に夢中だった片山が、東京都内にある伊福部の自宅の門を最初にくぐったのは学生時代の1985年。コンサートのプログラム冊子に伊福部の言葉を載せようと、取材を試みた。その後、足繁く通うようになり、結局出版されなかった「伊福部自伝」の下書きのまとめ役となって、長時間のインタビューを繰り返した。「80年代を中心に録音は100時間近くになるのでは」と話す。「ゴジラの音楽はラヴェルのピアノ協奏曲を意識しているのか」といった、伊福部が嫌がるような問いかけの様子も紹介している。

 これまで、伊福部の音楽の原体験は十勝管内音更町でのアイヌ民族との交流にあるなどと言われてきた。片山が「その前に原体験はあるのか」と聞くと、「小学低学年時代に出合った明清楽や、バラライカ弾き語りによるロシアの民謡や通俗歌曲」と答えが返ってきたという。

 このことから「日本とかロシアとかではなく、自分の原体験で良いと思ったものに忠実であろうとした」と推察。「あまりに原初的すぎることによって、民族の違いを越えて懐かしく思えるような旋律」を突き詰めていったとみている。

 日本的、民族的とも言われてきた伊福部。札幌へ戻ってからはバイオリンを懸命に弾き、西洋クラシック音楽にも触れていく様子を、本人の言葉とともにたどっている。「それらが混じっているのが伊福部先生らしさ。それにお墨付きを出したのがコーカサス(黒海とカスピ海に挟まれた、コーカサス山脈を含む広い地域)育ちで、いろいろな民族が入り交じっている世界の魅力を知っていたチェレプニンだった」と指摘する。

・・・・・

 遠洋マグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が被ばくしてから70年、映画「ゴジラ」シリーズの70周年に合わせての出版。四六判366ページ。2970円。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/983287/


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北海道・アイヌ文化振興施設「ウポポイ」、教育旅行の探求プログラムを開発、多文化共生社会の実現をテーマに

2024-03-06 | アイヌ民族関連

トラベルボイス2024年03月05日

北海道白老町のアイヌ文化振興施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、多文化共生社会の実現を探究できる機会を提供する「冬季教育旅行プログラム」の開発を進めている。今年冬季から、このプログラムでの教育旅行の受け入れ始める予定だ。

このプログラムは、ウポポイをメインに登別・洞爺めぐり、ウポポイで働く職員との交流や体験などを通じて、それぞれの活動・役割を知ることで、誰もがその人らしく生きいきと暮らすことができる共生社会を探求するもの。

事前、現地、事後学習で学びをサポートする探求ワークブックや指導マニュアルを開発する予定。開発に向けては、北海道内外の生徒むけにモニターツアーを実施し、内容の検討を進めていく。

https://www.travelvoice.jp/20240305-155218


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北海道の様似アイヌ協会の一行が原住民族委員会を訪問、台日の先住民族交流について意見交わす

2024-03-06 | アイヌ民族関連

台湾トゥデイ2024/03/05 | 

原住民族委員会のイチャン・パロー(Icyang‧Parod)主任委員(大臣に相当)は4日、日本の様似アイヌ協会(北海道様似郡様似町)の熊谷カネさんとその一行の表敬訪問を受けた。(原住民族委員会)

台湾先住民族行政を所管する原住民族委員会のイチャン・パロー(Icyang‧Parod)主任委員(大臣に相当)は4日、日本の様似アイヌ協会(北海道様似郡様似町)の熊谷カネさんとその一行の表敬訪問を受けた。原住民族委員会は、台湾先住民族の踊りで一行の訪問を歓迎するとともに、台湾と日本の先住民族政策の発展や今後の協力・交流などについて意見を交わした。以下はイチャン・パロー主任委員の歓迎の挨拶。

 ★★★★★

 本日は原住民族委員会を代表して、北海道の様似アイヌ協会の一行を出迎えることができて非常に嬉しく思う。私は2016年と2022年に北海道を訪れ、国立アイヌ民族博物館を参観し、先住民族文化の発展や経済産業政策などについて意見交換を行ったことがある。

 1940年代、私の両親は日本の教育を受けて育った。このため私も小さいころ、アミ語以外で最初に接触した外来語は、台湾華語ではなく日本語だった。だから私も簡単な日本語ならできる。

 2016年8月1日、蔡英文総統は政府を代表して、先住民族への謝罪(訳注:過去の政権によって先住民族が不公平な扱いを受けてきたことについての謝罪)を行った。蔡総統はアジアで初めて、先住民族に謝罪を行った国家元首となった。蔡総統は謝罪文の中で、9項目の謝罪と8項目の約束を提示した。これが蔡英文政権にとって、その後の8年間の先住民族政策の基礎となった。

