「平等」と「差別」のどちらが好きかと問われたら、もちろん前者なので「主役」とか「脇役」とかの区分をあまり意識しないようにしているが、世の中は万事につけ「差別」に満ちているようだ。
たとえば映画だって主役と脇役の存在が不可欠だし、プロ野球でも「エース」と「4番バッター」がカギを握っているし、組織でもトップクラスとその他大勢に、極端な話になるが国民においても「上級国民」と「それ以外」に分けられる(笑)。
で、いつもの常套手段でこの話をオーディオに当てはめてみよう。
システムはその役割からいって大きく「前段機器」(CDやレコード)、「増幅機器」(アンプ)、そして「変換機器」(スピーカー)の3つに区分されるが、主役といえば何といってもスピーカーでありその他は脇役だとずっと思ってきた。
ところがこれが違うんですよねえ・・。
そういう認識に至った顛末を記してみよう。
昨日(30日)のこと、クルマで片道20分ほどの隣町の図書館で「本の匂い」を満喫し、ウキウキ気分のもとで自宅のオーディオ機器のスイッチを入れる時にふと気まぐれというか何となく「AXIOM80」以外のスピーカーを聴きたくなった。
その心底にマンネリ打破という気持ちが無かったといえばウソになりますなあ(笑)。
どんなに「いい音」でも長期間聴いていると飽きてくる、言い換えると脳はマンネリを嫌う、もう2か月近く同じスピーカーばかりというのは我が家では極めてよく持った方だ・・。
そこで実に久しぶりに「トライアクショム」(グッドマン)の登場とあいなった。
ご覧のようにいつでも「AXIOM80」に戻せるようにその斜め前に設置し、リスニング席にぐっと近くなった。
オークションでもめったに見かけないグッドマンの逸品で「口径30cmの同軸3ウェイ」で、自作の小さめの箱(板厚1.2cm)に容れている。
外見はさほどでもないが内部は凝りに凝っていて、羽毛の吸音材を適当に配置し、定在波を防ぐため「卵トレー」を敷き詰め、後ろの直径10cmの穴はビニールで覆い、前面バッフルの下側には背圧を気持ちよく逃がすために1cmの隙間を設けている。
AXIOM80が「微視的サウンド」とするとこれは「巨視的サウンド」になる。中低音域に曖昧模糊としたところがあって、人によってはこれが逆に奥ゆかしくて想像力を掻き立てる音になったりする。
こういう音じゃないと伝わってこないクラシック音楽があることもたしかだが「あばたもえくぼ」と言えないこともない(笑)。
それはさておき、小さめの箱なので低音不足が心配だったが実際に聴いてみると何とその反対の「低音過多」だった!
盛大にボンつくのである。
この低音を何とかしないと始まらないが、低音域の分解能と量感のバランスはオーディオの永遠のテーマの一つともいえるほど難しいので簡単にケリがつく問題でもないがベストを尽くさねば・・。
駆動したアンプは「6A3シングル」で、WE300Bの代わりに「6A3」を挿し込んでいるわけだが、そこで低音域がやや薄めの「071シングル」の登場とあいなった。
ところがこの小出力アンプでもボンつきが収まらないのには参った。
もう打つ手がないかと諦めかけたところでふと目に入ったのが「6FQ7プッシュプル」アンプ。
前段管は「12AY7」、出力管は「6FQ7」(RCA:クリアトップ)と何の変哲もないが出力トランスは名門「TRIAD」でプッシュプル接続になっている。
ダメ元のつもりでこのアンプで鳴らしてみたところ見事にボンつきが収まったのには驚いた。
プッシュプルの特徴の一つとして低音域の制動力が挙げられているのは嘘ではなかった。
このアンプは出力がたかだか1Wぐらいだろうがパワー不足を微塵も感じさせないのはありがたい。スケール感だってなかなかのものでオーケストラも十分こなしてくれる。
我が家では一番「投資金額」の少ないアンプなだけに殊のほかうれしい(笑)。
このアンプのおかげで「トライアクショム」は名誉挽回を果たし予備役編入を免れたわけで、主役の座をあえなく奪われた格好。
スピーカーとアンプはどちらが主役か決めるのは危険ですね~。
また、このアンプは手持ちの9台のアンプの中で一番の下層階級だったが、一躍上層階級の仲間入り。
オーディオ機器に限っては、お互いに持ちつ持たれつの相互依存の関係にあり迂闊に「主役と脇役」を決め付けられないことを身を以って体験したので、ここに謹んでご報告いたします(笑)。
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