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風鈴

 夏休みだからと言って、特別どこかへ行こうとか、何かをしようとか、もうできなくなってしまった。朝から晩までずっと塾で勉強を教えているだけの一週間が終わって、何か気分転換をしたいと思ってもはかばかしい案は思い浮かばない。昨日の日曜日、とりあえず喫茶店に行って目覚ましをしてからどうするか考えようとしたのだけれど、どうにもならない。仕方ないから参議院選挙の投票に行ってみたのだけど、その後どうしたらいいか分からない。やむを得ず、家に帰ってヤンキースの負け試合を見ながら新聞を読んでいたら、市内の施設で氷柱のオブジェ(?)が展示されているとの記事を読んだ。じゃあ、お昼ご飯を食べに行きがてら、そこを覗いてみることにした。どうにもショボイ時間の過ごし方になりそうだが、それしか思いつかないからどうしようもない、物は試しと出かけてみた。
 昼食を終えて書店に立ち寄り、スーパーで一週間分のお茶を買い込んだ後、それじゃあ行ってみるかと、市の中心部にある施設を訪ねた。さぞや立派な氷のオブジェがあるものと少しばかり期待してホールに入ったのだが、それらしきものが見当たらない。人だかりがあれば分かるかもしれないが、そんなものはどこにもない。変だな?と思いながら、目を凝らしてみるとホールの真ん中にポツンと何かが置かれていた。でも、本当にこれなの?

 

 エアコンの室外機の大きさほどの氷の塊の中に招き猫などの陶器の人形が入っている。期待していたものとは随分違っていてがっかりしてしまったが、よく見るとどうやってこんなに上手に氷の中に入れたのか分からない。触ることも許可されているようで、表面には手でこすった跡が残っている。氷が解けて陶器が出てきたら、もらって帰ることができるのだろうか、一人の男性が必死で指で擦っている。見ようによっては面白い、なんとも言えぬものだった・・。 
 
 新聞をもっとしっかり読んでおくべきだったなあ、と後悔しながら天を仰いだら、なんと一面に風鈴が飾られているではないか。気づかなかった。

 

いくつあるのだろう、とても数える気にならないほどの数だ。全て陶器でできている、さすがだ。室内のエアコンの風では風鈴を鳴らすことはできないようだったが、見ているだけでも涼しくなった。氷のオブジェ(?)などよりもずっと涼しさを感じさせてくれた。
 
 風鈴の存在を思い出させてくれただけでも、楽しい時間だったと思い直すことができた。この後は家に戻って、いつもの日曜のごとくに、ビールを飲んでうたたねをしたら選挙速報が始まっていた。自民党惨敗の報道の中、安倍ちゃんが強気を装う姿に哀れを感じた。人間落ち目になると周りから人が逃げていくと言うが、果たして安倍ちゃんはこの危機を乗り切ることができるだろうか。野球でも成績が不振のチームの監督は、オーナーから更迭される。今回の選挙では国民一人一人がオーナーであることを安倍ちゃんは真摯に受け止めるべきだろう。
 この選挙結果を受けて、暑苦しい政治の季節が始まるだろうが、一服の清涼をもたらす風鈴のような存在が、はたして政界に存在するのだろうか。
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