 例えば台湾の政府はかつて、先住民族が自身の母語を使用することを禁止してきた。このため先住民族の言語が大量に失われてしまった。蔡総統はこれについて謝罪すると同時に、「原住民族語言発展法」の立法を急ぐことを約束した。これは台湾で10年間も議論されながらも、法制化に至っていないものだった。しかし、蔡総統の謝罪の翌年(2017年)に法制化された。これによって台湾の先住民族の言語は「国家言語」と位置付けられ、先住民族の言語の復興を担当する専門の機関が設置された。先住民族の言語によって政府の公文書が作成され、先住民族の言語を教える教員の専業化などの措置が講じられた。小学校から大学に至るまで、先住民族言語を学ぶカリキュラムが制定され、先住民族言語の教学が奨励された。先住民族言語の普及のために政府が捻出する予算も、当初の1億台湾元(約4.7億日本円)から18億台湾元(約85億日本円)に引き上げられた。

 先住民族言語の普及は、行政部門が率先してやらなければ効果がない。だから私自身も、国会での業務報告や国内外で大きなイベントに参加するような重要な場においては、先住民族の言語を使うようにしている。原住民族委員会の管理職による業務報告も、それぞれの母語で行うよう求め、先住民族言語普及の雰囲気作りに努めている。台湾と日本は一貫して緊密な関係にあり、互いに助け合ってきた。我々が今後も交流を続けることで、アイヌの人々の今後の発展に、少しでも力になれればと考えている。

https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=151&post=249392&unitname=ニュース-政治&postname=北海道の様似アイヌ協会の一行が原住民族委員会を訪問、台日の先住民族交流について意見交わす


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ゴールデンカムイの「カムイ」はいったい何なのか 大ヒット漫画を通して、アイヌ文化を分析する

2024-03-06 | アイヌ民族関連

東洋経済2024/03/05 11:00

中川 裕 : 千葉大学文学部教授

累計2700万部(2024年2月現在)を突破し、2024年1月に実写版映画も公開された「ゴールデンカムイ」。同作でアイヌ文化に興味を抱いた方も多いはずです。そんな大人気作品のアイヌ語監修者である中川 裕さんが上梓した『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』では、物語全体を振り返りつつ、アイヌ文化について徹底解説しています。本書を一部抜粋・再構成し、お届けします。

カムイとは何か?

「ゴールデンカムイ」によって、今までアイヌ文化に関心がなかった人たちにも広く知られるようになったのが、「カムイ」というこの言葉です。

カムイはアイヌ文化を理解するためのキーワードであり、この言葉の意味を理解していないとアイヌ文化全体がわかりません。なおかつ、「ゴールデンカムイ」という物語が終焉を迎えるにあたって、カムイという言葉がこの作品全体を貫くテーマそのものに直結していることが明らかとなりました。

というわけで、前著『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』でも第1章でカムイについて解説していますが、本記事でもこの言葉の説明から始めることにしたいと思います。

2巻12話でアシㇼパは「私たちは身の回りの役立つもの、力の及ばないもの、すべてをカムイ(神)として敬い、感謝の儀礼を通して良い関係を保ってきた」と杉元に説明しています。

※外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

また11巻109話では「人間も含め全ての者はカムイと呼ぶことができる。しかしいつもカムイと呼ぶ者は限られている。人間ができない事、役立つものや災厄をもたらすものなどがカムイと呼ばれる」と言っています。この彼女の言葉を少し解説しましょう。

伝統的なアイヌの世界観では、世界のあらゆるものにはラマッ「魂、霊魂」があると考えられています。その中でも精神・意志を持って何らかの活動をしていると感じられるものを、特にカムイと呼びます。

カムイと呼ばれるものと呼ばれないものの境目は、人によっても地域によっても変わります。アシㇼパが「全ての者はカムイと呼ぶことができる」と言うのはこのことを言っているので、「意志を持って活動している」と感じられれば、普通はカムイと呼ばれないようなものでもカムイになり得ます。

「人間も含め」というのは、人間が死ぬとカムイになるという考え方もあるからです。またカムイという言葉は一種の尊称としても使われるので、生きている人でも敬意をこめてカムイと呼ぶことがあります。

でも、それはやはり日常で生活している一般の人々とは区別した言い方なので、本質的にはアイヌ「人間」とカムイは別の存在です。そして、人間の力が及ばないようなことができるものほど、格の高い、えらいカムイだと考えられてきました。

カムイの「活動している」という条件

カムイと考えられる条件である「活動している」というのは、現代の私たちが考えるよりずっと幅の広いとらえ方です。2巻12話でアシㇼパは「火や水や大地、樹木や動物や自然現象、服や食器などの道具にもすべてカムイがいて、神の国からアイヌの世界に役に立つため送られてきてると考えられ」と言っています。

火は熱や光を発し、人間にぬくもりを与え、暗い夜を明るくしてくれます。そしてそのままでは食べられない食材をおいしい料理に変えてくれます。それが火の活動であり、そのために人間は家を建てると、「カムイの世界」からわざわざ火のカムイを招いて、自分の家の囲炉裏(いろり)の中に来てもらうのです。

