日韓とも軽く見た言論の自由
2015年16日
韓国はひどい国です。それにしても、事件に関係した記者も、帰国した記者を歓迎する日本のメディアの反応も、ちょっとおかしいのではないですか。そういいたくなります。ついでにいうと、記者を官邸にまで招き、慰労か激励かをした安倍政権の反応もオーバーでしたね。
産経新聞の前ソウル支局長(48)は、韓国の女性大統領の名誉を傷つける記事を書いたとして在宅起訴され、昨年8月から出国禁止の措置を受けていました。やっと禁止措置が解け、先日、日本に帰国しました。日韓関係のトゲみたいな存在でしたから、政府、マスコミあげて、「まずはよかった」と、評価しています。
昨年4月韓国旅客船(セウオル号)沈没事故が起きた日、パククネ大統領が元側近の男性と会っていたとのうわさ(密会説)が流れました。週刊誌ならすぐに飛びつくような話です。前支局長はそのううわさを引用した韓国紙の記事をもとにコラムを書いたところ、大統領側が怒り、検察も動き、在宅起訴されました。
非はまず韓国側にある
「大統領を誹謗する目的で虚偽の事実を広めた」、「情報通信網法に基づく名誉毀損罪にあたる」とおおげさなことになってしまいました。事情聴取が始まり、出国を禁止されていたのです。日米欧では考えられないような、過激な対応で、言論の自由や表現の自由を踏みにじる乱暴な措置であることは間違いなく、韓国の政治、検察のレベルを世界に知らしめることになりましたね。
この問題は、過剰反応した大統領側、政治権力に従う検察側に全面的に非があります。それを前提で、申し上げたいことがあります。産経新聞側は「ジャーナリズム、表現の自由、報道の自由に対する弾圧である」と反論してきました。本音でいうと、こんなレベルの話で「表現の自由」、「報道の自由」などを持ち出さないでほしい、ということです。
産経はもともと韓国との関係がよくなかったこともあって、大統領のうわさを韓国紙が載せたことは事実だから、自分の記事に取り込んでもいいや、という思いがあったのでしょう。韓国に詳しい記者のはずなのですから、韓国の新聞は党派色が強く、しかも信頼性に欠けるということを忘れてしまっていたのでしょうか。韓国紙は日本でいう週刊誌と新聞の中間くらいの存在でしょうか。
産経側が全面降伏
このうわさが事実だったら、産経側のメンツもつぶれません。裁判の過程で、うわさは事実でなとされ、否定されました。「問題となった7時間、大統領は青瓦台(官邸)おり、職務を遂行していた。相手の男性の携帯電話の通信記録、大統領警護室の記録から結論を得た」そうです。支局長も新聞にその旨を書き、「うわさを否定した裁判所の見解は妥当」と全面降伏してしまいました。
大統領に関するうわさを韓国で書くなら、真偽を確認すべきでしたね。この支局長も後で「しまったことをした」と、後悔したことでしょう。フランスのオランド大統領は他の女性と男女関係を持って悪びれません。クリントン元大統領は執務室における研修生の女性との行為が発覚したことがあります。その妻であるヒラリー氏が大統領選への出馬を発表したばかりです。要するにどうでもいいような話が韓国では大問題になり、日韓関係のトゲとされたのです。
言論の自由には節度が伴う
韓国側も産経新聞もともに、言論の自由、報道の自由を軽くみましたね。なにを思ったのか、安倍首相が帰国したばかりのこの支局長を官邸に官邸に招いたのには驚きました。もともと安倍首相と産経新聞は親しい関係にあります。産経新聞が「そこまで思っていてくれるのか」と感激し、ますます安倍支援の色を濃くすることは予想されます。
日本のメディアの多くは基本的には産経新聞を擁護しています。「韓国も韓国、産経も産経。記者は言論の自由をもっと大切に。こんな次元の話で、言論の自由を持ち出すなんて、みっともない。言論の自由は自ずから守るべき節度を伴う」というような指摘を期待していたのに、まだお目にかかっていません。
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