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中国型アジア銀行に加盟が正解

2015年04月09日 | 経済

 アジア経済圏の成長加速を

                         2015年4月9日

 

 中国が設立を主導しているアジア・インフラ投資銀行について、出遅れた日本では、政権内部、自民党内部で賛否の議論が巻き起こっています。結論から申せば、アジア経済圏の成長を加速する一助にするために、日本は加盟すべきでしょう。

 

 この構想は中国が主役だけに、これまでの日中関係からして日本側に警戒感が強いし、米政府も中国のプレゼンスの増大を歓迎せず、この面からも、難しい選択を迫られています。特に、反対派は対中不信の感情が絡み、冷静な判断がしにくいようですね。日本が歴代の総裁を出しているアジア開発銀行の影が薄くなることを嫌い、財務省も後ろ向きですね。

 

 成長を期待できるのはアジア

 

 こういう場合、何が大切なのでしょうか。アジア経済圏の中長期の成長をどう考え、どうかかわっていくかでしょう。日本は少子高齢化で低成長は長期化します。欧州共同体はゼロ成長とデフレの病に取り付かれ、克服したとしてもかつてのような成長は期待できません。先進国のなかでは、米国には今後も将来性があるにせよ、世界における地位は低下傾向をたどるでしょう。中東では、混乱と動乱が今後さらに激化します。こうした中で4,50年先まで見通せば、十分な将来性を期待できるのはアジア経済圏くらいでしょう。

 

 以前に書いたブログ「中国型アジア銀行の本当の大問題」で、国際金融の世界には、巨大な不均衡が存在すると指摘しました。先進国における洪水のような金融緩和、その一方で年率6,7%の成長が見込まれ、大規模な資金不足が存在するアジア諸国という対照的な姿です。

 

 日米欧は超金融緩和にどっぷりつかり、マネーがだぶついています。マイナス金利、ゼロ金利、ないし極端な低金利の状態にあるということは、資金需要が極めて乏しいことを意味します。マネーをいくら供給しても、株、商品、土地などの投資にまわり、資産価格がつりあがり、資産バブルを警戒する声が先進国では強いのです。アジアの途上国は道路、港湾、通信、電力などのインフレ整備のための長期資金を必要としています。

 

資金過剰と資金不足の不均衡の解消を

 

 世界全体を見渡せば、マネーはあふれているのに、将来性豊かなアジアになかなか回っていかないのです。巨大な資金過剰と巨大な資金不足を、欧米型のマネー市場は橋渡しできていないのです。日本にとってみても、少子高齢化の国内経済は成長余力がないため、アジア経済圏に資金を注ぎ込み、豊かにして、その一員として生きていくことが望ましい選択なのです。

 

 世界銀行のキム総裁は「アジア・インフラ銀行が必要なのは疑いがない。設立や運用面で世銀として喜んで連携していく」と述べました。著名な経済学者のバーグステン教授は「日米が反対するのは間違い。今のアジア開発銀行の理事会システムは決済に時間や手間がかかりすぎている」などと批判しています。米政府も「困ったことになった」と思いつつも、最終的には中国構想に深く関与していくほうが国益にあうと判断することでしょう。

 

 対中感情、対中不信にひきずれてきた安倍政権も、焦ってきましたね。「加盟が50か国以上にのぼるとは誤算だった」、「G7(先進主要国)は入りませんといっていた財務、外務省の見通しは甘かった」という批判が吹き出しています。なにがアジアの将来にとって有益なのかという基本的な判断せず、回りの様子をもっぱらうかがってきたことを反省しているでしょう。中国の脅威は不可避であり、むしろ広いアジア経済圏のために引き込むことこそ考えるべき課題です。

 

 安倍政権もやっと本格的検討

 

 政府がアジアインフラ銀行について、評価できる点、懸念される点などを比べた対処方針が報道されました。「資本金が1000億ドル(12兆円)として、日本が参加した場合の財政負担は3600億円」、「中国の影響力拡大による恣意的な運用、開発金融の国際基準の混乱が懸念。日本の関与が必要」などとしています。ここまで検討したからには「はやり加盟しません」とはならないでしょう。

 

 財政負担が大きいといっても、日銀は年間で80兆円の長期国債を市中から購入し、事実上の財政ファイナンス(財政支援)をしています。その金額と比べてみてください。しかも、新銀行はお金を贈与するのではなく、融資するのです。出資した資本金がすぐになくなるというのではありません。

 

 かりに中国が4兆ドル近い外貨準備高の一部を銀行設立にまわすとしても、新銀行の資本金の中国負担分の比率は微々たるものです。ドル建ての拠出なのか自国通貨建てなのかも未定です。ドルを拠出すると、その裏づけの人民元を市場からひきあげるのでデフレ効果を生むという論評を見かけました。そうなのですかねえ。インフラ整備に伴い、中国から機器材を輸出すれば、すぐに元がとれます。要するに、あまり微細なことを気にしないことです。

 

 

 

 



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