毎回同じことばかり書いていますが、今日も神奈川県は猛暑日となりました。こう暑いと食欲もわかず、素麺を茹でることすら億劫になっています…。
ところで、今あざみ野の大人の生徒さんの一人がベートーヴェンの《メヌエット ト長調》を手がけています。
この曲はヴァイオリンピースとしてあまりにも有名なので、今更何かを解説するようなこともないのですが、この曲が元々オーケストラのための作品だったことはあまり知られていないようです。
《メヌエットト長調》は『6つのメヌエットWoO.10』の中の一曲で、ベートーヴェンが1795年に作曲し、翌年出版された作品です。現在では残念ながらピアノ編曲版の楽譜しか現存していませんが元はオーケストラ曲であったようで、実際に舞踏会で踊るために書かれたようです。
『6つのメヌエット』は
1:ハ長調
2:ト長調
3:変ホ長調
4:変ロ長調
5:ニ長調
6:ハ長調
の6曲からなっていて、テンポ指定はありませんが、一拍がメトロノームでいうところのAllegrettoくらいがちょうどいい感じです。そして、この中でも第2番のト長調が飛び抜けて有名になり、単独で『ト調のメヌエット』として知られています。
ピアノで演奏されることの多いこの作品ですが、ヴァイオリンで演奏してみると、いかにも弦楽器的なメロディであることが分かります。特に
出だしのメロディで、ヴァイオリンの付点のリズムのド#とピアノのラ#は本来ト長調の和音とはぶつかってしまう不協和音なのですが、これらの音を付点音符で入れるによって浅いスクワットをするかのような弾みを生み出し、それがこの音楽の推進力にもなっているのです。
ピアノで演奏する際には、この付点音符のリズムの弾みのつけ方がポイントになってきます。これが上手く弾まないと、大きく膨らんだスカートを身に着けた貴婦人たちが踊ることはできません。
これは他の5曲についても同じようなことが言えるので、実際にメヌエットを踊ってみると、より実感することができます。私は大学時代の授業で様々な古典舞踊のステップを習ったことがあるので、生徒さんにも簡単にメヌエットのステップを踏んでもらってから取り組んでもらっています。
そんなわけで、今日はベートーヴェンの『6つのメヌエットWoO.10』をお聴きいただきたいと思います。イェネ・ヤンドーのピアノで、壮大な交響曲とはまた違った愛らしいベートーヴェンをお楽しみください(第2番ト長調は1:52から始まります)。