火星への道

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小型衛星の開発競争激化

2011-08-07 18:32:01 | 出る月を待つべし
7月28日に開催された第167回JIフォーラムに参加しましたので、多少間違いがあるかと思いますが、ご紹介します。
構想日本のHPでは、2ケ月後にサイト上のJIフォーラム - 過去のフォーラム - ゲスト発言から見れるとのことです。

[題名]
日本再生の必須条件
科学技術政策を根本から問い直す
-激戦の宇宙技術から考える-

1.論点
①世界が宇宙での技術開発にしのぎを削っている
 *なぜなら、生活、産業、安全保障と一体となった技術となっているから
②日本は、かなりの税金を使ってるにも関わらず、世界の競争から脱落しかかっている
 *なぜなら、科学技術政策に重大な欠陥があるから

2.討論者略歴
①中須加 真一氏
現在:東京大学、大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
経歴:1961年 大阪生まれ
 日本IBM東京基礎研究所/東大 工学部航空学科講師/メリーランド大学 客員研究員/スタンフォード大学 客員研究員/東大 航空宇宙工学専攻教授
専門分野:宇宙工学、知能工学
著作:宇宙ステーション入門

②松井 孝典氏
現在:千葉工業大学惑星探査研究センター所長/東京財団特別上席研究員/政府各種審議会、国際的な学会・委員会メンバー
経歴:1946年 静岡生まれ
 東大大学院教授定年退職/千葉工業大学惑星探査研究センター所長
専門分野:惑星物理学、アストロバイオロジー
著作:地球システムの崩壊、巨大隕石の衝突、松井教授の東大駒場講義録、宇宙人としての生き方等

③コーディネーター
加藤 秀樹氏
現在:構想日本代表/東京財団理事長、四国民家博物館理事長
経歴:大蔵省勤務/1997年シンクタンク構想日本設立
専門分野:縦横無尽な政治・政策への関わりから日本の変革を目指している
著作:道路公団解体プラン、ひとりひとりが築く社会システム、浮き足立ち症候群-危機の正体21等

3.日本の宇宙政策の問題点

①日本の宇宙政策は、今だ1元化されておらず、宇宙政策に限らないが具体的なポリシーが無い。
②JAXAが主体で公共事業化しており、コスト削減等国際競争力をつける動機付けが無い。
③このままでは、日本は世界的競争から脱落してしまう。
④ISSに年400億円掛けているが、その目的が「子供に夢を与えること」とまじめに官僚が答えており、問題だとの発言。(同感です)
 きぼうには7,000億円掛けたが、成果が乏しい。
⑤日本の宇宙関連は、95%が官需
  アメリカ、ロシアは一部軍需、民需も拡大
  ESAは、官需5,000億円、民需4,000億円

3-1どうしたら良いか

①宇宙開発に取り組む体制を新しくするべき(JAXA解体も含め)だが、守旧派が多く全く変わらない。
②科学研究で終わらせず、利用の世界を開くべき、実験中心を止め、実用化=事業化を目指すべき。
③人材を育てて、職業として喰える環境づくりが必要。
④科学研究で終わってしまった実例。
)WINDS 超高速インターネット衛星「きずな」
 打上げに時間がかかり、技術が陳腐化してしまった。

)「技術試験衛星VII型おりひめ・ひこぼし)」
 後続がなく、単発で終わっている。

)技術試験衛星VIII型「きく8号」(ETS-VIII)
 大型アンテナの展開は、上手くいったが受信機能が上手くいかず、そのままとなった。
 本来必要なものであれば、再チャレンジすべきではないか?

