「友あり、遠方より来たる、また楽しからずや」
およそ半年に一度のペースで福岡高校時代の同級生たち(3名)と我が家で「試聴会」を開催している。
通算すると10回以上になると思うが、前回は昨年(2014年)の11月だったので、今回はおよそ7カ月ぶりの6月20日(土)の運びとなった。何しろ忙しい連中で「CEO」と「社長」さんが混じっているので1か月前からの日程調整だった(笑)。
当日は例によって「梅雨の晴れ間」で、このところ不思議に土曜日になるとお天気が良くなるので大いに助かる。
福岡の「天神」(てんじん)から高速バスで2時間かけて移動するのが常で、降車駅は別府の温泉街の中心地「鉄輪」(かんなわ)バス停。きっかり予定の11時にご到着で、「やあ、やあ、お元気そうで何より」と、久しぶりの交歓。
どちらかといえばオーディオよりも音楽の方が好きな連中で、いつも持参してくるのはクラシックのCDだが、そうはいっても音にもなかなかウルサクて正直言ってこれまで我が家の音に満足してもらったことがないのが実状。
試聴後の「飲み会」では忌憚のない意見交換が恒例になっていて実に楽しいが、いつも「今度こそは連中の鼻を明かしてやるぞ」と、システムの入れ替えをして万全の態勢で臨むのだが結果はあえなく「討ち死に」の状況がずっと続いている(笑)。
しかし今回ばかりは最新のDAコンバーターも導入したし、真空管アンプ群も一新したし、スピーカーの調整も上手くいったし、我が生涯で「最高の音が出ているはず」と自負していたから「飛んで火に入る夏の虫」(失礼!)の心境だったが、過去の事例があるのでけっして楽観はできない。
持参してもらったCDは相変わらずクラシックで「マイスキー・チェロ名曲集」、「ブラームスのヴァイオリン協奏曲」(ムター演奏)、「シューベルト・ピアノソナタ14番ほか」(キーシン演奏)など。
皆良かったが、とりわけシューベルトの「優しさ」には参った。彼の音楽には「年寄りの心を慰めるものがある」(笑)。まあ、キーシンも凄いの一言だが。
そして、肝心の「音の評定」だが結果から言うと試聴後の「飲み会」では予想外ともいえる好評だったし、翌日の友人たちのメールの内容も良かった。「お酒が入った席」での腹蔵ない発言だから、きっとホンモノに違いない(笑)。
それぞれに来たメールを順に証拠品として提出させてもらおう。
まずS君。
「相変わらずの意義深い一日を満喫させて頂きました、有り難うございました。帰路の車中で話しが弾みました。当初のAXIOMからは本当に聴き易くなった‥、あそこまで手なづけ調教するのは大変だったろう‥、等々、皆さん最後に聴いた音色が忘れられない模様で、今般、帰路車中では一番意見が一致しました~。私にも、いつまでも聴き続けたい音色でありました。」
次にO君。
「昨日は、午前中から約6時間、そして、夕食までおつきあいいただきありがとうございました。半年ぶりに、システムを拝聴したわけですが、また「進化」されましたですね!(偉そうにスミマセン。)AXIOM80という、エッジレスの暴れ馬を、良くここまで調教されました。(笑)
当初の、女性ボーカルを聴いたときから、生々しいというか、音場のなかに浮かび上がる艶のある美声に、ハッとするものを感じました。その後は、S君と私が持参したCDをしばらく聴き、ソースに応じてJBLのマルチシステムも聴いたわけですが、通常のシンフォニーの場合、ウエストミンスターのバックロードホーンの空気感による音のゆとりは、~これは捨てがたいものだと感じました。
(私見を言えば、中高音域の刺激音をもう少しなんとか緩和されれば・・・?)
でも圧巻は、Gさん製作の銅板シャーシーのメインアンプと、AXIOM80の組み合わせで、最後の小出力の真空管では、ヴァイオリンの音の刺激的な部分が適度に緩和されて、しかも、音の消え入る感じ(残響)が心地よく奥行もあって、絶妙のバランスになったものと感じました。
以上、言いたい放題、書かせていただきましたが、少しでもご参考になればと思います。また、次回を期待します。」
そして最後にU君。
「昨日は久し振りに訪問させていただきました。以下は最新のシステムの印象です。最初に若い女性ボーカリストの歌を聴き始めた時に、「おっ、これは変わった」と思いました。荒々しさが抑えられていて、かつ口(唇や舌)の動きが感じられたのです。
そして右に定位するリズム楽器の音が少し出過ぎかというのも同時に感じました。しかし、この疑問は最後に挿した真空管との組み合わせて解消したと思います。それと、あとになるほど音場感が拡がっていったのも忘れてはならないと思います。
これらを可能にしたのは、ローパワーながら特性の良い三極管と、高能率スピーカーであるAXIOMの組み合わせです。位相特性が良く、残響(リバーブ)を綺麗に再生出来ないと良い音場感は得られません。そして、残響は微小レベルの再生になる為、当然アンプの微小レベルの特性が勝れている必要がありますが、この点をクリアーしていたため良い結果が得られたのだと思います。以上、取り敢えず。」
以上のとおりだった。システムの持ち主が音質を何ぼ自画自賛しようと「我田引水」と勘繰られてなかなか信用してもらえないのが落ちだが、こうして第三者の意見となると読者の方々にもきっと信じてもらえるに違いない(笑)。
この日の圧巻は後半に実施した2台の真空管アンプによる出力管を替えての実験だった。
ちなみにシステムの概要はCDトランスポートが「ラ・スカラ」(dCS)、DAコンバーターは「NA-11S1」(マランツ)、スピーカーは「AXIOM80」(最初期版)。試聴盤は「モーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番」(ボベスコ演奏)。
1 出力管「PP5/400」(最初期版、英国マツダ)
S君が「実際のヴァイオリンよりももっと美しい音色」と感心したアンプで、中高音域の艶のある音は比類がない。
2 出力管「WE300B」(1950年代製、オールド)
3 出力管「〇〇〇」(1920年代製)
WE300Bと「〇〇〇」がスイッチで切り替えられるようになっているアンプで、このほど「入力」「インターステージ」「出力」の各トランス類をすべて「UTC」(アメリカ)に交換したがその効果は絶大だった!
音響空間の気配というか微細な表現力では1を明らかに上回ったのが印象的。
音質に悪影響を与える磁気とは無縁の銅版シャーシ、4本の真空管のヒーター回路の独立などツクリの良さが大いに利いているが、とりわけ好評だったのがメールにあったように3の出力管だった。
出力がたかだか1ワット前後の出力管が高名な出力管と堂々と互角に渡り合うのだから、これだからオーディオは止められない。お値段の方も信じられないほど安い!
オークションで1年間に一度ほどしか見かけない逸品だが、もっと予備管を確保しておくことが目下の至上命題。ライバルを増やして値段が高騰するのは絶対にイヤなので型番を明かすわけにはいかないのが非常につらい(笑)。