共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

久々にいいコンサート

2015年11月11日 23時01分00秒 | 日記

今日は、かつてよく一緒に演奏活動をしていた知り合いが主宰と指揮をしているロータス室内管弦楽団の演奏会があるというお知らせをもらったので、海老名の市民文化会館に出掛けました。平日の夜の公演ながら、400席強ある小ホールは3分の2ほど埋まっていて、なかなかの盛況ぶりを見せていました。

ロータス室内管弦楽団は、東京音楽大学出身の指揮者氏の下、東京音楽大学や国立音楽大学、桐朋学園音楽大学出身者で結成されたアンサンブルです。今回はその創立10周年記念とのことで、プログラムもかなり充実したものとなっていました。

前半にはフレデリック・ディーリアスの《小管弦楽のための二つの作品》という、なかなか渋いものを持ってきました。『春、始めての郭公の声を聞いて』と『川の上の夏の夜』という非常に牧歌的な二つの曲から成るこの美しい作品は、その抑制の効いた控え目な響きと、トータルで13分ちょっとの演奏時間というコンパクトさとで、なかなか演奏会のプログラムに載りにくい作品です。しかし今回の演奏では、自然の中に生きたディーリアスの作風に沿うような静謐な響きのアンサンブルを聞かせてくれました。

その次には弦楽器セクションのみで、チャイコフスキーの不朽の名作《弦楽のためのセレナーデ ハ長調》が演奏されました。今回のアンサンブルは1stヴァイオリンが総勢8人、それが2人でプルトというグループを作るので4プルトでの演奏で、それに準じて2ndヴァイオリンが3プルト、ヴィオラが2プルト、チェロが1.5プルト、コントラバスが1プルトという編成での演奏でした。これは、この曲を演奏するには比較的少なめな人数ですが、聞いた印象としては、むしろこのくらいの編成の方がスッキリしていて気持ちいいものでした。

確かにこの曲を演奏するのに大人数いればいたで、特に冒頭のファンファーレを筆頭として音楽の迫力が増す(因みに私が以前演奏した時は、1stヴァイオリンだけでも8プルトはあったという大所帯だった)のですが、その分細かな演奏のドライビングは難しくなります。そこへもってくるとこのくらいの小編成の方が、ドカーンという迫力は薄らぐものの緻密なアンサンブルを構築できて、聞いていても非常に心地よい演奏でした。何しろ素敵なアンサンブルのあまり、第1楽章が終わった段階でお客さんから「ブラボー!」の声と拍手が起こったくらいでしたから…(´▽`;)。

休憩をはさんで後半はモーツァルトの《交響曲第39番 変ホ長調》が演奏されました。言わずと知れたモーツァルトの後期3大交響曲の筆頭を飾る名作ですが、今回は小編成オケならではの爽快な演奏を聞かせてくれました。

先日自分でも演奏したばかりだし、どういう巡り合わせかモーツァルトの交響曲の中で一番多く演奏していることもあるのですが、こうして客観的に聴いてみて、改めていい曲だなぁ…としみじみ思いました。もしかしたらモーツァルトの全交響曲の中で一番好きかも知れません。その作品を、時にしっとりと、時に溌剌と聞かせてくれる彼等の演奏は、実にいいものでした。

因みに、この合奏団の名前がロータス室内管弦楽団ということで、ポスターにもロータス=蓮が使われていました。実はこの蓮の花は、私が以前このブログに掲載した海老名高校裏の蓮田の花を私が指揮者氏に教えて、後日彼が現地に出向いて撮影したものだということを伺いました。思わぬところで間接的にコンサートのお役に立っていたようで、ちょっと嬉しい気分になれました。

こんなに素敵なアンサンブルなのですが、やはり昨今の経済的状況の影響で、なかなかコンスタントにコンサートが出来ないということを、終演後に聞かせてくれました。こういった文化水準の高い団体がもっと頻繁に演奏会が開けるような世の中であってほしいと思うばかりです。
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