3-2準天頂衛星をやるべきⅠ

①現在は、「みちびき」1機のみ
 最低でも4機、出来れば7機必要である
②世界の状況は、更なる進化を目指している     
  ・アメリカ GPS
  ・EU    ガリレオ
  ・ロシア  グロナス
  ・中国   北斗
③精度が上がれば、需要が増える
  ・飛行機の自動離着陸
  ・高速道のETCが不要になる
  ・災害救助への利用 等々
④日本がやらなければ、アメリカは不本意ながら中国と組まざるを得ない。
 日本の国防上の脅威ともなる。

4.宇宙開発競争が始まっている
  大型衛星→小型衛星
なぜか?
①大型衛星の欠点
  開発費→需要が伸びない
        保守的になりがちであり、新しい試みが出来ない
  開発期間→技術の遅れが生じる
②小型衛星の利点
  開発費→自治体、企業、研究機関などの研究に活用→需要が広がる
  開発期間→最先端の技術、注目の探査・測定が可能

5.小型衛星は凄い
衛星プロジェクトにおける頭取り競争激化とのこと。(主導権争い)
主導権をとることで自国のニーズに合ったプロジェクトを他国の参加のもと実現できる。
基本的に同じセンサーを積んだ衛星をいくつも同時に飛ばすことで費用の分担と技術の集積が出来る。この分野は、イギリス・ドイツ・韓国等が頑張っているとのこと。
500kgの衛星は30億円程度で打上げられる。50kgならもっと安くなり、国ではなく企業や地方自治体や大学等の研究所へも販売の範囲が広がる。
打上までの期間が短く、研究者が論文を発表しやすくなる→研究者が増え→更に研究が深まり、盛んになる

5-1ドイツの例
「地球規模での大気の流れのモデルを5機の衛星で観測するプロジェクト」を数カ国で共同運用。
同じ衛星に同じセンサーを組み込むことで観測の成果を上げる。ドイツが主導権を持ちながら、費用は各国で分担することで実現が早まる。
ドイツは、衛星やセンサーを売ることも可能になる。

5-2ウエザーニュース社小型衛星を利用して北極海の氷山の状態を1日に1回撮影して販売しているとの事です。
ユーザーは、北極海航路を利用する船会社です。
その他:二酸化炭素の常時観測、マラッカ海峡の海賊監視等
日本法人
 東証1部48252003年11月4日上場
 売上高連結:122億円

6中須賀教授の活動6-1CubeSat XI-IV&XI-V
XI-IVは2003年6月30日に打ち上げられた1辺わずか10cmのCubeSat衛星です。  
現在はアマチュア無線家の方により運用されており、世界最高齢のCubeSatとなっています。
XI-Vは太陽電池等に改良を加えたCubeSatで、2005年10月27日に打ち上げられました。
東大地上局による運用が2010年現在も継続されており,地球画像の撮影が続いています。

6-2PRISM(愛称:ひとみ)
柔らかい進展ブームを宇宙で展開し分解能30mの地球画像を撮影するリモートセンシング衛星です。
2009年1月23日にH-2Aロケットで他の相乗り衛星とともに打ち上げられ、ブームの展開とメインカメラでの撮影に成功し、現在定常運用を行っています。

6-3Nano-JASMINE
銀河系内の星の精密な地図をつくることを目的とした、日本で初めての位置天文観測衛星です。
高い精度の姿勢制御を行う衛星バスシステム部を中須賀研究室が、望遠鏡部分を国立天文台JASMINE検討室が開発しています。
現在2011年の打ち上げを目指しています。

7.感想
・もっと松井さんの新しいお話を期待していたので少し拍子抜けでしたが、とにかく、いろいろなことが動き出している印象を受けた夜でした。
・宇宙産業というものが形成されつつあり、日本でも多くのプレーヤーの参加が期待されます。
・カンサットが大きな可能性を持っているんだと再認識しました。火星探査も小型衛星で出来ることがありそうです。以前日本火星協会のブログで紹介したHOPPERを思い出しました。
・宇宙関係を研究や勉強することがもっとやりやすくなるようなシステムを作らないと他国に負けそうです。既得権だけの守旧勢力は・・・
もっと風通しの良いシステムで他国に負けないよう頑張りましょう!
・大人たちが夢の実現に真剣に取り組む姿勢こそが本当に子供たちに夢を与えることに繋がると納得しましたね。
コメント (1)
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