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言葉遣い

 『デキる人は「喋り」が凄い』(角川Oneテーマ21)を読んだ。「日本語力向上委員会」なるいかめしい名の集団が書き上げたものだが、少々胡散臭い題名の割には、なかなかためになる本であった。帯に、「こんな言葉では恥をかく!」と大きく書かれて、おかしな言葉遣いをした文例が載せられている。
 
 春先の小春日和の日、先輩に子供が生まれた。一姫二太郎というから三人の子持ちになったのだな。八方美人の奥さんだというし、お祝いに行こうと思う。おっとり刀でのんびりいけばいいや。先輩っていっても会社の上司で、「抜け目がないので出世がはやいですね」と言ったら怒られたっけ。

さすがに「八方美人」とか「抜け目がない」の意味を間違えることはあまりないだろうが、
 「小春日和」・・・「冬のはじめの頃の、ぽかぽかとあたたかい天気」
 「一姫二太郎」・・・「最初は女の子、次が男の子の順で生まれるのが理想的ということ」
 「おっとり刀で駆けつける」・・・大急ぎで駆けつける様子を表した表現
であることは、案外盲点かもしれない。
 この本は、若い社会人を対象にして、会社の上司や仕事先に対して失礼にならない言葉遣いを指南するのを目的に書かれているようだ。しかし、どの年代の、どの立場の人が読んだとしても、「なるほど」とか「そうだったのか」とか思う言葉遣いがたくさん紹介されているように思う。かく言う私も時々自らの国語力の未熟さを反省させられた。以下にそうした言葉の例を幾つか覚書として書き留めてみる。

・「大舞台」・・・「おおぶたい」と読む。
・「瓜実顔」・・・ウリの種のように色白で、鼻筋が通り、やや面長の顔のこと。
・「舌先三寸」・・・うわべばかりで内容のない話をまくしたてること。(注)「口先三寸」は間違った使い方
・「汚名は挽回するのではなく、返上すべき」・・・「汚名返上」「名誉挽回
・「ぞっとしない」・・・あまり感心するほどのものではない。さほど面白というものではない。
・「他人事」・・・「ひとごと」と読む。
・「幕間」・・・「まくあい」と読む。
・「貼付」・・・「ちょうふ」と読む。「てんぷ」は慣用読み。
・「話のさわり」・・・話のポイントとなる部分。最も面白い部分。
・「かねてからの懸案」・・・重ね言葉(「馬から落馬」のように意味が重複した表現)の代表格。他にも、「いまだ未解決」「ただ今の現状」など。
・「とんでもございません」は避けるべき・・・「とんでもない」が一語の形容詞であるため、「とんでも」だけを切り離せない。
・「来る者は拒まず」・・・「キタルモノハコバマズ」と読む。
・「お宅の会社」は友達との会話だけにしておく・・・「お宅の会社」は丁寧な表現ではない。「御社」「貴社」と言うべき。
・目上に「ご苦労さま」は禁句・・・「ご苦労さま」は目上の人から目下の人に向けて労をねぎらって使う言葉。
・「おためごかし」・・・相手の得になるように見せながら、自分の利益を図ること。
・「部長はもうお読みになられたのですか」・・・回りくどい二重敬語、「お読みになったのですか」とするべき。
・「私には役不足」・・・その役目に不満であることを表す。「私には分不相応」とするべき。
・「読まさせていただく」・・・「読ませていただく」と言うべき。余計な「さ」と「させる」は案外多い。(例)「そろそろ帰らさせていただきます」→「帰らせていただきます」「お先に失礼させていただきます」
・「○○が到着しだい報告させる」・・・慣用として認められるが、本来は「到着ししだい」と言うべき。
・「袂を分かつ」・・・大人の絶縁を表す表現。大人としての配慮が伝わる。
・「御芳名」は二重の敬語・・・結婚式などの返信ハガキには「御芳」までを消すこと。
・避けるべき表現
   「うざい」「自己中」は「ムカつく」表現
   「~とか」「~みたく」を婉曲な表現としては使わないようにする。
   「~じゃないですか」は押し付けがましい。
   「なんか」「別に」を無意味に使わない。

日本語は実に奥が深い言葉だ。だからこそ、自在に使いこなせるのに憧れる。私もさらに研鑽をつまねばならない。

 

 

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