テレビは語感を大切に
2014年10月11日
日本に接近する台風19号の報道で、テレビの乱暴な言葉遣いが気になってしょうがありません。大きな台風だと、被害者、死者が不可避なのに、「最強の台風」、「強力な台風」という表現を使っています。無神経です。放送倫理・番組向上機構(BPO)は誤報ばかりでなく、言葉遣いをチェックすべきですね。
台風19号は、米航空宇宙局(NASA)の航空士が宇宙ステーションから撮影し、「これまでたくさん台風を見てきたけれど、こんなのは見たことがない」と驚いたほど、巨大です。米国のテレビ放送は「スーパー台風」と呼んでいました。少なくとも今年、最大でしょう。豪雨、暴風を伴い、日本各地で深刻な被害、死者がでることも予想されます。
これを日本のテレビ放送はどう伝えているでしょうか。テレビ朝日のニュースステーションは「今年最強の台風」でした。日本テレビは「最強台風」、TBSは「猛烈台風」でした。7月に来襲した8号台風も大きな被害をもたらし、このときは「強力な台風」という表現をよく目にしました。
被害者、死者のことを思うと、「最強」とか「強力」は失礼です。「最強」とか「強力」という形容には肯定的な意味が込められています。「強力な内閣」、「最強の布陣」、「強力な打線」、「最強のチーム」など、肯定的な評価を含んでいますね。「最強の軍隊」と呼んでも、「最強の暴力団」とはいいませんよね。台風の表現は、客観的に「大型で非常に強い台風」、「超大型の強い台風」でいいのではないでしょうか。テレビの画面の字幕にコンパクトな表現を使おうとして、「最強」などとなるのでしょう。それはテレビ側の事情であり、被害者の立場にたっていませんね。米国のテレビの「スーパー」もいやですね。
気象庁の定義によると、半径500-800kmが「大型」、半径800km以上が「超大型」です。新聞はこれに沿って、だいたい、19号を「大型で非常に強い台風」と書いています。NHKはどうでしょうか。語感には気をつけていて、今朝のニュース報道でも、新聞と同じく「大型で強い台風」でした。新聞も7月の8号台風の時、最初は「強力な台風」という表現が多く、そのうち「強い台風」に変わったように記憶します。「強力」は被害者の神経を逆なでにするとの批判があり、変えたのでしょう。
ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララさん(17)は、以前、国連に招かれた時のスピーチで、「わたしたちの最も強力な武器である本とペンを持とう」と語ったと、今朝の新聞が紹介していました。いい言葉です。「強力」には、やはり肯定的意味、プラスの意味があります。
地球温暖化で太平洋の海水温があがり、台風の勢力は大きくなり、持続力も増しています。被害は甚大になるでしょうから、報道のおける言葉遣いには、神経を配ってほしいのです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます