「ムスッ?」「ブスッ?」 どう見ても不機嫌そうなこの表情。写真の犬を、皆さんはどのような言葉で表現しますか?
この犬が飼われている家の前を通りかかった時、何故か写真を撮りたい衝動にかられ、「撮ってもいい?」と犬に尋ねたところ、この表情をされました。
今、「オノマトペ」の人気が急上昇しているそうです。
「オノマトペ」(仏:onomatopee)とは、「もちもち」、「はらはら」、「どどーん」などの擬音語、擬態語のことで、事柄やイメージを短い一言で伝えられる良さがあります。
朝のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、驚きを表す語として使われている「じぇじぇじぇ」もその一つ。
オノマトペは、少なく見積もっても5,000語以上あり、情感を表す言葉として無限に作れるのだそうです。
先日のNHK「クローズアップ現代」では、コンビニや国会、医療現場などを訪ね、増殖する「オノマトペ」の謎を検証していました。研究によって分かってきた「オノマトペ」を処理する際の脳の働きなどから、オノマトペの魅力が語られていました。
食品の場合「もちもち」、「もっちり」とつけると売り上げが急上昇するデータもあるそうです。
印象的だったのは、陸上の監督が「オノマトペ」を指導に取り入れ、練習に革命をもたらした事例。スタートダッシュの練習をしている選手に、「少し膝の屈伸を使いなさい。」と言う意味で「ぐい」「ぐい」「ぐいっ」という声をかけていました。
インタビュアーの、「ぐい」を使わないで指導するとしたら、どういう感じになりますか?との質問に対して、
1. 足首を曲げて、
2. 膝を下に向けて、
3. 自分の重心を前に行った時に、
4. 逆の膝を引き上げて、
5. 地面と水平になるように、
というように沢山の言葉が必要とのこと。
テレビを見ていた私は、「ぐい」の定義は? 監督と選手で異なる「ぐい」をイメージすることはないの?と思ったのですが、「ぐい」が効果をもたらすには、やはり監督と選手の間に、「ぐい」がもたらす状態の共通認識がある。さらには、その前提として監督と選手の間に信頼関係があるとのことでした。
やはり「オノマトペ」も信頼関係あってのことだったのですね。
普段、問題解決やコミュニケーションの研修では、形容詞を始めとした「あいまい表現」は人には伝わらないため、論理的に伝えることや定量化の重要性を力説しているのです。事柄やイメージを一言で伝える表現としては、必ずしも定量化することがベストというわけではないのだなと思いました。情感の言葉「オノマトペ」・・・それもあり。
ならば、研修に「もちもち」をつけたら人気が出るか?・・・出るわけがない!それは調子に乗り過ぎでした。
(人材育成社)