家や舟や臼や杵(きね)や鍋など、人の手で作って使っている道具類もみなカムイです。11巻109話では「刃物は手では切れない物を綺麗に切ったりしてくれるからカムイが宿ってる」と説明しています。人間が刃物を使って切るのではなく、刃物が人間にない能力を発揮して人間を手伝ってくれるからこそ、ものが切れるのだと考えるわけです。

このように人間のできないことをしてくれるものは、魂を持つすべてのものの中でも、特にカムイと考えられやすいものです。

家は人間を雨風から守ってくれますし、臼は杵と協力して穀物を脱穀したり粉にしたりしてくれる力を持っています。だからカムイであり、昔の人たちはそれらを人間と同じように精神を持ったものとして扱いました。家の屋根が飛びそうになるほど強い大風が吹く時には、臼を紐で縛って家の梁(はり)から吊り下げ、少量の穀物を臼に入れて搗(つ)く真似をしながら、こんな言葉を唱えます。

家の奥さん、気をつけなさい! 自分を守りなさい! 臼の奥さん、異変をお知らせしますよ!

「家の奥さん」というと一家の主婦みたいに聞こえるかもしれませんが、これはチセ カッケマッ「家・奥さん」の訳で、家は女性のカムイと考えられており、家に向かって「奥さん」と呼びかけているのです。風に吹き飛ばされないように、自分の身を護るように、家に向かって警告しているわけです。

臼を梁から吊り下げるのは、昔の家は屋根がただ柱の上に乗せてあるだけですので、地震や大風で屋根がずり落ちてしまわないように、重しをかけるためです。臼もまた女性のカムイで、臼を搗く杵の方は男性のカムイと考えます。穀物を入れて搗くのは臼に腹ごしらえをさせているということで、それで臼に力をつけて屋根が飛ばないように押さえてくれということをお願いしているわけです。

カムイ扱いされない動物もいた

このようにあらゆるものを人間と同じような存在として扱うというのが、アイヌの伝統的な世界観の根源にあるものです。

ただし、カムイとみなす条件として、もうひとつ「精神・意志を持って」活動するということを挙げました。11巻109話でアシㇼパは鹿についてこう語っています。「私たちが住む西の方は鹿をカムイ扱いしないけど、東はあんまり獲れなかったから昔から鹿を大切に送る儀式もする」。

ということで、動物であってもカムイとみなされないものもいたということです。実は鹿は自分の意志に基づいて活動しているようには見えないので、地域によってはカムイ扱いされないのです。

カムイは本来「カムイの世界」で暮らしています。これは一か所というわけではなく、熊やキツネなどの山に住む動物であれば人間が足を踏み入れないような山奥にあり、海の動物であれば水平線の彼方、鳥や雷など空を飛ぶものであれば、天空にあると考えられています。さらに、カムイの魂は山奥や海の彼方にある世界からも移動して、最終的にはみんな天界に行くと考えられているという説もあります。

アシㇼパは2巻12話で「動物たちは神の国では人間の姿をしていて 私たちの世界へは動物の皮と肉を持って遊びに来ている」と説明しています。このカムイの世界での人間の姿というのは、魂の状態であることを意味しており、カムイの世界ではカムイは人間と同じようにご飯を食べたり、結婚したり、泣いたり笑ったりして暮らしていると考えられています。

動物や植物、火や水の姿で現れる

そして、そこからそれぞれの理由で人間の世界にやって来るのですが、魂のままでは人間の眼には見えず、人間と交流することができませんから、それぞれ衣装をまとってやって来ます。それが私たちの眼に映る動物や植物、あるいは火や水の姿というわけです。

カムイたちはそれぞれに目的があって人間の世界にやって来ます。そのことが、コミックスのカバー袖にいつも書いてある、カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ「天から役目なしに降ろされた物はひとつもない」という言葉に集約されています。このヤク「役目」には、実にいろいろなものが含まれます。

シマフクロウは人間の村を守るため、カッコウやツツドリはマスの豊漁・不漁を告げるために、わざわざ天界から人間の世界にやって来ます。樹木は大地に深く根を張って地面を支えていることから、シㇼコㇿカムイ「大地を守るカムイ」やシランパカムイ「大地を持つカムイ」とも呼ばれています。そのようにして大地を守ることがヤクのひとつというわけです。

22巻219話には、ミソサザイという小さな鳥が出てきますが、これは熊が近くにいると、チャㇰチャㇰと騒ぎ立てて、そのことを人間に伝えるのだと言われています。同じ小鳥でも、23巻228話にはシマエナガという鳥が登場します。アイヌ語ではウパㇱチㇼ「雪の鳥」と呼ばれ、これが群れをなしてやって来ると雪が降ると言われているそうです。

ということで、雪の到来を告げるのが役目ということになりますが、漫画の中でけがをして杉元に助けられたシマエナガのウパㇱちゃんは、雪山の中で道に迷い空腹に負けた杉元(動物を殺すのが嫌い)に、羽をむしって焼かれてしまいます。

涙ながらにウパㇱちゃんを食べようとしたところで、アシㇼパの声が聞こえて杉元が号泣するという場面でしたが、アシㇼパだったら、人間に食べられるのが彼らのヤクなのだから、感謝してお礼を言えばいいんだと言うかもしれませんね。

この「カント オㇿワ~」という言葉で重要なことは、現代の私たちが取るに足らないようなものとして、追い払ったり駆除したりするような存在に対しても、かつてのアイヌの人々はそれらがこの世界にいる理由を考えてきたということでしょう。

バッタの大量発生をどう捉えるか

12巻115話には飛蝗(ひこう)の話が出てきます。アイヌの習慣やら北海道の自然などに妙に詳しい尾形の解説によると、飛蝗というのは「洪水やら何やらで条件が重なると」バッタが大発生することで、「移動した先々では農作物はもちろん、草木は食い尽くされ、家の障子や着物まで食われる」という恐ろしいものです。ここまで行かなくても、バッタというのは昔から農作物を食う「害虫」というのが、和人の見方です。

しかし、カムイが自らの体験を語るという形式の、神謡と呼ばれる物語の中にはバッタを主人公とするものもあり、そのひとつでは、人間の娘がバッタを粗末に扱ったせいで、その村の作物が全滅するという話になっています。バッタはむしろ畑を見守るカムイであり、それをヤクとして畑にいるのだから、少しぐらい作物をかじったからと言って腹を立てるなということでしょう。

12巻114話で、飛蝗に襲われたキラウㇱは「姉畑支遁(あねはたしとん)がやった行いを、まだ許さんというのかッ」「あれだけ丁寧に送ったというのに、俺たちを飢えさせるつもりかッ。カムイたちよ !」と、天に向かって叫んでいます。これは、バッタの群れが襲ってくるのを、動物たちに非道なことをした脱獄囚の姉畑支遁への怒りと見ているわけであり、バッタが魔物であると考えているわけではありません。

知里幸恵の『アイヌ神謡集』には、「沼貝が自ら歌った謡『トヌペカ ランラン』」という話があります。沼が干上がったために「水よ水よ」と、水を求めて泣いていた沼貝を、通りがかったサマユンクㇽという人の妹が「おかしな沼貝、悪い沼貝」と言って、蹴っ飛ばして踏んづけて行ってしまいます。

その後、オキキㇼムイという人(本当はえらいカムイ)の妹がやって来て、沼貝たちをフキの葉で運んで、きれいな湖に入れてくれます。女たちの素性を知った沼貝は、サマユンクㇽの粟畑(あわばたけ)を枯らせ、オキキㇼムイの粟畑をよく実らせたという話なのですが、なんで沼貝が粟の実り具合に関与できるのでしょうか? それは沼貝が何のヤクを持って人間世界にやって来ているのかという話に関係します。

沼貝を邪険に扱うと、穀物が実らない

『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』(集英社新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

沼貝はカワシンジュガイというのが正式和名で、アイヌ語ではピパと呼びます。けっこう大きな二枚貝で、昔の人たちは鍋の具にして食べました。私も千歳(ちとせ)のアイヌの人たちと一緒に千歳川にもぐって、川底の砂の中にいるこの貝を足の指ではさんで捕って、焼いて殻が開いたところに醬油(しょうゆ)を垂らして食べたことがありますが、大変おいしいものです。

このように、食料としての肉を人間にもたらすというのも、沼貝のヤクのひとつなのですが、それに加えて、その貝殻の片方のふちを砥石(といし)でとぎ、穴をふたつ開けて紐を通して、粟やヒエなどの穂を摘む穂摘み具として使います。

13巻125話はフチがこれを使って穂摘みをする場面から始まります。つまり沼貝は農作物の収穫を手助けしてくれる道具を持って人間世界にやって来てくれているのであり、それも彼らのヤクなのです。だから、沼貝を邪険に扱うと穀物が実らなくなり、食べる物に困るという罰を受けることになるのです。

もっとも、沼貝が泣きながら「水よ水よ」と叫んでいるところにでっくわしたら、私など踏んづけるどころか、その場から一目散に逃げ出してしまうと思いますが。

https://toyokeizai.net/articles/-/738143?utm_source=auweb&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article


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「ラッコ鍋」に「樺太島大サーカス」……映画『ゴールデンカムイ』続編で見てみたいシーンは?

