共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

『ねんねんころり』は何の笛?

2024年12月03日 17時45分55秒 | 音楽
今日、高学年の音楽の時間に《子守唄》を学習する時間がありました。そう

〽ね〜んね〜ん、ころ〜り〜よ、
 おこ〜ろ〜り〜よ〜〜〜

という、あの歌です。

この《子守唄》の時にちょっと問題になるのが

〽里の土産に、何貰ろた〜
 でんでん太鼓に、しょうのふえ〜

という部分です。

学校の先生曰く『しょうのふえ』とは雅楽で使われる笙だと教えてしまうのですが、里帰りの子守風情にでんでん太鼓ならまだしも



宮中で使われるこんな高級な楽器を土産に渡すとは到底思えません。ましてや『しょうのふえ』の『しょう』に相当する漢字は『笙』と『蕭』があり、必ずしも雅楽器とは限らないのです。

以前調べてみたことがあるのですが、実はこの『しょうのふえ』、一筋縄では行かないもので、いくつもの説が跋扈していました。

●『ひょうのふえ』説

『ひょうのふえ』という言葉が訛ったという説です。

『ひょうのふえ』とは、竹に簡易な穴を空けた玩具の笛のことで



このようなものだったようです。それが、音韻変化で『ひょう』が『しょう』となった…例えば生粋の江戸っ子に言わせると

色紙⇒ひきし
朝日新聞⇒あさししんぶん

となるように変化していったという説です。

●伊勢土産説

伊勢参りの土産物に『しょうのふえ』というものがあったそうで、そのことを指すという説です。

雅楽器の笙は竹筒の中に金属製のリードが入っているハーモニカのような発音原理の楽器ですが、この『しょうのふえ』も簡易的なハーモニカ的発音原理のものだったようです。ただ、残念なことに明治時代に廃絶してしまい、現物はおろか写真すら残っていませんでした。

●『蕭』説

『笙』ではない『蕭』という楽器だという説です。

『蕭』は



竹でできた細長い縦笛で、日本で近いものだと尺八になると思います。中には、



パンフルートのように竹筒を横に並べて吹く『排蕭(はいしょう)』という楽器もあります(写真は東大寺正倉院に伝わる『甘竹蕭(かんちくのしょう)』という楽器)。

●篠笛説

『しょうのふえ』とは



祭囃子などで使われる篠笛であるという説です。

『篠』の字を音読みすると『しょう』となります。そのため、庶民でも比較的入手しやすい篠笛こそが『しょうのふえ』の正体だとするものです。

…とまぁ、これだけの説があり、またそのどれもが決め手に欠けるものです。いずれにしても、『しょうのふえ』に対する詳細な説明や現物がない限り、これ以上はどうしようもありません。

ただ、とにかく雅楽器の『笙』である可能性は限りなく低いものです。なので、できれば学校の先生たちには誤解を招くようなことを教えていただきたくない…というのが、音楽家の端くれなりの意見でございます(汗)。


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