今日も神奈川県は、朝晩と日中の気温差の激しい一日となりました。霜月に夏日を迎えるというなかなかぶっ飛んだ陽気に、何を着ていいやら分からなくなってしまっています…。
ところで、今日11月4日は『リンツ』の愛称で親しまれているモーツァルトの《交響曲第36番ハ長調》が初演された日です。《交響曲第36番 ハ長調 K.425》は、
モーツァルトが1783年に作曲した交響曲で、この曲にはなんと
『たった4日間で作曲された』
というぶっ飛んだ逸話が残されています。
モーツァルトはウィーンでコンスタンツェ・ヴェーバーと結婚式を挙げ、その後二人はモーツァルトの故郷であるザルツブルグにいる家族のもとへ結婚の報告に行きました。その帰りがけにモーツァルト夫妻は1783年の10月から11月にかけて、ウィーン、グラーツに次ぐオーストリア第3の都市リンツに立ち寄り、滞在中に当地でモーツァルトたちが庇護を受けていたトゥーン・ホーエンシュタイン伯爵が企画した予約演奏会に出演することになりました。
ところが、あいにくその時に交響曲の楽譜の持ち合わせがなかったため、なんとモーツァルトはリンツに到着した10月31日から演奏会前日の11月3日までのわずか4日間という速さでこの新作交響曲を完成させました。そのような経歴からこの交響曲は『リンツ』という愛称で呼ばれていますが、この優れた作品が4日という驚異的短期間で書かれたという逸話は、モーツァルトが天才であることを証明する具体例のひとつとされています。
聴いてみると分かりますが、とても4日間で作り上げたとは思えない充実した内容の交響曲で、たとえ一日に一楽章ずつ作ったとしてもこんな濃密な音楽が作れるものなのかと驚愕させられます。フルートとクラリネットパートがないという理由で特に日本の演奏会ではなかなか採り上げられにくくなってしまっていますが、後の後期三大交響曲への先鞭をつけた作品としてもっと演奏されて然るべき名曲のひとつです。
そんなわけで、今日はモーツァルトの《交響曲第36番 ハ長調 K.425》、愛称『リンツ』をお聴きいただきたいと思います。エーリッヒ・ラインスドルフ指揮によるボストン交響楽団の演奏で、たった4日間で書いたとは思えない音符たちとともにお楽しみください。