2024-03-06 | アイヌ民族関連

リアルサウンド2024.03.05 07:00文=ヨークシャー

 2024年1月19日に公開された映画『ゴールデンカムイ』。その勢いは公開25日間でも衰えを見せず、観客動員数142万人、興行収入20.8億円を突破した。同作品の監督・久保茂昭をはじめ制作陣にも原作ファンが揃っており、強い作品愛とこだわりで制作された本映画は上記の通り大好評。今年の秋には、WOWOWで続編が放送されることも決定した。

「原作を映像で忠実に再現する」ためのこだわり

 実写化が発表された当初は不安の声も多数あったが、蓋を開けてみれば大絶賛の声が上がっている同作。原作ファンも納得する作品にするためには、多くの手間がかかっている。撮影期間やコストの問題から本州で撮影するという話もあったが、植生など北海道独特の景観を再現するために撮影はほとんど北海道でおこなわれた。

 また衣装、小道具はアイヌにルーツを持つ伝統工芸作家が制作しており、コタン(アイヌの集落)やスタジオセットも監修のチェックが入っている。その出来に原作者の野田サトルも「原作ファンの方たちも実写を愛せるはずだと信じています」とコメントしていた。

 映画の再現度の高さについて、原作ファンからは「原作絵と並べて見たいくらいに再現度が高い」「あのキャラクターが確かに“いた”。そのままだった」と大絶賛を受けている。今回映画として制作されたのは原作ストーリーの最序盤のみ。活躍シーンが披露出来ていないキャラや登場していない主要なキャラも大勢いるため、続編に対する期待も大きい。

原作ファンも期待する、続編で見てみたいシーンは?

 WOWOWでのドラマ化ののちは、さらなる映画版も構想されているそうで、ネット上では早くもファン各々の映像化を希望するシーンが数多くあがっている。

 男性登場人物のほとんどが筋肉モリモリである『ゴールデンカムイ』の中でも、特に「筋肉の密度が濃い」と人気のエピソードとして、通称「ラッコ鍋」がある。杉元佐一たち成人男性5人が、漁師に貰ったラッコの肉を鍋にして食べるというエピソードだ。

 これだけを聞くと微笑ましいグルメ回のようにも聞こえるが、実はラッコの煮える臭いは欲情をひどく刺激すると言われている。そんなことはつゆも知らない杉元たちは、ラッコ鍋を囲み、訳のわからない欲情に苛まれた結果、発散のために褌一丁で相撲を取るという作中屈指の迷エピソードだ。

 有名な「このマタギ…… すけべ過ぎる!!」という迷台詞を生み出したのもこの回。気合いを入れて身体作りをした俳優陣の真価が発揮できるのではないだろうか。

 ギャグ満載の「樺太大サーカス」にも再現希望の声が上がっている。杉元は、自分のことを死んだと思っているアシリパ(※リは小文字)に己の存在を伝えるため、サーカスに出演し注目を集めることを思いつく。畳み掛けるような大量のギャグが魅力のこのエピソードだが、特に読者を困惑させたのは少女団として可愛らしい少女に紛れ踊る谷垣源次郎の存在だろう。

 要領の悪い谷垣は、少女団の一員としてダンスの練習に励むも上手くいかず、コーチのフミエに厳しく叱責される。髭面マッチョが「俺は少女団のお荷物です…ッ」と涙を溢すのは非常に迫力がある。そして、少女団の仲間に支えられ初舞台を成功させた谷垣は、踊り子として一歩成長する。まるで少女漫画の主人公のような美しい成長物語だ。成長したのが胸毛たっぷりの成人男性でなければ――。

 一方で、尺や大人の事情で省かれてしまうだろうエピソードについても話題になっていた。特に、動物好きが高じてヒグマと交尾しようとする変態・姉畑支遁に焦点を当てた「支遁動物記編」が最有力候補に挙がっている。

 癖になる世界観とキャラクターで、完結してなお人気の衰えない『ゴールデンカムイ』。原作には原作の、アニメにはアニメの、実写化には実写化の魅力がある。まずは秋のドラマ版を楽しみに待ちたい。

https://realsound.jp/book/2024/03/post-1590553.html


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先住民、脱植民地化、権力と規範、クィア、エンパワーメントなど、世界の「いま」を舞台芸術の実践から読み解く。セゾン・アーティスト・イン・レジデンスのトークイベントのアーカイブ動画をYouTubeで配信。

2024-03-06 | 先住民族関連

ニューズウィーク2024年03月05日(火)09時30分

セゾン文化財団では、2023年度に3名のアーティストとドラマトゥルク(=戯曲のリサーチや作品制作に関わる役職)を招へいし開催したトークイベントのアーカイブ動画をYouTubeで公開いたしました。先住民、脱植民地化、権力と規範、クィア、エンパワーメントなど、世界の「いま」を読み解くトピックから、海外で実践を行うアーティストやドラマトゥルクの考えや活動を紹介しました。

