違反は連座制で失職を
2015年5月4日
嘘をついてもいいと、思っている政治家は少なくないようです。小渕優子・前経産相の元秘書2人が政治資金規正法違反で起訴されました。メディアは極めて悪質な犯行だと怒り、「説明責任を果たせ」と、要求しています。本当のことをいうはずはなく、むなしい叫びでしょう。
政治資金報告書への虚偽記載は、2013年までの5年間で3億円を超え、この種の事件で、また秘書が身代わりになっただけで、本人は嫌疑不十分で不起訴になりました。メディアは「本人が知らなかったでは済まされない」と、毎度おなじみの批判です。そんなことより、「知らなかった」が恐らく嘘ではないことのほうが大問題ですね。
「知ろうとしない」という仕切り
「知らなかった」ではなく、資金処理は秘書に任せ、もっとも肝心な部分ほど、議員本人がタッチしないという仕切りにしてきたのでしょう。「議員は実際に関与してこなかった」、「議員は実際に知ろうとしてこなかった」というのが事実と思われます。そうしたカラクリというか仕切りについては、真実を語っていないということでしょう。これは重大な監督責任の放棄です。その点については「そんな仕切りはありません」と嘘をついているので、立件できなかったのでしょう。
政治家と秘書との間では、一般論的には、次のようなやり取りがあると推測されます。父親の元首相が死去し、娘が跡継ぎになりました。政治には不透明、不明朗な部分がつきまとい、裏を熟知していますから、秘書はそのままです。秘書を変えたら暴露される恐れがあるからです。
「おカネの流れはどうなっているの。わたしとしても、資金の出入りを知っておきたいのです」。「それは秘書にお任せしてください。必要があれば、ご報告します」。「なぜなの」。「事件があった時、議員の責任が追及されます。すべてわたしたちの一存でやっておかないと、議員辞職に追い込まれることがあります」。
「報告を受けない」ほうが安全
「そうなの。発覚したら責任を追及されそうなところほど、報告を受けないほうがいいのね。知らないでいるのが一番いいのね」。「そうです。知らないできたで通すのがいいのです。そのことが嘘にならないためにも、知ってはなりません」。「他の議員もそうなの」。「すべてとはいいませんが・・」。
豪腕ぶりで恐れられ、いくつもの政党をつくっては、政界をかく乱した某議員の場合は、肝心な部分ほど議員本人が指示、熟知していたと思われます。そして「お前たち、事件になった場合は、秘書の判断でやり、先生には報告していませんと、言うのだぞ」と、命じます。実際にそれで起訴を免れたのでしょう。初心者に近い議員ほど、本当に秘書任せでしょうね。
政治資金規正法では、「会計責任者の選任及び監督ついて相当の注意を怠った」場合、政治団体の代表者(議員)を法違反に問え、立件できます。今回の場合、検察は「刑事責任を問える証拠がない」と議員本人の立件を見送ったそうです。先代から簿外の支出を隠蔽するために、つじつまあわせの虚偽記載には本人は立ち入らず、本当に秘書任せで続けてきたのでしょう。
「道義的責任」を問う虚しさ
野党やメディアは「政治的、道義的責任を免れない」といい、「早期の説明を」と叫びます。むなしいですね。そんな要求を突きつけるより、「重大な虚偽記載で秘書らが起訴されたら、議員を失職させる連座制を導入せよ」というべきでしょう。わが身に降りかかってくるかしれない禍を規正法に明記することを自民党政権はしないし、支持する野党も一部を除いてないでしょうがね。
もっとも中国では、共産党や軍の幹部が何十億、何百億円というケタはずれの賄賂をとっているのがばれ、最近は次々に政治生命を断たれています。米国でも、大統領選挙選とでもなると、2、3百億円もの献金を集め、候補者はテレビのCM枠を買い込み、相手候補を中傷誹謗するのにつぎ込みます。それに比べると、日本はずっとましで、「そんなに騒ぎなさんな。政界はそんなところだ」と割り切るのもひとつの手でしょうか。毎回、腹を立てているとくたびれますから。
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