今日は、遂に半袖日和と言っても過言ではない陽気となりました。もしかしたらこの暖かさで、桜の蕾も開花に向けて刺激されているかも知れません。
さて、今日3月14日はテレマンの誕生日です。決してホワイトデーなどという、取ってつけたような菓子類販促日ではありません(笑)。
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767)は後期バロックを代表するドイツの作曲家で特に40歳以降は北ドイツのハンブルクで活躍していました。クラシック音楽史上最も多くの曲を作った作曲家として知られていて、ギネスブックにも登録されています。
ライプツィヒ大学在学中には
同時代の作曲家ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)とも友人関係になって、頻繁に手紙のやり取りをしていました。また
ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685〜1750)ともかなり親密な交友関係を築いていて、バッハの次男にカール・フィリップ・エマヌエルという名前をつけたのもテレマンでした。
テレマンの音楽様式は、若い頃にふれたフランスやイタリア、ポーランドといった諸外国の民族音楽、中でも舞曲からの影響がみられ、そこにドイツの音楽様式も加えて、後の古典派で花開くロココ趣味の作風まで示していました。また、テレマンはバッハやヘンデルよりも4歳年上なのにも関わらず86歳まで長生きしたため、晩年は
古典派を代表する作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)の青年時代とも重なっていました。
さて、そんなテレマンの誕生日に何を聴こうかと考えたのですが、今日は《6つのカノン風ソナタ》をご紹介することにしました。
この曲集は1738年に作曲されたもので、通常は2挺のヴァイオリン若しくは2本のフルートで演奏されます。そしてこの曲集のスゴいところは、3曲1セットで構成されている全部の楽章が2声のカノン、つまり、ひとつの楽譜を使って完全に追いかけっこしながら演奏すると、ちゃんとデュエット曲になるというところです。
しかも更にスゴいところは、カノンのズレ方が1小節ズレからマックスで3小節ズレまであるのです!しかもそれぞれが破綻なく音楽的にまとまっているのだから、最早変態の域に達しています(失礼な…)。自身もヴァイオリンやオルガン、チェンバロ、リコーダー、リュートといった多くの楽器演奏に長け、特にヴァイオリンとリコーダーについては名人として知られていたテレマンは練習曲的なものを数々残しましたが、この曲集もその一環だといわれています。
そんなわけでテレマンの誕生日である今日は、パズルのような諧謔性に満ちた《6つのカノン風ソナタ》から第1番の演奏動画をお楽しみいただきたいと思います。3つの楽章全てが1小節ズレで展開される、テレマンの変態性を存分に御堪能ください(だから失礼だと…)。
尚、通常この第1番をヴァイオリンやフルートで演奏する場合にはト長調で演奏しますが、この演奏動画はリコーダーでの演奏のため楽譜が変ロ長調に移調されています。