セゾン文化財団YouTubeチャンネル

URL: https://www.youtube.com/@thesaisonfoundation894

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/386981/LL_img_386981_1.png

「コンテンポラリーダンスを脱植民地化する」

【「コンテンポラリーダンスを脱植民地化する」ナヨカ・ブンダ・ヒース(オーストラリア)】

オーストラリアの先住民、Wakka Wakka、Ngugi(クイーンズランド)とBirrpai(ニュー・サウス・ウェールズ)のルーツを持つダンス・アーティスト、ナヨカ・ブンダ・ヒースによるトークイベント。

ナヨカ・ブンダ・ヒースはアボリジナル・センター・オブ・ザ・パフォーミング・アーツでディプロマ(修了証明書)を取得後、ビクトリア芸術大学でダンスを学びました。卒業後、オーストラリアを代表するダンスカンパニー「バンガラ・ダンス・シアター」の研修生として青少年教育プログラムの指導に関わり、現在、先住民のダンスカンパニー「チャンキー・ムーブ」のコーディネーターを務めています。

自身の振付作品としては、2019年、オーストラリアでの政府当局によるアボリジニの若者の強制移住に関する家族の歴史を語るレクチャー・パフォーマンス、『Blood Quantum(血の含有率)』を発表。自身の母方の祖父母の幼少期の出来事を出発点に、3世代にわたる「盗まれた世代」のトラウマとその制度の影響を描く作品として注目を集めました。また、『Blood Quantum』に次ぐ、『Birrpai』(2021年)では植民地時代にアマチュアの写真家、トーマス・ディック(1877-1927)が捉えたBirrpaiの写真をもとに父方の先祖の歴史を取り上げ、メルボルンのグリーンルーム・アワードで、ダンス・ベスト・デュオ/アンサンブル賞を受賞しています。

本トークでは、ナヨカ・ブンダ・ヒースが代表作『Blood Quantum』、『Birrpai』、『Bridge』を事例に、「脱植民地化」をもとにした創作のアイデアやアプローチを明らかにします。ゲストにアーティストのマユンキキを迎え、ディスカッションを行いました。

映像URL: https://youtu.be/qXXlD-yfOio

■イベント概要

・タイトル:「コンテンポラリーダンスを脱植民地化する」

・日時 :2023年8月17日(木)19:00-20:30

・会場 :森下スタジオ(江東区森下3-5-6)

・登壇者 :ナヨカ・ブンダ・ヒース、マユンキキ

・通訳 :田村かのこ

・主催 :公益財団法人セゾン文化財団

・助成 :令和5年度文化庁「アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業」

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/386981/LL_img_386981_2.png

「空想上の生き物辞典」

【「空想上の生き物辞典」キム・キド(フランス/韓国)】

韓国出身で、現在、パリとブリュッセルを拠点とする振付家、パフォーマーのキム・キドによるトークイベント。

キム・キドはグラフィックデザインとパントマイムを学んだ後、アンジェ国立現代舞踊センター(CNDC)を経て、モンペリエ国立振付センター(ICI-CCN)でChristian Rizzoの指導のもとMaster Exerceで研究を行いました。これまでに「空想上の生き物辞典」という考えから、2021年に第1章『FUNKENSTEIN』、2023年に第2章『CUTTING MUSHROOMS』を発表。「空想上の生き物辞典」は社会の規範に疑問を投げかけ、集合的無意識の支配的な観念を解体することで、そこに現れる怪物性を探求するプロジェクトです。個人的、社会的、政治的な経験から、具象と抽象の間をさまよう有機的で曖昧なパフォーマティブな形式を掘り起こす方法論を発展させることに取り組んでいます。

日本での滞在では、第3章『HIGH GEAR』の創作のために日本のマンガ文化のフィールドリサーチを実施。権力、規範、支配との関係を想起させるマンガからイメージを探し、その振付における言語とは何か、模索しました。

本トークでは、キム・キドがこれまでに発表した作品のもととなる「空想上の生き物辞典」のアイデアや実践を紹介するとともに、新作『HIGH GEAR』の構想とそのための滞在中のリサーチを共有。同時滞在アーティストとして、キム・キドのフィールドリサーチを伴走する振付家でダンサーの藤田一樹とともに登壇しました。

映像URL: https://youtu.be/uKzUf-Ja8NI

■イベント概要

・タイトル:「空想上の生き物辞典」

・日時 :2023年12月18日(月)19:00-20:30

・会場 :森下スタジオ(江東区森下3-5-6)

・登壇者 :キム・キド、藤田一樹

・通訳 :岡見さえ

・主催 :公益財団法人セゾン文化財団

・助成 :令和5年度文化庁「アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業」

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/386981/LL_img_386981_3.png

「ダンスの/ための未来:新しいクィアでエンパワーメントなアプローチ」

【「ダンスの/ための未来:新しいクィアでエンパワーメントなアプローチ」ルーシー・オートマン(ドイツ)】

デュッセルドルフのtanzhaus nrwのドラマトゥルクのルーシー・オートマンによるトークイベント。

ルーシー・オートマンは2022年からデュッセルドルフのタンツハウスnrw(tanzhaus nrw)のドラマトゥルクを務めています。これまでにシュテファニー・カープが芸術監督を務めたルール・トリエンナーレや、シャウシュピールハウス・ウィーン(オーストリア)、オーバーハウゼン劇場(ドイツ)のプログラミングに関わるほか、電子ジャーナル「MAP - Media Archive Performance」の編集チームの一員であり、執筆者でもあります。

