2013年3月6日当ブログ「火星通過は2014年10月19日 」の続報となります。
昨年3月時点での予想最接近距離は、41,000kmとなってましたが、現時点では138,000kmと予想されています。
それでも地球と月の距離の約3分の1の距離まで近づくと言うことです。(月の平均公転半径:384,400km)
上図は、1月28日のMSLのWhat'sNewの記事の資料です。
彗星C/2013 A1 Siding Springは、2014年10月19日に火星近傍を通過する予定です。
最接近距離は、約138,000kmです。
NASAは、地球上、地球周回機、火星上及び火星周回機を使ってこの彗星を観測する準備を始めました。
ハッブル望遠鏡とNEOWISEは、オールトの雲からの初めての訪問者の特徴を解明するために現在も観測中です。
そのデーターは、火星周回機への潜在的リスクを評価するために使用されます。
でも、火星周回機にどのような影響がでるかを知るには、もう少し待つ必要があるようです。
彗星のコマの軌道は、かなり良く推定できるのですが、コマから放出される尾がどのような挙動を取るか予測が難しいのです。
彗星は、4月から5月の間にコマが太陽に暖められる距離に入り、その後コマから活発に水蒸気やダストが放出されるようになります。
このダスト粒子が火星周回機に悪影響を及ぼすことが心配されています。
リスクを減らすための2つの重要な戦略があります。
ひとつは、高リスクの期間中、周回機を火星の裏側に移動させることです。
もうひとつは、最も脆弱な部分がダスト粒子の流れに当らないように、周回機の姿勢制御をすることです。
火星の大気は薄いですが、このようなダストを防ぐには十分な厚さがありますので、火星上にいるCuriosityとOpportunityは問題ないでしょう。
現在3機の周回機が活動中です。
*MRO(Mars Reconnaissance Orbiter)、Mars Odyssey とMars Express
また、昨年地球を飛び立った2つの周回機が彗星が最接近する3週間前に火星軌道に入る予定です。
*MAVEN(Mars Atmosphere and Volatile Evolution) とインドのMars Orbiter Mission
周回機は、宇宙ダストとの衝突リスクを計算して設計されており、ほとんど影響を受けません。
NASAは、火星周回機が5年以上の期間で流星体と呼ばれる粒子から重大な損害を受ける確率を数パーセントと見積もっています。
今回の彗星は、火星や他の惑星とほぼ反対方向に太陽を周回しています。
その核とダスト粒子は、火星周回機に対して毎秒約56kmで飛んできます。
つまり、高性能ライフルの弾丸より約50倍高速、そしてバックグラウンド流星の衝撃力の2~3倍の速度です。
5月に彗星がどの位活発になるか判明する前に準備することが必要だそうです。
各周回機の燃料も節約したいものですが、危険は避けなくてはなりませんね。
Curiosity とOpportunityは、彗星通過の時が明るい日中と予想されているのにもかかわらず多くの流れ星をカメラに捉える可能性があるようです。
それは、彗星の尾にダストが豊富に含まれている証拠となります。
また、ダストが火星大気上空で加熱され、膨張することで上層大気への与える影響を観測するためにMROとOdysseyの赤外線感知器が使用される可能性もあります。
2013年9月29日には、MROのHiRISEがISON彗星を撮影した実績があります。
*2013年10月10日の当ブログ「いよいよ一生に一度のご挨拶 」で紹介しています。
C/2013 A1 Siding Springの火星への接近距離は、ISONに比べて約80倍近いとのことです。
また、C/2013 A1 Siding Springは、火星最接近後6日で太陽に最接近するとのことです。
そして、約百万年ほどは、太陽系に戻って来ないでしょう。
C/2013 A1 Siding SpringとISONで共通するひとつの特徴は、火星通過数ケ月前でないとどの位明るくなるかが予想できないことです。
今回の火星での観測が貴重なものとなるわけです。
下図は、1月16日にNASAのNEOWISE がC/2013 A1 Siding Springを撮影したものです。
太陽から5億7,100万km離れていましたが、彗星が活動的でダストが多いことが確認できました。
赤外線での測定で彗星から放出されているダストの大きさや量を測定できます。
この測定によって、彗星が火星に接近した時に火星周回機が対象とすべきいくつかの指標が明らかに出来るそうです。
データーの予備的分析の結果、ダストは毎秒100kg程度放出されており、その色は黒色に近く、密度は水の氷に近いとのこと。