日本経済新聞に掲載されている「私の履歴書」は、政治、経済、スポーツ、芸能など各界で「功成り名を遂げた」一流の方々が登場することで知られている人気シリーズで、いわば有名人の「自伝」みたいなもの。
この歳になっても向上心は失いたくないので、何か啓発されることはないものかといつも興味深く読ませてもらっているが、こういう言い方をすると不遜だが、ときどき中には首を傾げたくなる方もいたりしてやっぱり登場人物にも「当たりハズレ」があるようだ。今のところ「この人は凄い!」と唸る確率は3割程度といったところかな(笑)。
こういう自伝につきものの「自慢話」が少々鼻につくのは致し方ないことかもしれない。
それで思い出すのが「バラク・オバマ自伝」である。ずっと昔に(2008.2.10)このブログで取り上げたことがあるが、この本の冒頭に著者による次のような断り書きがある。
「どの自伝も危険をはらんでいるものだ。筆者にとって都合がいいように色付けし、個人の貢献を誇張し、都合が悪いことは伏せておきたいと思うのが人情である。自伝の主人公が虚栄心を持つ未熟者であればなおさらだ。本書にそのようなことは一切ない、とは言い切れない」
ほんの些細なことだが、以上のことからもオバマさんの「繊細さとたくまざる知性」が垣間見えるようだ。そのオバマさんも、いよいよ本日(1月21日:日本時間)ホワイトハウスを去って行った。
さて、今年(2017年)に入って1月1日から「私の履歴書」に登場しているのは「カルロス・ゴーン」氏だった。
「エッ、日本人じゃなくていいの?」と思ったが、「国内企業(日産自動車)の社長なら国籍を問わず」というのがその理由だろう。
ゴーン氏といえば目の玉が飛び出るような高給取りの社長として有名だが、そういうこともあって、どうせ「出稼ぎ根性の持ち主」だろうとあまりいい印象を持ってなかったが、この連載を読んでいくうちに久しぶりに「当たり~」。
至る箇所で「人間という摩訶不思議で複雑な生き物」を組織の中でどうやって活用していくのか、鋭い洞察力と目標に向けての迸るような熱気が全編を通奏低音のように流れているのだ。
たいへんな共感を覚えたので、まだ連載中なのだが初回からすべてコピーし、保存している。
その中から自分用として印象に残った言葉を抜き書きしてみた。いわば「ゴーン語録」だ。
1月3日 第2回
よくあることだが、嫌いだった人には「ああ、こんなに重要な人だったのだ」と後で気付かされることが多い。嫌いということの背景には何か重要なことが隠されている。それは後になって分かる。
1月4日 第3回
ものごとを複雑にしてしまうのはそれが何も理解できていないからだ。
1月15日 第14回
ビジョンを社員に浸透させるのに重要なのは共通の言語だ。私はそれが数字だと思っている。~中略~数字は多様な言語、文化の中で育った私が考え抜いた共通の言語なのだ。
1月17日(火) 第16回
1日は短い。だが、時間が足りないと感じるのはまだまだ時間を有効活用しきれていないということでもあると思う。
1月18日(水) 第17回
人間のモチベーションを左右する最も重要なものは「帰属意識(belonging)」だと思う。