日本での滞在では、ボディ・ポリティクス、デジタル・メディア、共有責任、新しいコミュニティ等をテーマに日本のコンテンポラリーダンスに関わるアーティストの活動をリサーチをしました。

本トークイベントでは、ボディ・ポリティクス、デジタル・メディア、共有責任、新しいコミュニティなどの領域を探求する未来志向の振付の実践について、ドイツのダンス・シーンで活躍するアーティストの事例から紹介。事例として取り上げられるKatharina Senzenbergerはデジタルで流通するダンスに焦点を当て、コンテンポラリーと商業のダンスをユニークに結びつける活動を行っています。Brigitte Huezoはテクノロジー、ゲーム、3Dデザイン、映画、ファッションの交差点で活動しています。Sophia Neisesは視覚障害のあるパフォーマー、振付家、活動家で、Zwoisy Mears-Clarkeとともに、tanzhaus nrwで創造的かつ実験的なオーディオディスクリプションのためのラボに関わっています。

映像URL: https://youtu.be/QknCH-qle5w

■イベント概要

・タイトル:「ダンスの/ための未来:新しいクィアでエンパワーメントなアプローチ」

・日時 :2023年12月12日(火)19:00-20:30

・会場 :森下スタジオ(江東区森下3-5-6)

・登壇者 :ルーシー・オートマン

・通訳 :田村かのこ

・主催 :公益財団法人セゾン文化財団

・助成 :令和5年度文化庁「アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業」

【セゾン・アーティスト・イン・レジデンス】

― 新しい出会いや対話、ネットワークの機会を創出する ―

セゾン文化財団は、堤清二氏(1927-2013)の私財によって設立された助成型財団です。1987年より日本の現代演劇・舞踊の振興、およびその国際交流の促進に寄与するため、助成活動を行っています。

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/386981/LL_img_386981_4.jpeg

セゾン文化財団 森下スタジオ

【セゾン・アーティスト・イン・レジデンス】

セゾン・アーティスト・イン・レジデンスは2011年からセゾン文化財団が東京・江東区の森下スタジオを拠点に展開しているアーティスト・イン・レジデンス事業で、海外の芸術家や芸術団体等との双方向の国際文化交流の活性化を目的に実施しています。

これまでに海外から約70名のアーティストやアーツ・マネジャーを招へいし、国内のアーティストや関係者との新しい出会いや対話、ネットワークの機会を創出しています。滞在後に創作された作品はフェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ(フランス)やクンステン・フェスティバル・デザール(ベルギー)などの海外有数のフェスティバルで発表されています。また、過去の滞在アーティストには2022年度の国際芸術祭「あいち2022」で作品を発表したトラジャル・ハレル(米国/ギリシャ)や横浜国際舞台芸術ミーティング2022で作品を発表したヤン・ジェン(中国)などがいます。

詳細はこちら 

プレスリリース提供元:@Press

https://www.newsweekjapan.jp/press-release/2024/03/youtube-11013.php


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泰阜出身、早世のアララギ派歌人「金田千鶴」を忘れないで 飯伊の劇団、川崎で朗読劇

2024-03-06 | アイヌ民族関連

中日新聞2024年3月5日 05時05分 (3月5日 14時12分更新)

ふじたさんや吉岡さんの指導を受け、歌の練習をする団員=飯田市文化会館で

 飯田下伊那のアマチュア演劇集団「演劇宿」が10日、川崎市で上演される泰阜村出身でアララギ派の歌人、金田千鶴と童謡詩人の金子みすゞ、アイヌ文化伝承者の知里幸恵の3人の生涯を伝える朗読劇「いのちかけて いのちかけて未来を生きた三人の墓碑銘」に出演する。初めての地域を越えた公演で、稽古に汗を流している。(藤野華蓮)

 金田は1902(明治35)年、村の庄屋に生まれた。23歳の若さで結核に罹患(りかん)。10年の闘病生活で831首の短歌を残し、34(昭和9)年に32歳で亡くなった。...この記事は会員限定です。

https://www.chunichi.co.jp/article/863395?rct=nagano


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土地を奪われ、言葉を禁じられ…似た歴史を持つ沖縄とマオリ 「民主主義ではない」マオリが見た沖縄の現状

