共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

実によくできた曲 ~ アイネ・クライネ・ナハトムジーク

2015年11月18日 21時45分52秒 | 音楽
生徒に次のレッスンから弾かせる曲の候補を探していたのですが、いろいろと楽譜を物色していた時に、天袋からモーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》の楽譜が出てきました。昔、ブライダルの現場で使っていたものが、何かの拍子にここに紛れ込んでしまったのかも知れません。

懐かしみがてら楽譜を眺めてみて、改めて『何とよくできた曲なんだろうか』と思わされました。

何しろド頭の4小節にはヴァイオリンからコントラバスにいたるまで、ドミソとソシレファしか書いていないのです。これはスゴいことなのです。というのも、普通だったらヴァイオリンがメロディを弾いて、他のパートが『要りません』という感じで伴奏に専念するという造りになっている曲のほうが、圧倒的に多いのです。それなのに、この曲は4小節もの間全員が同じテーマを演奏するのです。この曲の初演を聴いた人達には、相当なインパクトがあったでしょう。だからこそ現代でも老若男女を問わず、この曲を聴いた人達は一発で覚えてしまうわけです。

それから、これは演奏上の都合ですが、主旋律を担当することが多い1stヴァイオリンですら、技術的にはサードポジションといって、ヴァイオリンレッスン中級者の技術レベルでも演奏できるような、2オクターブ半という限られた音域の中だけで作曲されているのです。

曲というのは、音域を広げれば広げるほど作曲の自由度が増します。逆に言えば音域を限定的な範疇に留めれば、その分制約も増えるわけです。

2オクターブ半という音域は、弦楽器にしてみれば決して広いものではありません。それでも、晩年にさしかかろうというモーツァルトは、敢えて限られた音域を駆使して、この華やかで諧謔でコケティッシュな愛すべき作品を後世に残してくれたわけです。この、全曲演奏しても20分もかからない大作に、改めて敬意を新たにしたのでありました。

そんなわけでこの名曲を、巨匠カール・ベーム指揮のウィーンフィルによる演奏でどうぞ。ちょっとテンポがゆっくりめですが、そこは巨匠のテンポということで…。

Mozart, Eine kleine Nachtmusik KV 525 Karl Bohm, Wiener Philharmoniker
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