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負けず嫌い・・

 蚊は嫌いだ。あの羽音がするだけで全身に悪寒が走る。と同時に全神経を集中して蚊がどこにいるのかを探る。見つけなきゃ、どうしても見つけなきゃ。だって刺されたら痒いし、腹が立つもの・・。
 
 草むしりも苦手だ。どういうわけだか、半袖シャツで草むしりをしていると、草に触れたところが赤く腫れてきて痒くてたまらなくなる。草に対するアレルギーなんていうものがあるのかどうか知らないが、自分では「草かぶれ」だと信じている。

 だから、今の時期庭で草むしりなんて絶対にしない。蚊に刺され、草にかぶれて両腕がパンパンに腫れるに決まっている。そんな危険をあえて犯すほど私は勇気ある男ではない。だが、それと同時に、私は負けず嫌いでもある。「そんなこともできないのか」と馬鹿にされたら、唇を噛んで我慢するだけの男ではない。あえて火中の栗を拾うくらいの覚悟はある・・、はずだ、たぶん・・。
 だけど、やっぱり口で言うほど立派な根性の持ち主でないことも事実だ。どうせなら被害は最小限にしておきたい。それは怯懦というよりも知略だと私は思うのだが、果たしてどれだけの人に理解されるだろう。「ずるい!」「臆病もの!」などと指弾されるかもしれないが、それでも丸腰で敵に向かうほどお人よしではない。たとえ清水の舞台から飛び降りるにしても、無駄死にしないだけの周到さは身に付けておきたい。それは単に惰弱な人間の考える姑息な手段かもしれないが、それくらいは己の美学に照らし合わせても許容できる範囲だ。

 で、私が今この時期に、草むしりをするよう命を受けたとしたならどうするか。もちろん長袖のシャツを着込み、軍手を両手にはめて、草と肌が直接接触するのを最小限に抑える、と言うよりも絶対に触れないようにする。マスクさえするかもしれないし、首にはタオルを巻くだろう。まずはこれで草対策は完了。次には蚊にどうやって刺されないようにするか。長袖シャツを着ていればかなり防蚊効果はあるだろうが、念には念を入れなくてはいけない。そのためには、どこぞのブログで大人気の電動機器などではなく、日本古来のこんなものを使いたい。

 

蚊遣りだ。陶製で金魚をかたどったわが町ならではの製品だ。上蓋を開けて蚊取り線香を入れて点火すれば、穴から煙がモクモクと湧き出て蚊を退治してくれる。確かに携行するにはいささか重いし、陶製だけあって扱いを誤れば割れてしまう。しかし、金魚がいかにも涼しげで今の季節にぴったりではないか。実用一点張りの現代においてこそ、風流心を大切にしなければならない。こんな蚊遣りを足元に置けば、草むしりにも精が出せるというものだ。近くを通る人たちに、「おっ、蚊遣りですか。なかなか乙ですなあ」などと言われたら、もう満足だ。ちょっとくらい暑かろうが、痒かろうが、そんなもの平気の平左だ。

 ああ、なんだか無性に草むしりがしたくなってきた。よし、やるぞ!!

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