2024-03-06 | ウチナー・沖縄

琉球放送2024年3月5日 

土地を奪われ、言葉を禁じられ…似た歴史を持つ沖縄とマオリ 「民主主義ではない」マオリが見た沖縄の現状© 琉球放送

先月、ニュージーランドの先住民・マオリが、ニュージーランド政府の事業で沖縄を訪れました。かつて、土地を奪われ独自の言葉を禁じられるなどヨーロッパ系への同化政策を強いられたマオリ。その歩みは沖縄の歴史と重なる点があります。彼らが沖縄の歴史や自然に触れて、感じたこととは。

マオリ語禁止、独自の文化を否定されてきた歴史

♪「Kamate kamate Kaora Kaora」

ニュージーランドの伝統的な踊り・ハカ。披露しているのは先住民のマオリです。ニュージーランド政府の事業で日本を訪れ、沖縄の子どもたちと交流しました。

ハカを見た子ども

「めっちゃ大きい声!」

初めて目にするハカに子どもたちも大興奮。目を見開いたり舌を出したり、醜ければ醜いほどよいとされる表情に、見よう見まねで挑戦しました。

交流した子どもたち

「踊るところが楽しかったです。不細工なのが面白くていいなと思いました」

「べろ出すのは嫌だったけど、ゲストが来てよかった」

「恥ずかしくなってテンション上がりすぎました」

「おじいちゃんおばあちゃんにもこのダンス教えたいです」

マオリのファカロンゴタイさん

「特に私たちが沖縄の文化を学んで知識を広げることはとても大事だと思っています。今回のように沖縄の子どもたちに、マオリの文化を伝えられたのはよかったです」

ニュージーランドの人口のおよそ15%を占めるマオリ。かつてはイギリスの支配を受けていました。マオリ語を話すことを禁じられるなど、独自の文化が否定された歴史を持ちます。

1970年代からマオリ文化の復興が始まりましたが、その権利と地位は回復の途上にあります。その歴史や文化を発信しながら、アジア各地でつながりをもとうと、研修先の1つに選ばれたのが沖縄でした。

「民主主義ではない」マオリが見た沖縄の現状

滞在2日目、平和祈念公園を訪れた一行。79年前、この地が戦場だったことに初めて触れ、沖縄の若者から戦争について学びました。

20万人あまりが犠牲になった沖縄戦。およそ12万人の県出身者が犠牲になりました。自ら命を絶つことを強いられ、ウチナーグチを話すとスパイとみなされ、殺される者もいました。

マオリのジェームズさん

「本当に悲しかったです。なぜなら私たちはマオリですが、英語で話すよう強要されてきました。撃たれはしませんでしたが、でもその苦しみはすごく理解できます。沖縄は沖縄の言葉を話せず苦しんだし、マオリはマオリの言葉を話せず苦しみました」

マオリのタイラーさん

「植民地主義とはどういうことか、沖縄戦の場合、犠牲になったのは沖縄の人たちで、激しい暴力に民間の人たちがさらされたということだと思う」

沖縄の歴史とマオリの歩みを重ね、思いを寄せるメンバーたち。自然や文化に触れながら向かった先は、アメリカ軍普天間基地の移設先、名護市の大浦湾でした。

出港から間もなく、希少なサンゴが生息する海域に到着。グラスボートから海中を覗くと世界最大級のアオサンゴをはじめ、500年かけて成長したとされるコブハマサンゴなど、そこには多種多様な生き物たちが生息しています。

移設工事のため、国がサンゴを別の場所に移植したという話を耳にすると、驚きの声があがりました。

ジェームズさん

「ニュージーランドだったらこういう場所を自然保護区にして、海の生き物を絶対にとってはいけない、採取を禁止するといった保全策をとると思う。ここはそういう場所には指定されていないんですか?」

まなざしの先には、無数の作業船。埋め立て反対の民意をよそに、工事が続く現状を目の当たりにすると―

ファカロンゴタイさん

「民主主義ではない。間違いなく、私たちは似たような問題を抱えています。私たちも闘ってきたからあなたたちの悲しみ・不満・怒りを共感できます。だけど沖縄の問題は、アメリカ軍が関わっているからより複雑だと思います」

「沖縄とマオリが手を取り合うことは始まっている」

マオリが捉えた沖縄の歴史と現状。歩んできた道に重なる点があるからこそ、沖縄の人達に深く共感しています。

ファカロンゴタイさん

「友達とも話してたけど沖縄とマオリが手を取り合う、それはもう始まっていると思います」

タイラーさん

「ニュージーランドでマオリが経験した戦いの歴史と沖縄の歴史は似ている。帰国したら、私たちに通する問題について話していきたい」

1週間の滞在で沖縄とのつながりを築いたマオリ。遠く離れたニュージーランドから、沖縄へ思いを寄せ続けます。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/土地を奪われ-言葉を禁じられ-似た歴史を持つ沖縄とマオリ-民主主義ではない-マオリが見た沖縄の現状/ar-BB1jlN9n


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