オーディオの華は何といってもスピーカーだと思っている。ここが一番音を支配する要素になっているといっても過言ではないし、ここがダメだとほかのDACやアンプをいくら頑張ってみてもアウトだろう。
ただし、このスピーカーも構成する要素がいろいろあって、ユニットの性能、そして箱のツクリ、ネットワークの性能、設置場所など枚挙に暇がない。
で、メーカー既成のスピーカーについてだが、初めからある程度疑惑の眼を向けていているのがホンネ。
もちろん、その製品の値段と見合った範囲内での話だし、自分の耳にそれほど自信を持っているわけでもないが、好みの音か或いはそうじゃないかぐらいは分かる。
こういうクセがついたのも、けっして責めを負わせる積りはないが、当時交流のあったオーディオ仲間の影響も否定できない。
仮にMさんとしておくが、若い頃は実際に首都圏のオーディオ・メーカーに勤めておられた方で、どちらかといえばオーディオよりも音楽を優先される方だった。
メーカーに勤務されている時代、周囲で大学の電気系を出たてのホヤホヤの技術者や、何ら音楽への興味を持っていない技術者の連中が企画設計の段階からアンプづくりに携わり、コストダウンと物理特性だけをたよりに「音楽性に欠けた」製品を次々に量産化していくのをずっと目(ま)の当りにしてこられ、「メーカー製品はまったく当てにならない」というのが持論である。
そういうわけで、裏事情にも詳しいMさんからオーディオ評論家たちも含めてメーカーの実状を散々聞かされたこともあるし、実体験上でもメーカー既成のスピーカーのネットワークのお粗末さ加減を認識していたので「一事が万事」というわけでもないが、どんな有名ブランドであろうと「あまり当てにならない」という気持ちが植えつけられたことは否定できない。
そこで、実践論に移って我が家のタンノイ「ウェストミンスター」を血祭りにあげてみるとしよう(笑)。
購入したのはおよそ40年前ぐらいかなあ~、そのときはとても恐れ多くて改造するなんて夢にも思っていなかった。何せクラシックを鑑賞する上で世界的に有名なスピーカーですからね~。
だがしかし・・、月日が経つうちにどうも自分が狙う方向とは違うんだよねえという疑問が脳裡の片隅をよぎり、それが段々と膨らんでいった。
こんな音と一生付き合ってそれで満足できるんだろうか・・、まるで「伴侶」並みの扱いですね(笑)。
え~い、人生一度きりなんだから思い切ってやっちゃえと、乾坤一擲の大勝負(改造)に出たのはたしか20年前ぐらいかな~。
当然眉を顰める向きも多くて、「タンノイを改造するくらいなら、他のスピーカーを買いなさいよ」「改造すると下取りに出すときは二束三文になりますよ」などの忠告を沢山頂いた。
しかし「メーカーのお仕着せの音よりも自分の感覚を優先する」という不屈の信念は揺るがなかった・・、ちょっと大げさですけどね~(笑)。
たとえて言えば「注文住宅とプレハブ住宅」、背広でいえば「オーダーとぶら下がり」の違いといえないこともない。
そして、オリジナルのユニット(口径38cm)やネットワークを追放し、大きな箱の内部のバックロードホーンの構造も幾分単純化してシンプルに仕上げた。
ただし、爾来、迷走はしましたね~。
容れるユニットも「D130」(JBL)や「AXIOM80」、フィリップスの口径30cmのフルレンジなど多士済々だったけど、ようやく現在のワーフェデールの「スーパー12」(赤帯マグネット付き)で落ち着いた。
そして現在は「100ヘルツ or 200ヘルツ」以下の低音域専用として使っているが、はたしてこれで良かったのかどうか、判断に迷うところだが後悔はいっさいしていないつもり。
ちなみに、巷間「ウェストミンスター」を使っている方で、「どうも低音域が物足りない」という使用者の感想をオーディオ雑誌で以前見かけたことがあるが、「オリジナル仕様のクロスオーバーが1000ヘルツだと絶対に本格的な低音は出ませんよ」と、率直に申し上げておこう。
オーディオに「絶対」という言葉は禁句だけどねえ~(笑)。
結局、音楽愛好家にとっては日頃使っているオーディオ製品に対する信頼感と愛情を抜きにして音楽を語れないわけだが、「メーカーの音を心から信頼してそれに従うのか=ブランド信仰も音楽鑑賞の範囲内」、あるいは「メーカーよりも自分の好みを優先させるか」大きな分岐点のような気がする。
果たして、どちらが幸せなんでしょう~?