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巣立ち

 私のよく行く喫茶店の入り口にはツバメが巣を作っていて、親鳥が運んできたえさを全身口にして受け取るヒナ鳥が何羽もいた。鳥が大嫌いな私には気持ち悪いだけのヒナたちだが、それでもふっと気づくたびに大きくなっていく様子を見るのは、新しい生命の力強さが感じられて悪いものではなかった。ところが、昨日久しぶりに巣を見上げたら、空っぽになっていた。この前見たときには大きくなったヒナたちが巣から落ちそうになっていたほどだったから、巣立って行ったのも当たり前かもしれない。


だが、巣立ったらすぐに海を渡るわけでもないだろうから、しばらくはこの辺りで生活しているはずだ。しかし、いったいどこで雨露をしのいでいるのだろう。先日は台風もやって来たし、飛べるようになったばかりの子ツバメには少々辛い毎日ではないだろうか。と思っていたら、そんな私の老婆心をあざ笑うかのように、小さなツバメが何羽も塾舎前をスーイスイッと飛んでいるのを見つけた。かなりのスピードで飛んでいるので、空中の姿を写真に収めるのは無理だったが、柵の上で並んで止っている姿は撮影できた。

 

5羽いた。みなほぼ同じ大きさなので、今年生まれた兄弟だろうか。元気に飛び回っている。その姿があまりに滑らかなので、見ていて気持ちがいい。飛ぶことができるようになった喜びを全身で表しているようで、私の心まで弾んでくる。
 そう言えば、先月私の弟に生まれた子供は「陽流」と名づけられた。わざわざ素直に読んでもらえないような漢字をどうして使うんだ、名前に「流」なんて不釣合いだ、などと私を始めとして身内全員が反対したけれど、弟夫婦が頑として聞き入れず、この漢字を書いて「ひかる」と読ませることになった。親が責任もって付けた名前だから、これ以上とやかく言うつもりはない、ただただ健やかに育って行ってくれるよう願うばかりだ。
 新しい生命は、かなりの時間を生きてきた私のような者には時として眩しいが、それでも幾ばくかのエネルギーを分け与えてくれるようで、枯れそうになる生きる意欲を奮い立たせてくれる。だが、そうは言っても次のものはちょっとフライングではないだろうか?

 

赤とんぼが飛んでいた!シオカラトンボやオニヤンマを見つけるよりも早く赤とんぼを見つけるなんてことは今まで一度もなかった。毎年夏休みの終わりになると、盛んに飛び始め、「ああもう夏も終わりだな・・」と感慨を催したりするが、今年は夏休み前に赤とんぼが飛んでいるのだ、本当にびっくりした。いったいどうしたことだろう。
 何か変わったことを見つけると、すぐによくない方向に結びつけるのは慎まなければならないが、それでもやっぱりおかしい。季節感なんてものがまるでなくなってしまう、やっぱり変だ。
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