【演奏してみた】トレブル・ガンバ、リコーダー、バロック・チェロでトリオ・ソナタ《だんご3兄弟》を弾いてみた
昨今、ネットの動画を見ていると、いろいろと興味深いものに出会います。それは自分で故意に探しに行くこともありますが、偶然出くわすこともあるわけです。
そして今日Facebookをチェックしていたら、知り合いの方がこんな動画をシェアしていました。かつてNHK《おかあさんといっしょ》で歌われて大ヒットした『だんご三兄弟』のメロディを、トレブル・ガンバ(アルト音域のヴィオラ・ダ・ガンバ)、アルトリコーダー、バロックチェロによる後期バロック風のトリオ・ソナタにしたものなのですが、これがまた笑ってしまうくらい上手くできているのです!
トレブル・ガンバから『だんご三兄弟』のテーマが始まって、やがてリコーダー、チェロへと受け継がれ、見事な『だんご三兄弟による三声体フーガ』を展開していきます。テーマを演奏しているパートのところに串団子の絵が出てくるので、どこが主役なのかがよく分かるようになっています。
転調を重ねながらどんどんと『だんご三兄弟』のテーマを展開していき、クライマックスでは何とトレブル・ガンバに『だんご三兄弟』のテーマ、リコーダーにテツ&トモの『なんでだろう?』、そしてチェロには大バッハの《音楽の捧げ物》の中核を成す『フリードリヒ大王による王のテーマ』が重なり合うのです。このあたりの高度な対位法の展開には舌を巻きます。
更にその後、画面に二つの串団子だ現れます。よく見るとリコーダーのところの串団子はいいのですが、トレブル・ガンバのところの串団子は逆さまになっています。これはその箇所で、リコーダーは『だんご三兄弟のテーマ』を演奏し、トレブル・ガンバは『だんご三兄弟のテーマ』を逆から演奏していることを示しています。これは「鏡のカノン」と呼ばれるもので、二人の奏者が同じ楽譜を、片方は頭から順当に、もう片方はお尻から楽譜を逆さまに見て演奏をスタートし、中程ですれ違ってお互いに楽譜の最後まで演奏するとちゃんとした音楽になるという、極めて高度な作曲技術を必要とするものなのです。
いやあ…私はこういう下らなくもエレガントなネタが大好きなのです。アレンジしている時にも、こういうことが出来ないかなあ…と企んでみたりするのですが、なかなか上手くはいきません。なのでこうした動画を発見すると、悔しくも尊敬してしまいます。
このアレンジの聴きどころは何といっても『だんご三兄弟のテーマ』『なんでだろう?』『音楽の捧げ物』が重なり合うクライマックスです。大の大人が寄ってたかって練り上げたこの下らなくも美しい作品に、心からの経緯を表したいと思います。